表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちるどれん  作者: ことり
1/3

1話 愉快な夏のはじまり

木々が青々と茂る森の中。


様々な樹木に、様々な種類の蝉が止まっている。


季節は夏、中旬。


セミは森の中を通ろうとする者を妨げようとミンミンとうるさく鳴いている。


この森は近所の小学生が夏休みの自由研究に昆虫採取しに来てもおかしくない絶好の虫日和な森だが、残念ながら周辺に家は建っておらず、森の入り口に小さな公園があるくらいだ。


その公園も、もちろん子供は決して遊びには来ない。


家がないのだから当然である。


そんな森の中に珍しい客人がいた。


「誰だ、こんなふざけたメールを送り付けたやつは」


珍しい客人は、手に持っているスマホに向かって悪態をついていた。


何故こんなへんぴな場所でスマホに目をやりながら森の中を歩いているのだろうか。


昆虫採取するような格好でもないし、もちろん虫取り網も虫かごも持っていない。


客人の名を土方深弥(ひじかたしんや)という。


「しかし、あっついな…」


深弥はそう言うと手でうちわを作った。


深弥が見るスマホの画面にはメールが開かれていた。


そのメールには簡易な地図が添付されていた。


最近、子供の誘拐がこの街で多発しており、年齢は下が0歳、上が19歳とバラバラである。


深弥も今年の5月で17になった。


誘拐された中にも17歳の子供がいるらしい。


そういう事件が多い中一人で人気のない場所に行くことを彼は一度ためらったが、子供特有の好奇心には勝てなかったらしい。


結局、送られたメールの指示に従い森を抜けた先にある廃工場へ向かうことにしたのである。


それから数分歩いた後、木々に囲まれ、セミでうるさい森の中を抜けようやく目的に辿り着いた。


メールが指示していた時刻は17時である。


深弥のスマホは17時ちょうどを指していた。


深弥はさび付いた扉を開ける。


長年使われていないのか扉を開けた先は光が当たりほこりがキラキラと輝いている。


「おーい、誰かいるか~…」


広い工場の中で深弥の声がむなしく響いた。すると、


「わっ!!」


「うわあああ!!!!」


突然背後から大きな声がした。


それは蝉より五月蠅く、深弥の未来を大きく変える始まりでもあった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ