3話 妹
「あの声は…絶対かわいい女の子に違いない!それ以外考えられない!!」
風螺は今いる正面玄関の逆側へスキップしながら行った。
「あ、おい!待てよ!」
声の主は工場の奥のほうから聞こえた。
もとは工場だったのだから他にも扉があるのだろう。深弥はそう納得した。
しかし、声の主は扉ではないとこから入ろうとしていた。
割れた窓だった。
「いてて…手を切っちゃった」
しかも、驚くべきところはそこだけではなかった。
深弥は大きく目を見開いた。
「予想的中!ようこそかわいい子猫ちゃ__」
「日和?!」
深弥は気障な風螺の言葉を遮った。
「え、お兄ちゃん?」
風螺は呆然としている。
「なんでこんな所にいるの?」
「それはこっちのセリフだ。お前、仕事じゃなかったのか?」
「いまさっき仕事が終わったから急いでここに来たの。もしかして、お兄ちゃんもメールで呼ばれたの?」
「ああ。その口ぶりだと日和もなんだな」
風螺をよそに、深弥と日和と呼ばれた少女との会話が繰り広げられる。
「そういえば、今晩の夕食はなに?疲れてお腹がペコペコだよぉ……」
「そうだな。今日は__」
「あの……」
完全に孤独になっていた風螺がやっと声を出した。
「そちらのお嬢さんは一体…?」
「ああ、すまん。こいつは日和。俺の妹だ。日和、この緑髪は風螺っていうんだ」
「風螺さん、ですね!よろしくお願いします!あ、兄がお世話になってます!!」
「いえいえ、こちらこそよろしく。もう、土方君たらおもりが大変で…」
「さっき出会ったばかりのやつにおもりもクソもあるかよ!」
とりあえず!と深弥が大声を出して茶番を終わらせようと二人のほうを向き直った。
「何故俺らがここに呼ばれたか、だ」
「それに私たちが異能力者だってことをどうやって知ったのか、それも気になるよね」
「確かに異能力を扱えるものは_例外を除くと_20歳未満の子供だけ。しかもその子供の中でもさらに一部だけしか扱うことができない__だったよね?」
「基本誰にでも異能力を使える素質は持ってはいるが、自分がどんな異能力を持っているか自覚がないと異能力は発動できない……。異能力者は世界人口の1割未満だから探すのは大変だったろうな」
そして三人は、近くに置かれていた古びたソファーに腰掛けることにした。すると風螺が「あ。」といい、
「これ、見てよ」
ソファーの上に一枚の紙が置かれていた。それには何か文字が書かれている。
土方深弥、土方日和、風螺…そして最後に『桜羽』と書かれていた。