選択
「死体遊戯?
なんだよそれ? 聞いたことないぞ...」
「名の通りや、ワイはただ死体を弄くってるだけの
狂人や。 自分で狂人って言うのもなんか空しいんやけどな」
そう言ってオシリスはケラケラと笑った。
死体を弄くる...確かにただの狂人だな...。
「なぁ、兄ちゃんもこっちに来んか?
妹ちゃんみたいに」
「...イルビアのことか?」
「せや、あの子だって、兄ちゃんがこっち側に
来るのを待ってるんやで?」
イルビアが、俺を...?
確かに前にあったときは俺を引き込もうとしてたな...。
でも、なんでコイツらは俺にこだわるんだ?
...やっぱり、素質(?)があるからなのか...?
でも、ここでこれを承諾するわけにはいかない。
善神にこの世界を邪神達から守るように
頼まれたしな、だから...
「悪いが断る、俺はそっち側にいくつもりは無い」
「はぁ...、そう言うと思ったわ...」
オシリスはやれやれといった感じでそう言ったあと、目を細めた。
「やっぱり、妹さんと同じように無理矢理
引き込むしかないみたいやな」
「は?」
コイツ...今なんて言った?
「ん? 何や間抜けそうな顔して。
...ああ、そういや言ってなかったやね。
兄ちゃんの妹、イルビア・ウェインを
こっちに引きこんだのはワイや」
こいつが....イルビアを...?
イルビアの遺体に何かをして蘇らせたあと
邪神側に引き入れたってのか...?
「...お前...!!」
俺は怒りを感じて拳を握るが、オシリスは
それを手で制した。
「まあ落ち着くんや、ワイは別に兄ちゃんと
事を交えたいわけやない。 それに...まだ疑問に思わないんか?」
「...何にだよ?」
「兄ちゃんの親、どこで何してるんやろうな?」
そう言ってオシリスはニタリと笑った。
まるで俺に絶望を与えるかのように。
その笑みだけで、俺は察してしまった。
「お前...まさか俺の親まで...!?」
「さぁて、どうやろうなぁ?
でもひとつヒントを出すとすれば...
あの手紙...血塗れにさせるのに苦労したんやで?」
...手紙を血塗れにするのに苦労した?
ということはあの手紙は――
「俺の親に何をしたんだよ!?」
焦燥混じりに俺が声を荒がせてそう言うと、
オシリスは突然笑い始めた。
「くく...ははははは!! ええよ! ええよ
その怒りと絶望が混じった顔! そういう顔が見たかったんや!」
そう言って愉快そうに笑うオシリスは、
笑っているはずなのに笑っていないようにも見えた。
狂人、まさにその言葉に恥じない笑い方だった。
「...狂ってるな...」
「最初に言ったやろ? ワイはただの狂人や。
その言葉はただの褒め言葉やで?
さて、じゃあそろそろ本題に入らせてもらうわ」
「本題...?」
本当に戦いに来たわけじゃないのか?
「レヴェラーナにある、今は使われておらん
ヒューズ墓地。 そこで待っとるわ」
「...どういうことだ?」
「そのまんまの意味や、そこに来てくれれば
親のことも教えてやるで、...まあ、知ったからといって兄ちゃんの親が助かるかどうかは兄ちゃん次第やけど」
オシリスは言い終えると、もう用は
無くなったと言わんばかりにクルリと
回って背を向けると、そのまま外へと歩き出した。
「待て!」
俺の制止の声に、オシリスは立ち止まった。
「...兄ちゃん」
オシリスは顔だけこちらに向けると
「精々レヴェラーナに来る前に、こっち側に
つくかどうか考えておくことや」
俺はそう言って去っていくオシリスに何も
言うことが出来なかった。
レヴェラーナのヒューズ墓地...そこには
絶対に行かなければならない。
そして、向こう側につくかどうかも...。
「...どうしろってんだよ...」




