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真実を貫け

相変わらずの展開の早さ

 オシリスは俺の出したツタをもはや避ける必要が無いと思っているのか、ツタが向かってくるのを気にせずにいた。


 その結果、腹と左肩にツタが刺さったものの、特に痛がりもせずにこちらに向かってきた。


「腹と左肩は無し……じゃあ次は……」


 どこを狙おうか、と思っていたとき、


「あぶねっ!」


 後ろに気配を感じたので、直感を信じてその場から横に退くと、その瞬間、先ほどまで居た場所に槍が突き刺さった。


 その槍を持っていたのはアンデットで、避けた俺の方に他のアンデット達もゾロゾロと集まってきていた。


 このアンデット達、邪魔だな……。ただでさえオシリスで手間取ってるっていうのに……。


 アンデット達をどうにかしつつオシリスにあるはずのコアを見つけるのはキツイ。


 こうなったらまずはアンデットを……


南無阿(貴方たち全)弥陀仏(員逝ってよし)!」


どこからか母さんの声が聞こえた瞬間、周囲に居たアンデット達が次々と成仏していった。


「チッ……また邪魔をするんか、せやけど無駄やで、ワイが召喚を止めない限り黄泉軍よもついくさは湧き続ける。少しすればまたすぐここは黄泉軍よもついくさに囲まれるで、それに――」


 その言葉通り、地面からは次々とアンデット達が湧き出てきていた。そして、その中には一際目立つ皮膚はただれ、髪は伸びきり、目が無く、目があったと思われる場所からは血が流れている醜くて恐ろしい女が居た。


「……ようやく来たんか、黄泉酷女よもつしこめ


 その女はオシリスの言葉には答えず、俺を指差すと口を三日月の形に歪め……


「イタダキマス」


 女の言葉が聞こえたと思ったそのとき、既に女は俺の目の前に居た。


「退避!!」


 事前に背後に忍ばせておいたツタに俺を掴ませ、寸前のところで俺は後方へと回避した。


「……アァ?」


 空振りしたのが不思議なのか、女は空振りした手を見て首を傾げた。


 何だ今の……、全然見えなかったぞ……。


南無阿弥陀仏(逝ってよし)!」


 母さんが女に魔法(?)を使うも、女は特に何事も無かったかのように再び俺に視線を向けた。


 くそっ……、母さんの魔法すら通用しないのか……。


黄泉酷女よもつしこめ……、一歩で4000km進むと言われるコイツに目をつけられたが最後、逃げられへんで?」


 オシリスの言葉に驚く暇も無く、女はまたしてもこちらを見たあと舌舐めずりをした。


 やば――


「私の息子に対して女に手出しはさせないわ!」


 先ほどまで姿を見せなかった母が突然後ろから姿を現した。そして、母さんは手を前に出し


「悪しき者よ、神の名の元にひれ伏して、自らの罪に拘束されたまへ!!」


 ゴッ! と上から押し潰されるような音が聞こえた瞬間、女が突然地面に凄まじい勢いで叩きつけられた。


「ア? アア!?!」


 もがいているようだが、女はまるで地面に縫い付けられたかのように動かなかった。


 そのまま母さんは指で十字を描き


かえりなさい。強制成仏さようなら


 「アアアアアアアアアアアア!!!」


 苦しさと憎悪にまみれたような表情を見せながらも、女は消えていった。


 オシリスはイライラを隠そうともせずに乱暴に頭を掻くと


「はぁ……やっぱりアンタから倒すべきやな!!」


 休む暇もなく、オシリスは母さんの元へと飛びかかってきた。


 俺は呆然としていたため、先ほどのようにツタを準備しておらず、壁を作って母さんを守ることに意識が向かなかった。


「母さん! 逃げ――」


 俺の言葉が最後まで紡がれる前に、すでにオシリスは母さんの目の前まで迫っていた。


 そして、気づいたときには両者の間からは血がポタポタと垂れていた。


「母……さん?」


最悪の事態が目の前で起こり、俺は愕然とした。


「ぐぅっ……!?」


 が、血が流していたのは母さんではなく、オシリスだった。


「がはっ!!」


母さんは口から血を吐いて倒れこんだオシリスを見下ろした。


「再構築とか言ってたけどやっぱり間違いなかったみたいね。貴方のその姿は所詮、実体のある魔法で作られただけの体。本体は――」


母さんは視線をこの墓場にひとつだけある立派な墓に向け


「あそこにあったのよね? オシリス――いえ、この墓場の主、偉人"オスカー・アレクシア"さん?」


「何故……それを……!」


 オシリスは苦しげに胸の辺りを押さえながらも母さんを見上げた。


「気付いたのは私じゃなくてあの子達だけどね」


 そう言う母さんの視線の先には、掘り出したと思われる遺体の胸元に小刀を突き刺している影の傀儡達の姿があった。


「そう……か、そいつは……ありがとな……」


 何故オシリスが礼を言うのか俺にはわからなかった。だが、オシリスは俺に視線を向け


「アル君……と言ったかな……?すまなかった……。私のせいで……こんなことに、なってしまって……」


「え? いや、どういうことなのかさっぱりわからないうちに謝られても……」


 突然目付きや態度が変わったオシリスに俺があたふたしていると、オシリスはそれを見てクスッと笑った。


「どうやら私の体は……神の力が馴染みやすいようでね……。私の体に無理矢理……邪神の配下が侵入してきたのさ。そいつの名が――オシリス」


「……ってことは」


「ああ、どうやら、邪神は……素質のある者の体に配下を侵入させてその体の支配権を……得させることにより……この世界に全ての配下を、降ろそうとしてるらしい」


「つまり、もうイルビアは――」


既にイルビアではない、別のナニカなのか?


「いや、彼女には……まだ誰も憑いていない。彼女は……恐ろしいほどの素質を、持っているから……オシリスとしての私が、少し力を流しただけで動き始めて、その後、邪神から力を……貰ってさらに強くなった……彼女は――」


オシリス――いや、オスカーは絶え絶えとしながらも俺に事実を伝えるために口を動かしていた。


そして――


「今では……君に次ぐ……邪神の依代に成りえる筆頭候補さ」


「……は?」


 邪神の依代……候補?


「だから、もしも邪神を降ろしたくないのであれば――イルビアさんを殺すしかない」

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