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俺の妹が《レズビアン》な件  作者: 嶺上開花
第2シーズン
15/19

光明、そして…

~前回のあらすじ~

 脳波測定式感情傍受ナノマシンの臨床試験を行うために自身に成果物の一つを埋め込んだマサムネ。さてはてどうなることやら…。

 臨床試験の募集を始めてから2週間と3日。

「………誰も来ないっすね」

「………誰も来ないな」

 募集を行ったにもかかわらず、誰も名乗りを上げる者はいなかった。というのも、まだ世間に認知されていないナノマシンなうえに、体内に注入したら一生体に残り続けるというものを進んで試そうというものが居ないのである。

「う~ん、とりあえず受信型は設計通り脳に取りついたんで問題はないとは思うんですけどねぇ…。やっぱり傍受型も使ってみないとわかんないっスもんねぇ…」

「う~む、やっぱり知人に頼んでみるしかないかな」

「…こんなもん受けてくれる知人なんて居るんスか?」

「ま、当たって砕けろってやつだよ」

 そういうと健二はスマホを取り出しポチポチと操作する。


「と、言うわけなんだ。どうだろう?」

 自宅に帰り早々に頭を下げる。目前にはソファに座る由梨と青葉。こういう状況になっているのはわけがある。まぁ、簡単に言えば大学で宣伝してくれないかということを頼んだのだ。すぐに終わり、高価なバイトとして宣伝できれば人員を確保できると考えたうえでの行動だ。

「なるほど、最近いそいそしてると思ったらそんなことしてたんだ」

 研究の説明をしたところ、由梨は明らかに不機嫌になっていた。

「で、でもそんなもの注入しても大丈夫なんですか?」

「ま、まぁそれを確かめるための臨床試験だし…」

 言い訳じみてはいるが事実なので仕方ない。などと考えていると由梨が大きくため息をつく。

「そもそも、作成理由が一人よがりすぎるんだよね。そんなものが生産できてるって言うのが不思議よ」

 …ぐぅの音も出ない。

「で、でももう募集もしちゃってるんですよね?」

「うんまぁ、誰も応募してこなかったけどね」

 頭を掻くとこれまた大きなため息。そしてゆっくりとソファを立ち上がる由梨。

「まぁ宣伝だけはしてあげるけど、人が集まるかどうかは知らないからね?」

 それだけ言い残すと自室へと向かって階段を昇って行った。

「な、なんか今日不機嫌だったな。どうかしたのか?」

「いえ、私は特に何も…。でもたぶん、お兄さんのせいだとは思いますよ?」

 …何かしただろうか?

「あ、私そろそろ時間なのでここで」

「ん、もうそんな時間なのか。ごめんね、こんな話しちゃって」

 帰り支度をする青葉を玄関まで見送り、そのあと健二も自室に戻る。そしてスマホを取り出しマサムネに連絡する

「とりあえず大学で宣伝してもらえることになった」

『了解っス。人集まるといいっスね』

「そうだな~」

 報告を済ませた健二はベッドに転がる。見慣れた天井を見上げているとドアから数回ノック音が響く。

『兄貴、居る?』

「ん、居るぞ」

 返事を返すと由梨が遠慮なしに入ってくる。それに対してゆっくりと上半身を起こす。

「で、どうした?何か用でも———」

「兄貴はさ、なんでそんなものの手伝いしてるの?」

 真剣な目でのぞき込まれ、思わず出そうと思った言葉を飲み込んでしまう。やましい気持ちはないのだが、どこかそういう気持ちが湧き上がってくる。

「…アイツさ、夢があるんだよ。俺はその夢を応援したくてな」

 思わず目をそらし俯いてしまう。そんな話を何も言わずに聞いてくれる。

「俺にはあんな大層な夢はないからな。ただ単純に羨ましいんだよ。それに———」

「それに?」

「…いや、何でもない」

 言いかけた言葉を飲み込む。それを察した由梨は再びため息をこぼす。

「わかった。まぁ兄貴が何も考えず行動するのはいつものことだしね。で、今日の晩御飯は?」

 気を使ってくれたのか夕飯の話を持ち出す。そのやさしさに感謝さえした。


*****


 臨床試験前日、募った人向けの説明会を開く。集まってくれたのは5人。少ないがまぁ居ないよりはましだ。

「———ということで、こちらのナノマシンを体内に注入。その後経過観察を行い人体への影響と機能動作を確認します」

 この説明会では詳細説明のほかに最終意思確認も含めている。なのでこの集まった5人ももしかしたら全員帰ってしまうかもしれない。

 そんな心配もどうやら杞憂だったようで。しかしやはり体内に一生残ると聞いて恐ろしくなったのだろう。1人断念してしまった。ので残った4人で臨床試験を行うことになった。

 マサムネとその手伝いが人数分のナノマシンを準備している間、参加者の一人が健二の元へと近付いてくる。それは健二がよく知る人物だった。

「まさか、参加してくれるとが思わなかったよ」

「いえ、私もちょっとお金が入用でしたし…」

 その人物とは由梨の彼女である青葉だった。どうやらほかの3人は大学で声をかけた人たちらしい。

「お金がいるって…欲しい物でもあるの?」

「ま、まぁ、そんなところです」

 そんな会話をしているとマサムネたちが部屋に戻ってきて参加者を個室へと連れて行く。そしてナノマシンの注入が行われた。その後はとても淡白なもので、昼食が提供された後、2時間の経過観察が行われた後参加者は帰路についた。

「で、どうだったんだ?何か見つかったか?」

 カルテに目線を落としつつ難しい顔をしているマサムネに声をかける。

「あ、いえ。特に何でもないんですがね?」

 するとどこか歯切れの悪い返事が返ってくる。しかし、健二にはその差異が感じ取れた。というのも、マサムネの顔色が先ほどからすぐれないのだ。

「遠慮すんなって、ここまで一緒にやってきたんだろうが」

 その一言にさらに暗い表情になる。そして一つため息をこぼし、観念したかのように口を開く。

「正直、ここまでこぎつけたことに実感がわかないんですよ。この計画は、なんというか危ういバランスの上に成り立ってるんスよ。使い方によってはかなり信頼度の高い嘘発見器のような使い方もできるっスけど、そのためだけに一生体に———というより、頭に残るものを注入するのかと言われれば、難しくなります。なんで、こんなことになるなんて考えもしてなかったんス」

 こんなこと…。つまるところ臨床試験までこぎつけたこと自体が夢物語だと言いたいらしい。

「だからこそっスかね。このチャンスをものにしたいなって思ってたんスよ」

 そういって恥ずかしそうに笑う。学生時代からの付き合いであるからこそわかる。これは彼の本心からの笑顔だった。


*****


 翌日。再び臨床試験の対象者を集めていた。内容は『注入した傍受型デバイスを起動し動作確認を行う』といった物だ。

「———というわけで、これよりデバイスを起動させます。では…起動」

 パソコンを操作し、すべてのデバイスを起動させる。そして事件が起こる。

「っ!?が、あぁ!!」

 マサムネが急に苦しみ始める。目は血走り、食いしばった口角や鼻から血があふれてくる。そうしてしばらく苦しんだ後、マサムネは気を失った。


-to be continue-

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