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俺の妹が《レズビアン》な件  作者: 嶺上開花
第2シーズン
17/19

幕開け

~前回のあらすじ~

 臨床試験実施までこぎつけたマサムネの実験。

 しかしその途中でマサムネに異変が起こる…!


 ナノマシンの起動から30分、健二は気を失ったマサムネを別室に移し不安げな表情を浮かべていた。

 沈黙が支配する室内に扉を開く音が響く。そちらに目を向けるとそこには青葉の姿があった。

「青葉ちゃん、どうしたの?今日はもう帰ったんじゃ」

「いえ、ちょっとお兄さんとお話したいなと思いまして…」

 そういうと近くのパイプ椅子を広げて健二の隣に腰かける。そしてしばらく沈黙が続き、どことなく気まずい雰囲気になる。

「…それで、話って?」

「えっと、お兄さんはなんでこのプロジェクトを手伝ってるんですか?…話したくないならいいんですけど」

 少し前に同じような質問をされたことを思い出す。やはりこのプロジェクトに参加していることが不思議に思われるのだろうか。そんなことを考えながら未だ目を覚まさないマサムネに目を向ける。

「…こいつさ、学生時代の後輩なんだよ。その時は今みたいに人前でしゃべるとか、それこそ笑うとか全然しないやつでさ。…でも、久しぶりに会ってみたらめちゃくちゃ変わっててさ。それで、こいつも夢のために頑張ってんだなーって。だったら、俺もその夢を一緒になって叶えてやりたいんだよ。俺って別に、ほかに何かやりたいことなんてないしさ」

 目前で眠っていることをいいことに、自嘲気味に笑う。そして一息つくと目線を上げて天井を仰ぐ。

「俺さ、特にやりたいことがなくってさ。大学に行ったら、何かやりたいことも見つかるかなって思って大学に入ったんだよ。…でも、結局何も見つからなくって。で、今は大学時代から続けてるバイト先で働かせてもらってる。要は惰性で生きてるんだよ。そんな俺からすると、こいつみたいにやりたいこととかかなえたい夢があるのって羨ましいな、なんて考えちゃうんだよ。だからこうやって、誰かの夢に乗っかって、寄生して。そんで一緒になったふりして満足感を得たいんだよ。…たったそれだけの、ちんけな理由だよ———あ、このことは誰にも内緒ね?」

 そう言った健二は取ってつけたような笑顔を見せる。その時だった。マサムネがうめき声を上げつつ目を覚ました。

「お、マサムネ。大丈夫か?一応ナノマシンはシステムダウンさせて被験者は蹴ってもらったけど…」

 健二がそう話しかけるが、マサムネは上半身を起こして何かをぶつぶつと呟いている。

「だとしたら…傍受領域…出力の問題?だったらレベル帯を絞って…受信側…いっそ変更………よし!」

 なにか解決したのか勢いよく起き上がり、近くにあったメモ用紙にすごい勢いで何かを書き起こしている。突発的に行動を起こしたので、あっけにとられた健二と青葉はその光景をただ茫然と見ていた。

「お、おい。…マサムネ?お前いきなり動いて大丈夫か?」

「あぁ先輩。そのことに関してはご心配なく。ちょっと設計より傍受する感情の幅が広すぎたのと一気に多人数を相手に傍受したんで情報過多でパンクしかけたっていうか実際パンクしちゃったんですけどでもそれってもうちょっと傍受する感情のレベルを絞れば機能縮小と受信側の負荷軽減とコストカットを一気に解決できますしだったらむしろ受信側はナノマシンにするんじゃなくて専用のコンピュータを用意すれば何もかもが解決するんじゃないかって思ってそれを忘れないうちにメモしたくってあぁそいえばいきなり倒れちゃったしここまで運んでくれたんですよねありがとうございましたじゃあ俺改良案とかを本格的にまとめるんでちょっと失礼しますねそれじゃあ!」

 一方的に、それこそ鉄砲水のような勢いで話すとその勢いのまま自身の研究室にすっ飛んでいった。

「え…っと。あの方、あんな方だったんですか?」

「ん、そうだね。あれを実際に目の当たりにするのは学生時代ぶり…かな?前にも言ったかと思うけどあいつって他人とかかわるのが苦手でさ。今回の研究もそれが原因なんだけど、ああやって好きなことの話題になるとマシンガン通り越して滝みたいに一方的に話すだけ話すことがあったんだよ。ほんと、ああいうところ見ると変わってないんだなっておもうよ」

 一連の出来事に懐古の念を抱いている中、青葉が不思議そうな顔をしている。どうやら何やら思い出そうとしているようで。

「…すみません。以前にそんな話しましたっけ?」

 おそらくさっきの会話の「前にも言ったかと思うけど」の内容についてのことだろう。

「あれ?話したことなかったっけ?まぁ、俺の思い違いかもしれないし、気にしないで。そうだ、もう今日は経過観察も終わってるし解散になるんだけど、よかったら家まで送ろうか?」

 時計を見るとすでに16時を回っており、そろそろ日も傾いて来ている。夏至も過ぎたので、これからどんどん日が短くなっていくと考えると時がたつのは早い物だと思い知らされる。

「あ、じゃあお言葉に甘えてもいいですか?」

 そうして青葉を家に送り、その日は終わった。


*****


 後日、マサムネはナノマシンの開発に忙しく、健二はその分野ではなにもできないので暇を持て余し、結果商店街をぶらついていた。特に何事もない、夏の昼下がり。温暖化云々の問題か時期尚早とも言えなくもないセミがわんわんとその声を張り上げている。

 すると、視界に知人が飛び込んでくる。青葉だ。こう暇な日は誰でもいいから話し相手になってもらいたい物なので、呼び止めて声をかける。いつものようにお~いと枕を置いてから名前を呼ぶ。それなりの付き合いになるので、そうしないと彼女が驚いてしまうというのは理解している。

 しかし、その日はいつもと様子が違った。びくりと肩を震わせた青葉は恐る恐る健二の方を振り返る。そして怯えたような視線を向けながらこう呟いた。


「え…っと、どちら様、ですか?」


-to be continue-

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