第5話
「ねえ、山田君。私ね、今日桃華たちと一緒に、ネイルしに行くんだ!」
「良かったじゃん」
「それでに、ついでにタピって、それも含めてインスタにあげようと思うの。」
「めっちゃ、良かったじゃん」
「ねえ、ツバサ君、態度悪くない?そんなんじゃ彼女できないよ。」
「良かったじゃん」
「あー、話聞いてないでしょ。そういう態度するから、インキャって呼ばれてるんだよ。」
「よ、よ、よ、呼ばれてねーし。デタラメ言ってんじゃねーよ。あの、すいません。冗談だとは思うんですけど、本当ですか?」
キャラを変えるというのは、高校生にとっては重要なことだと思う。確かに、この人にはこの態度をして、あの人にはあの態度をするという感じではないと今時の高校生はやっていけないことはわかっている。
でも、アリスは少しやり過ぎだと思う。漫画とかに出てくる、俺だけに優しい幼馴染というのは、良い。ツンデレとかもなお、わろし。わろしの意味は忘れた。今日の古典の授業で出たから使ってみただけだ。
でも、アリスは違うのだ。学校では良く話しかけてくるのにも関わらず、家では何かの用事がない限り話しかけてこない。ちなみに、アリスは麗華の家に一緒に住んでいる。だからこそ限りなく話しかけやすい状況にはあるのだ。でも、あんまり話しかけてはこない。むしろ、漫画のキャラの逆なのだ。最近なんて、学校でよく話しかけてくるのも学校で過ごしやすい環境を作る為に、周囲に向けてアピールしてるんじゃないかと思うくらいである。
とは言え、家で自分から話しかけに行くのも、なんだか気恥ずかしくてできない。でも、学校にいると話しかけられるのは、事実としてはある。ならば、実行するほかない。引いてダメなら押してみろ戦法。
まあ、あまり効果はなくてむしろクラスメイトの俺への評価をズタズタに下げている気がするので辞めることにした。慣れないことをやってもあんまり上手くは行かないし。だから俺は特に何も考えることなく、隣の席でケータイをいじりながらも授業の準備をしていたアリスに普通に話しかけた。
「なあ、アリス?俺って、今日は普通に帰ればいいのか?」
ギャルっぽい雰囲気を漂わせていたアリスの方がビクッと震える。そして、俺に顔を近づける。
「アリスって、呼ばないでください。それに、あなたは私に話しかけられるまでは話さないでください。」
アリスは、金髪茶目のハーフの美少女だ。でも、その瞳の色が、青色に変わる時がある。そんな時は注意した方が良い。普通に怒っている時だ。
「っひい!す、すいません。」
「別にそんなに、怖がらなくても、とって食べたりはしませんよ。あなたが言うことをきいてくれたらね。」
高校生だとは思えないほどの妖艶な雰囲気を漂わせながら、その金髪少女は手を伸ばす。そうしてそれは、俺の胸をまさぐって、胸ポケットに何かを入れた。人差し指に口を当てて、もう一度、俺は警告された。
「大人しくしておいて、下さいね。」
ビクビクしている俺を一瞥して、アリスは友達と一緒に話している、麗華の周りに加わった。胸の中のポケットに入っていたメモを取り出す。そして、そこには綺麗な字で書かれていた。
「部活の後に、お話があります」
首を傾げた