表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

家路

 深夜三時二十分。往来を行く車は絶え、通りには街路灯の映しだす縞模様が横たわっていた。知らぬ間に雨が降っていたらしく、アスファルトのひどい臭いが漂ってくる。当然人家の明かりは無く、抑え込んでくるような静寂の中を私は一人で歩いていた。道の先は地平線で空の端と繋がり、このまま星まで歩いて行けそうな気さえした。


 この道は通い慣れた道だ、目をつぶっても家までたどり着けるだろう。だが、その横の道はどうだろうか。思えば一度も通ったことが無い。もしかしたらあの道の途中にはすばらしい花園や美しい庭園があり、私の到着を待ち構えているのかもしれない。おそらくそこには私好みのテーブルセットが、お茶やお菓子とともに用意されていて、一服くつろげるはずなのだ。


 私はくだらない妄想を振り切るように歩調を速める。あの道の先に花園は無い。それどころかあの先に良いものは一つもないだろう。分かっていながらも夢想に耽ってしまったことを苦々しく思う。あの道のどん詰まりには良いも悪いも無く、ただ純粋な未知だけが座り込んでいるのだ。暗がりにいるあれは街路灯の下を歩く私を嗤っているに違いない。暗闇を避けて進む私を嘲り、苛むつもりなのだ。逃げなければならない。明かりの満ちた家に、早く帰らなければならない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ