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相応の覚悟

 オシリスは俺の後ろに居る影の傀儡を見て溜め息を吐き、


「なんやぎょーさんお仲間さんを連れてきたみたいやけど......その様子を見るに、こっちに来る気は無いみたいやな?」


「それは......」


 今の状況だと肯定も否定も出来ない質問に、俺は言い淀んでしまった。


 その様子を見たオシリスは何かに気付いたような顔をして、落胆の表情を浮かべた。


「? もしかして兄ちゃん、何の覚悟もしないままここまで来たんか? そりゃご苦労なこと――」


 そのとき、オシリスの言葉を遮るように2つの影がオシリスに迫った。


「甘いわ! 気配が丸分かりや!」


 オシリスはガッと2つの影を掴むと、そのままそれをこちらに放り投げた。


「ぐっ!」


「がはっ!」


 俺の前に転がってきた二人は影の傀儡の構成員だった。


「これで終わりなんか?」


 その言葉に、セロは『ぐっ......』と唇を噛み締めていた。


 恐らく、先程の『手筈通りに頼む』というのはこのことだったのだろう。


「期待外れもいいとこやな。じゃ、そろそろ終わらせたるわ」


オシリスは、気絶して縛られている母さんと父さんを

一瞥すると、母さんの方に向かった。


「待て!」


 オシリスは恐らく母さんを殺すつもりなのだろう。それを悟った俺はオシリスの元に駆け出し、拳を振り上げるが、


「だから甘い言うとるやろ!」


 俺の拳はオシリスに軽々と受け止められ、気がつけばオシリスの拳による鋭い一撃が目の前に迫っていた。


「ぐっ!?」


 その一撃をまともに喰らった俺はあまりの威力に後方に飛びそうになったが、しかし相手によって掴まれていた腕を引っ張られ、俺は再びオシリスの前に戻され、そのまま俺の腹部に重い蹴りが放たれた。


「がはっ!」


 後方に飛ばされゴロゴロと転がった俺の口の中には鉄の味が広がっていた。


 そんな俺を見下したような目線で見たオシリスは再び視線を母さんの方へ戻した。


「これは兄ちゃんが何の覚悟も無しにここまで来た結果や。 精々目に焼き付けとくんやな」


オシリスはそう言うと、手刀を横に振り抜いた。その手刀はいとも容易く母の胴体と首を切り離し、辺りには鮮血が飛び散った。


「あ......、ああ......」


 あまりの衝撃的な光景に俺は何も言えずにいた。


 母さんが目の前で死んだ。


「俺の......せいで......」


「ふん、後悔するくらいなら最初から覚悟しとけっちゅーんや」


「そうよアル、後悔するような事をしちゃ駄目なのよ?」


「ごめん......母さん......ごめ――え?」


 後ろから聞き覚えのある声がした。だが、本来ならこの人の声は聞こえるはずがない。幻聴か何かだろうか。


「嘘......やろ?」


 だが、見るとオシリスの表情が驚愕に満ちていた。


 まさか.......。


 俺がゆっくりと顔を上げると、そこには見覚えのある女性が立っていた。


 その女性は、美しく、優しく、そして、俺の事になるとよく暴走する親バカな人で......


「久しぶりねアル! 正真正銘本物の母さんよ?」


――俺の母さん、ルシカ・ウェインその人だった。

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