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 俺と御子さんは、神社の中に入りお参りをする列に並ぶ。

 着物の女性も多く、そのどの女性の中でも御子さんは綺麗だった。

 いや、彼氏のひいき目とかじゃ無く……。


「御子さん」


「何?」


「二人で歩くのも当たり前になりましたね」


「そうだね、急にどうしたの?」


「いや……御子さんと一緒にいるようになった時を思い出しまして……あのときは酷かった……」


「なんでよ!」


 だって貴方、俺の事を男避けに使ってたじゃないですか……。

 あの頃は大変だった、御子さんのせいで厄介な事ばかり押しつけられるし、大学の男共からは睨まれるし……。

 まぁでも、そんな出会いがあって、今はこうして御子さんの隣に居るのだが。


「次郎君、順番来たよ」


「え?」


「もぉ、何ぼーっとしてるの? 早く前に進むよ」


「あ、はい」


 俺は賽銭箱の前に進み、賽銭を入れて鈴を鳴らす。

 がらがらと大きな音が鳴り、俺と御子さんは手を叩いてお参りをする。

 こういう時に今年一年の願いを神様にお願いするらしいが……俺は何をお願いしよう?

 そんな事を考えているうちに、タイムリミットが来てしまった。

 後ろにも多くの人が並んでいる為、そこまでもたもたもしてられ無い。

 俺は御子さんと列を離れた。


「何をお願いしたの?」


「え……いや、結局何も。考えてたら、終わってました」


「なによそれ、お参りに来た意味無いじゃない」


「あ、意味はありましたよ」


「何?」


「御子さんの綺麗な着物姿が見れたので」


「!! ……ばか」


 そう言った瞬間、御子さんは顔を赤くして顔を伏せた。

 こう言う顔も見れたし、初詣に来た意味は十分あった。


「御子さん、おみくじ引いて帰りますか」


「そ、そうね……今年は本格的に就活だし。今年の運を見て行きましょうか」


 俺と御子さんはおみくじが売られている場所に向かい、一回づつ引く。

 

「えっと……あ! 大吉!」


「え、本当ですか? 俺は……げ!」


「どうしたの?」


「大凶……」


 まさか大吉よりも入っていないと噂の大凶を引いてしまうとは………新年からついていない……。


「アハハ、凄いわね、大吉より出ないって言われてるのに」


「うわぁ……学問、十分に励め。待ち人、来ない……」


「まさに大凶ね……でも、待ち人は来なくて良いの! もう居るから」


「はいはい……恋愛は……上手くいかない」


「あら、それは大変」


「俺たち、別れるんですかね?」


「大丈夫よ、こんなのただの占いでしょ?」


「それもそうですね」


 俺は大凶のおみくじを神社に結んでいき、神社を後にした。

 御子さんは折角の大吉だからと、財布に一年入れておくらしい。

 俺と御子さんは初詣をすませ、家路についていた。


「う~…着物も良いけど……胸がきっつい」


「あぁ、潰して着るんでしたっけ?」


「そうなの、だから少し苦しくって……誰かさんが揉むから、カップも一つ上がったし」


「お、俺のせいだけでは無いと思います!!」


「どうだか~、このおっぱい星人」


「違います!」


 違う、断じて俺はおっぱい星人などでは無い!

 ……多分。

 そんな事を自分に言い聞かせていると、御子さんの実家に帰ってきた。

 

「おぉ、おかえり。どうだった初詣は?」


「結構人が多かったです、それと大凶を引きました……」


「それは災難だったな、新年早々から」


 御子さんが着替えをしている間、俺はお父さんとリビングでテレビを見ながら話しをしていた。

 この人にも慣れたものだ、最初はあんなに警戒していたのに、今ではその警戒心は一切無い。

 まぁ、相変わらず眉間にシワを寄せているが……。


「君は……御子が好きか?」


「え!?」


 急にどうしたのだろう、お父さんは真面目な顔で俺にそう尋ねて来る。

 なんだか雰囲気的に真面目に答えた方がよさそうな気がする。


「は、はい! あの……最初はアレだったんですけど……今はその……す、好きです!」


「……そうか……それを聞いて安心した。御子は本当にいい人を見つけたようだ」


「いや、俺なんて全然……」


「彼女の父親に、面と向かって娘さんが好きです。なんて言えるだけで、男としてはかなり

良い男だと思っている。大抵ははぐらかすからな、結婚の挨拶とかで無いかぎり」


「そ、そう言うものでしょうか?」


「そうとも……安心したよ……君になら御子を任せても良さそうだ……」


「い、いや……そんな結婚を許そうみたいな事を言われても……」


「君は御子と結婚してくれないのかい?」


「そもそも、御子さんがそれを望むかわかりませんし……」


 御子さんは確かに今、俺と付き合っている。

 しかし、これからの長い人生の中で御子さんが俺を人生のパートナーに選ぶかはわからない。

 ただでさえ御子さんは綺麗だし、俺なんかでは釣り合いが取れない。

 不安しか無かった。

 いつか捨てられるのでは無いか、だから俺は割り切って考えた。

 御子さんが俺から離れるまでは、御子さんを好きでいようと…。

 そして御子さんが俺の他に心を許せる人が出来たら、俺は潔く身を引こうと……。


「岬君は自信が無いのか?」


「正直に言えば……御子さんは綺麗ですし……」


「ハハハ、そんな事か……なら安心すると良い、御子が彼氏を連れてきたのは、君が始めてだし、そもそも、君が現れるまでは、一生独身で居るとまで言っていたからな」


「そ、そうだったんですか?」


「あぁ、しかも御子があんなに懐いている人間は君が始めてだ」


「はぁ……そうなんですか?」


「だから、自信を持つと言い、君が嫌になら無ければ、恐らく御子は君に一生ついていくつもりなんじゃないかな?」


「そうだと、嬉しいですけど……」


「それに、娘さんを下さいと言われたら、私はよろこんで首を立てに振るぞ」


「軽すぎませんか?」


 あぁ、なんか色々言われたけど、何となくわかった。

 この人も俺と御子さんが結婚する事を望んでるんだ……。

 奧さんと同じ考えでそう言ってるのかはわからないが……。

 でも……そんな事を言われても、結婚なんて考えた事も無い。

 結婚なんてもっと先の事だと思っていた。


「まぁ、大事なのは本人同士の気持ちだ。すまないね、どうも私は早く孫の顔が見たいらしい」


「そ、それはどっちにしても、自分が卒業するまで待って下さい」


 そんな話しをしていると、着替えた御子さんがリビングに戻ってきた。

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