白石 健二の憂鬱
由梨と青葉が付き合い始めてから大体3週間が経った。桜が散り、若葉が顔をのぞかせている。そんな中を手をつないで歩いている二人。陽気も相まってかなりいい雰囲気になっている。そんな二人を覗いている影が一つ。その影は二人の写真を撮るとそそくさと消えていった。
*****
「———という夢を見たのさ!」
と、変なポーズを取りながら言い放つ。そんな妹の痛々しい惨劇を見て健二は考えるのをやめたように食器洗いに戻る。
「ちょ、兄貴。スルーはやめてくれない?さすがに傷つく」
「って言ってもさ、いきなり何の脈絡もなく夢を見たとか言われても…」
「いや、脈絡あったじゃん。いかにもな導入あったじゃん。でもその導入は実は夢オチっていう展開だったわけだけど」
洗い終わった皿を水切りに入れ濡れた両手を拭く。
「にしてもなんか久しぶりだな、こういう感じ。由梨がなんか問題提起して俺が突っ込みいれる奴」
「確かにね~、最近はもっぱら私と青葉ちゃんの話だったからね」
まぁ第2シーズンだし?ちょっとはてこ入れとか必要かなって。べ、別にネタが切れたとか、そういうことじゃないんだからねっ!
「今何かすっごいメタいことが聞こえた気がするけど気のせいだよね」
「そんなことはさておいて、どんな夢見てたんだ?あとお前人のこと言えないからな?」
「おっそうだな。で、夢のことだっけ?あんまり覚えてはないんだけど青葉ちゃんと二人で歩いてたら誰かに盗撮された夢なんだよね」
「何それこっわ」
「だよね~、初夢じゃなくてよかった~」
二人そろって引きつった笑みをこぼす。
「でもまぁ、作者が『いい加減新しい話書かないとな~』とか言ってるの聞いたし、こういう話になったりしてね」
「でもそれってお前ら危なくね?なんかあったら兄ちゃん耐えれない」
「だけどさ、そろそろ投稿(生存報告)しないと。前の投稿から1カ月以上たってるんだぜ?まぁいつものことだけどさ」
「前回なんて1カ月経ってた詫びをサブタイトルでやってたからな。あれは流石にどうかと思ったわ」
そんな話をしているとインターホンが鳴りモニターが付く。モニターには青葉の姿が映っていた。
「あれ?青葉ちゃん」
『あ、お兄さんですか?遊びに来たんですけど、由梨さんいますか?』
「あ、青葉ちゃん来たの?私も兄貴も作者も絶賛暇だからちょうどよかったよ」
私は私で暇じゃないんですがまぁいいでしょう。
上がってきた青葉は初登場時から比べると薄着になってる。まぁ設定では5~6月くらいにしてるし多少はね?
「おぉ~、今日も可愛いねぇ」
「ふふ、ありがとう」
「その絡み方どうなんだよ。もっと何かないのかよ」
今日の青葉の服装は白を基調としたシャツにデニム生地のパンツだ。世間では梅雨入りしたとかしてないとか聞くが雨が降る気配が全くなく只々暑い日が続いている。なのでこういう服になったのだろうが、シャツやパンツが青葉のボディラインをはっきりと写しているので…その…作者的にはかなり好みというか…。
「作者、気持ち悪いぞ」
はい、わかってます。でも男はやっぱりこういう服装した女の子って好きだと思うんですよ。
「わかる。男じゃないけど分かるよ作者。これで汗がにじんでたらなお最高だよね」
分かります。
「え、えっと…。その…」
「あぁほら、二人がボンクラーな会話繰り広げるから青葉ちゃん困ってるじゃん」
おっと仕事に戻りましょうか。とりあえず健二さんはお茶でも入れてきてくださいよ。二人に会話させたいので。
「はいはい、わかったよ。麦茶でいいかな?」
「あ、ありがとうございます」
青葉はやや怯えるような雰囲気を醸しながら受け答える。そんなこと気づいていないのか———というかあえて気にしていないのか———パタパタとキッチンに向かう。それにしても、だ。
「———やっぱり男の人苦手?」
「う、うん。ごめんね」
そういえばそんな設定ありましたねと思う作者の姿がそこにはあった。
「まぁあれは無駄に身長高いし仕方ないよ。あと作者ちゃんと仕事しようか?」
ち、ちなみに健二の身長は178cmだぞ!
「でも、ゆくゆくは慣れていかないといけないんだよね…。頑張らなきゃ」
「お?男に興味でもおありで?」
「ち、違うよ!その、由梨ちゃんに会うたびにお兄さんと会うんだから、慣れておかなきゃなって思っただけだよ。言わせないでよ…」
消え入りそうな声なのでちゃんとマイクに入っていなかったのだが由梨にしか聞こえない声で「ばか…」とつぶやく。その姿に思わず抱き締めていた。
「お~い、いちゃつくなら部屋に行ってくれないか?」
急に抱き締められてあたふたしていると麦茶の入ったグラスを持った健二がリビングに来る。それに気づいて由梨は頬を膨らませる。
「もぉ~、水差さないでよ~。でもそっか、あんなことやこんなことするんだったら密室の方がいいよね」
あんなことやこんなこと、で何を想像したのか青葉は顔を染める。そんな光景を尻目にコースターを準備してその上にグラスを置く。
「そうか、気をつけろよ?この家あんまり防音設備とか整ってないから大きな声出すなよ?」
「だよね~、あんまりなことやってると兄貴ムラムラして一人で始めちゃうからね」
「やかましいわ!」
健二が声を荒げるもんだから青葉がさらに委縮する。それに気づいて健二はおずおずと引き下がる。
「あ、ごめん。怖がらせちゃったね」
「ほんとだよ、いきなり大きな声出すから私の『彼女』が怖がってるじゃん」
彼女、の部分に妙なアクセントをつけながら言う。健二は設定上彼女いない歴=年齢なので文句の一つでも言いたかったが隣に青葉が居るので何も言えず押し黙る。
健二はひときわ大きなため息をついてソファに座った。
「…兎に角、あまり騒ぐなよ?」
「はいは~い。じゃ、私の部屋行こうか」
「う、うん…」
二人はリビングを出て階段を上る。リビングには健二一人となった。出ていく二人を見送った後また一つ、大きくため息をついた。
「やれやれ…。ま、楽しそうだから別にいいかな」
おやおや、一人になった瞬間に黄昏てますねぇ。どうしましたか?彼女いない歴=年齢さん?
「いや何、この間『由梨が幸せならいいだろ』みたいな話しただろ?あのことずっと考えてたんだが…」
あぁ、確かにそんな話もしましたねぇ。それがどうかしました?もしかして自分も幸せになりたいとか?
「う~ん。いや、別にそういうわけじゃないけど…さ。このまま幸せになれるのかなって、さ?」
え?別にいいんじゃないですか?青葉さんもいますし十分幸せそうですよ?
「でもなぁ~、俺的には今だけじゃなくて今後も幸せになってほしいなって」
今後…ですか?
「そ、今後。将来の話さ。由梨みたいな美人が『実は女の子が好きで~す』とは言えんだろ?だが生きてりゃそう言わざるを得ないことだってあるだろ。そう例えば、男に言い寄られたときとか。だとしてさ?世間的にそういう人たちって奇異なものとして見られてるわけじゃん?それってさ、幸せじゃないだろ?だから俺は由梨の将来を案じてるのさ」
な、なるほど…。健二さんも健二さんでモブになり下がったわけじゃないんですねぇ。で、具体的なビジョンとかあるんですか?
「いや…。無いけど」
あ、ふ~ん。まぁそうだとは思いましたよ。
「悪かったな…。俺だって色々考えてはいるけど、俺なんかじゃできることなんて限られてるしさ? 本当は…俺だって力になりたいよ」
…じゃあ力になりましょうか。
「———は?」
いえね?実はあなたの力になれそうな人を知ってるんですよ。その人に頼んで———。
「いいのか?」
ん?
「俺なんかが、力になれるのか?何もかも平凡でとてもじゃないが力になれそうにないぞ?それでもいいのか?」
あぁ、大丈夫ですよ。この先の未来は保証されてるので。
「…?どういう———」
さぁて、今回はここで切りますか。次回もお楽しみに~。
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「はーい、カットでーす。お疲れ様でしたー」
「「「「おつかれさまでーす」」」」
撮影が終わりスタッフがスタジオを片づけたり役者からマイクを回収したり忙しそうにする。
「いやぁ、今回ひっどいね~」
「ですね~、たぶんあの作品への伏線なんでしょうけど…」
「何が何でも強引すぎるよなぁ…。 そういえば、もしかして新しい登場人物出たりする?」
振り返るとナレーション席から出てきてスタッフに挨拶している作者が。
「えぇ、新しい人出ますよ?しかも別の作品でレギュラーだった人ですよ。しかもしかも…」
「「「しかも…?」」」
「その作品、連載再開しようか迷ってるんですよ」
作者的にはここで『え~!そうなんですか!?』みたいな反応を期待していたようだ。しかし現実は…。
「ふぅ~ん」
「そうなんですねぇ」
「そんなことより出番が増えてよかった…」
現実は非情であった。これには作者さんもおっこり。
「なんでそんなに反応薄いんですか!連載再開ですよ?もっとお話の幅が広がるんですよ?良い事じゃないですか!」
「いいことかもしれないですけど…」
「作者さぁ、自分のスケジュール管理できてる?ただでさえ投稿頻度低いのに連載増やすとか、無謀にしか思えないんだけど?」
ストレートに言われたのが余程ショックだったのか、作者は肩を落とす。
「ま、まぁそうですけど。その作品、ほぼ短編なのでコンセプトさえ思いついてしまえば簡単なものですよ」
「ふ~ん、ま、作者がそれでいいならそれでいいんじゃない?」
「が、頑張ってくださいね」
「ありがとう…。ありがとう青葉ちゃん。今の味方は君だけだ…」
「で、その作品ってのはあれでいいんだよな?」
「えぇ、あれですよ!では次回もお楽しみに!」
-to be continue-




