2話 人生には驚きが必要
「驚いたかい?」
深弥が振り向くとそこには小柄な男の子が立っていた。
顔立ちは幼く背も小さいが、彼の着ている白いジャージの上からでもわかるように身は引き締まっているようだ。
何より目を引いたのは彼の髪色である。
高い位置で結ったポニーテイルはさわやかな緑髪をしており、光に当てると透き通る色合いだ。
そんな奇抜な格好をした男は腰を抜かしている深弥をよそににこにこと笑っていた。
「だ、誰だお前…」
深弥がそういうのも無理はない。
いきなり親しい友人のように見知らぬ男を驚かせてきたのだ。
「おっと、ごめんね。自己紹介もなしにびっくりさせるのはさすがに非常識だったよね」
いや、自己紹介されてもおどかすのはないと思うが…。
深弥は内心そうつっこんだ。
「僕の名前はふうら。ピューッって吹く『風』に螺旋階段の『螺』で風螺だよ。以後お見知りおきを」
風螺と名乗った少年は外国の紳士のように手を胸に当てお辞儀をした。
なんとめんどくさい男だろう…。
彼の第一印象はそんな感じだった。
しかし、風螺はちゃんと自己紹介してくれたのだ。
深弥だけ名乗らないわけにもいかない。
「俺は土方深弥。お前にもメールが来たのか?」
「ということは、土方君にも同じメールが送られてきたということだね」
念のため、お互いにスマホを見せ合いメールを確認した。
それにはこう記されていた。
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【異能力者の集いへの招待状】
皆さんこんにちは!このメールが届いた君は選ばれし異能力者だ!
そんな君に楽しい楽しい集いへ招待しよう!
場所は○○工場跡地で、集合時刻はこのメールが届いた日の17時だよ!忘れずに来てね!
ちいさい異能力者はお母さんに許可をもらってこの集いに参加してね!
絶対だよ!!
_________________
何とも言えないふざけた文である。
このメールの送信者は一体何者なのだろうか。
そして、このメールをスクロールすると先ほど深弥が見ていた地図が添付されていた。
「うん、同じみたいだね」
「まさか、風螺お前が送り主なんじゃないのか?」
「ひどいなぁ、君と僕は今日ここで初めて会ったんだからそんなこと不可能だよ」
どうだか。そう口にしようとしたとき、
「ごめんくださーーーーい!!」
大きな声が工場内に響き渡った。