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「何でもとっておくものね、馬子にも衣装でしょ?」


「お母さん! それどう言う意味よ!」


 御子さんの着物姿は凄く似合っていた。

 てか、このお母さん着付けも出来るのか……。


「どう? 次郎君」


 自信たっぷりに尋ねてくる。

 俺はそんな御子さんに笑顔で、望み通りの言葉を贈る。


「綺麗ですよ」


「そ、そう? ま、まぁ当然だけどね!」


 顔を赤くしながらそう言う御子さん。

 照れているようで、俺とは目を合わせない。

 

「あ、あとコレは岬君に……」


「なんですかコレ?」


 御子さんのお母さんが渡してきたのは、何かの手順が書かれた用紙だった。


「脱がせる方法と、着させる方法が書いてる手順書よ」


「いや、なんでこんな物を……」


「脱がせて、着られなくなったら色々大変でしょ?」


「脱がしません!」


 俺は思わず顔を赤くして否定する。

 いや、だってそう言うことを親が言っちゃいかんでしょ……。

 

「あら残念。早く孫の顔が見たいのに」


「その前に結婚っていう段階が有ると思うのですが……」


「そんな事は無い、私と家内は出来婚だ」


「お父さん……その情報を教えられても……」


 そうか、この二人出来婚なのか……。

 俺はそうはならないようにしないと、何事も順序って大事だし。

 俺はそんな事を思いながら、御子さんと共に家を出る。

 

「近くの神社って歩いてどれくらいなんですか?」


「十分くらいかしら、そこまで遠くないから安心して」


 俺と先輩は話しをしながら、神社までの道のりを歩く。

 

「高校の時は大変だったなぁ……」


「そうなんすか?」


「毎日告白された」


「あぁ、はいはい」


「あ! 何その興味なさそうな感じ!」


「だって、予想通りすぎてどうでも良いですもん……」


「何よ! 自分の彼女の話でしょ!」


「はい、今は俺の彼女ですから、正直誰に告白されたとかどうでもいいです。御子さんが居てくれれそれで……」


「う……きゅ、急にそう言うこと……言わないでよ……」


 顔を赤くする御子さん。

 最近御子さんの扱いに慣れてきた気がする。

 

「じ、次郎君の高校時代はどうだったのよ?」


「え……俺の高校時代は普通ですよ。普通に入学して、普通に卒業しました」


「彼女とか居たの?」


「……いませ……んよ?」


「何よその反応……怪しい!」


「い、居ませんよ……」


 俺の回答が怪しかったのか、御子さんはジト目で俺を見つめる。

 いや、彼女が居なかったのは本当だよ?

 まぁ、でも……ちょっとふわふわした感じで終わった女子は居たけど……。

 それに俺、御子さんとするまで童貞だったし……。


「ほんとぉ~?」


「本当ですって、御子さんこそ彼氏とかいなかったんですか?」


「居ないわよ。だって私の初恋が次郎君だもん」


「それは光栄です」


 そんな事を話しをしていると、神社が見えてきた。

 元旦という事もあり、多くの人で賑わっている。

 御子さんは地元だし、知り合いとあったりするのではないだろうか?

 なんて事を考えていると、早速大学生くらいの女性が御子さんの元に駆け寄ってきた。


「え!? もしかして御子?」


「加代ちゃん! 久しぶり~」


「久しぶり~元気だった?」


 こちらも着物姿の綺麗な女性。

 どうやらこの人は高校時代の同級生らしい。

 それにしても類は友を呼ぶとは本当らしい、この人もかなりの美人だ。


「ねぇ、御子。もしかして隣の彼って……」


「うん、夫」


「彼氏って言ってくれません!?」


「夫!? 結婚したの?」


「違います!」


 変嘘をつかないで欲しい。

 しかし、彼氏と聞いただけでもこの加代という女性は驚いていた。

 

「え?! 御子に彼氏?? あの御子に?!」


「何よ、私だって彼氏くらい居るわよ」


「だって、アンタ。高校の時は誰とも付き合わなかったじゃない」


「好きな男が居なかっただけよ」


 御子さんがそう言うと、加代という女性は、俺の方を向いて尋ねてくる。


「ねぇ、どうやって御子を落としたの! それとももの凄いテクを持ってるの!?」


「持ってないですって! いや……なんか……その……気がついたら……好かれてたっていうか……」


 だって、俺は最初御子さんに苦手意識を抱いていたし、正直絶対に付き合いたくないとまで思っていた。

 どうやって落としたのかなんて、俺にもわからない。

 

「ち、違うわよ……次郎君が私にどうしてもって泣きついて来たんでしょ……」


「そんな事をした覚えはありませんし、泣いたのは御子さんでしょ……」


 付き合う事になったあの日がなんだか一年も前のように感じる。

 しかし、実際は数ヶ月しか経っていない。

 あの日、俺がゲームに勝って、あぁ言わなければ、今こうして先輩と歩いていないのかもしれない。

 そう考えると、あの日のゲームの勝敗は俺の人生を左右する大きな別れ道だったのかもしれない。


「仲良いのね、良いなぁ~私なんてこの前別れてさ~」


「え、そうなの? なんで?」


「あっちの浮気。酔っ払って寝たところをパンツ一丁にして、ゴミ捨て場に捨ててきたわ」


「「こわっ……」」


 加代さんの仕返しに、俺と御子さんは口を揃えて言う。

 浮気すると、俺もそうなるのだろうか?

 いや、する相手も自信も無いけど……。


「翌日、警察に職質されてたわ、いい気味よ……」


「アンタ……昔から凄いわね……」


「はぁ……いいなぁ……私も彼氏欲しい……ねぇ、そこの彼頂戴」


「ダメよ!」


 そう言って御子さんは俺の腕にしがみついて来る。

 あ、これは結構嬉しいかも……。


「アハハ、冗談よ。私と違って、優しい彼氏を見つけられて良かったじゃない。これ以邪魔しても悪いし、私行くね。偶には同窓会にも出なさいよ!」


 そう言って、加代さんは行ってしまった。

 御子さんは俺の左腕に抱きついたまま、俺の方を見て笑顔で言う。


「次郎君」


「はい?」


「ちなみに私は捨てたりしないわ」


「え……あぁ、俺も浮気なん……」


「代わりに部屋に閉じ込めるわ」


「………」


 この日、俺は絶対にする気は無いが、浮気はこれからの人生で絶対にしないようにしようと心に決めた。

 いや、だって御子さんの目がマジなんだもん……。

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