一話 戦狂の騎士
時は戦乱、様々な国が領取り合戦しあう糞みたいな世界
俺は小国エヴァンの騎士、ヴァルサーだ
突然だが俺には、頼れる仲間が唯一人いる
ちっぽけで何も残せない俺の話なんか要らねぇ、そいつの話だけしたい、俺はその語り部って訳だ
という訳で、「聖域の騎士」として伝説を作ったアルトリア・グラムの無双話、始まり始まりー
小国エヴァン
大小様々な国が渦巻く中で、とるに足らない弱小国家だ
だが、三年前から侵攻された事はねぇ
我らが騎士団長アルトリア・グラムが指揮を執り始めたからだ
「ん?どうかしたか?」
グラムは顔色一つ変えないで立っていやがる
「これから総大将として初めての戦争だってのに、どうしてそんな平然としてやがんだ」
そう、仮染じみた兵士学校を卒業し、何度か実戦を積んだ程度の俺らが、指揮系として駆り出される、これ自体が異常だ
そしてこいつも異常、初めての戦争、負けたら滅亡必死の一戦、背筋が震え上がって当然だ
「ばっかかよ、俺が緊張したら勝てるもんも勝てないだろ」
平然と言ってきやがる、しかも笑いながらだ
「いやお前、この前まで一兵卒だったじゃねーか、指揮とれるのか?崩れて敗走になったら俺ら負け確定だぞ?」
相手は左程強くない、だが俺らの軍は弱い、歴戦の人間は数える程だ
だが、その人間を超えるほど俺らが卓越している
「崩れないさ、俺達が。2人で戦線を作ればいいのさ」
化け物は発言が違う、やめろ俺を巻き込むな
「俺がやられたらどうすんだ?」
「殺られる前に殺るさ、お前は殺させない」
人外だ…………
さぁ始まりますは伝説の一ページ目
少し小高い丘に陣取った我らと敵軍、近くに森無し、草原での真っ向勝負
相手方は「漁夫の利」特化で来ました小国ガウル、兵士の数は2000、弱いねー
対するは我が国エヴァン、兵士の数1000近く、司令官は先の戦いで命を落として変わったゾ☆
……ヤバい絶望しか漂って来ない
だがーー
「俺達しか居ねぇもんな」
単騎で突撃したグラムを見ながら、そう呟いた
指揮権は全て俺に委ねてある、ただ俺が無双する、相手が恐慌に陥るタイミングで突撃の指令を出せ。ただそれだけを伝えられた。
「我々にやっと勝利の時は訪れようとしている、それは我らが正義であるが為か?我らに地の利があるが為か?否!!我らは強い、圧倒的に強い!この戦いはその証明である!一層気を引き締めよ!!貴様らはただ、我とこの男に続くだけでいい!!そして勝つのだ!聖母様の為に!」
「聖母様の為に!!」
そう言い残し、奴は単騎馬を使い駆けていった、馬鹿だ、2000に勝てる訳無いだろ。
あった
「見えるか貴様ら!!この中には俺らを若造と思ってる奴も奴も居るし、初めてでまともな戦いを知らん指揮官だと思ってる奴も居るだろう。知らん!!戦場では勝利こそがルールだ!ただ一人突撃する彼を見よ!我らの勝利を体現し、戦い続ける彼を、文句なら彼を超えてから語れ!全員生きて帰って言え!さぁ行くぞ!全軍突撃!!」
「「うぉぉぉおおおお!!!!」」
そう言って俺は馬を走らす、前には俺らの頼りになる総大将サマがいる
100だ
たった1人でそれだけの敵を薙いでいる
その理由にはおおよその検討はつく、相手の油断と疑心だ
相手は最初、1人で来た人間を処理するだけで良かった
ただ暴れ回られ、被害の数が2桁に届くと話が変わってくる
どこから攻撃しても勝てないかも知れないという疑心
鈍った太刀筋を見逃すほど、奴は甘くない
死ぬ気で戦う人間、それも天性の天才と、油断し心にダメージを負った凡人では、勝負になる筈が無い
そして相手の不幸は、この戦いが漁夫の利だった事だ
つまりは「初めて」なのである
単騎で突っ込んできた男が総大将であるなんて、誰も分からない
だから、力を見誤る
軍の本体から先行した俺が、奴と合流し、後ろからの攻撃を狙っていた者共を2人同時に薙いでやると、連中の顔色が変わった
これまで戦ってきた男よりも、一回り大きい剛力の兵士
さらに後ろから迫る、鬼神の如き勢いを持った軍勢
その二つの要素は彼らを引き下がらせるのに充分だった
「貴様ら!前を向かんか!!これでも尚我軍は数において優位をとっている!!」
相手の将も激励を飛ばす、違和感を感じて前線に出てきたのだろう
だが、それは余りにも愚策
「任せた」
その言葉を背に、俺は一直線にその指揮官の元に駆ける
線上にいた敵は全て薙ぎ払う、5人倒した所で邪魔する者は居なくなる
俺は道を開く者だ、作る者ではない
だから、道ができたらチャンスは逃さない
「我こそは総大将グスタフ・ヴァルサーだ!!兵士共に前を向けと言うのなら貴様も出てこい!我は逃げん!!」
そう言いながら男の元に突撃する。逃げれば崩壊だ、戦わざるを得ない
「逃げる訳無いだろう!若輩が!!」
そう言い突貫してきた敵将、得物は同じ槍、だがリーチは俺の方が長い
おかしい長さの槍を振るい、俺は奴の頭を狙う
その一撃をガードしようと槍を当てがおうとする
その動作を見て、俺は槍を引き思い切り奴の胴をブチ抜く
本来なら遠心で戻らない筈の槍をいとも容易く手繰り、突きにその力を乗せる姿と、突き刺した敵将ごと槍を持ち上げ、地面に叩きつけたその様は、敵の戦意を完全に削り取るに足りた
戦線は完全に崩壊、撤退する相手を俺達は逃がさない。彼らにとっては悪夢だろう、何人いようが敵わない一騎兵と、敵将に突貫し人を槍で持ち上げる怪力の将、その夢は醒めることなく奴らを苦しめ続けるだろう、少なくとも2度とこの土地を踏めない程に。
処女作です。
BLがテーマですが、無駄に絡みません。
ホモは尊いという事だけを伝えたかった。