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父親からの手紙

家で久々にゆっくりとしながら、俺は

イルビアの事を考えていた。


前に皆に話した内容に嘘は無い。

イルビアはあの一件で亡くなっている″はず″なのだ。


それなのに先日、彼女は姿を現した。

それはつまり、イルビアは生きていた...もしくは

何らかの方法で蘇ったということになる。


手を出したのは間違いなく邪神、もしくは

邪神に関係がある奴だろう。


もし見つけたらまず一発ぶん殴ってやりたい。


「...そういえば」


俺はちらりと机の上に置いてある手紙を見た。


これは母に扮したイルビアから送られてきた手紙だったはずだ。


なら、本物の母さんはどうなったのだろうか。


あの人ならまだ大丈夫な気もするが...。


「...あっ」


手紙で思い出したが、そういえばあのとき

父さんからも手紙が届いてたんだったな。


血塗れたあの手紙、恐らく母さん(に化けた

イルビア)のせいだとは思うが、一応中身を

確認しておくか。


俺は立ち上がると、棚に置いておいた

手紙を手に取った。


そして、手紙を開封して読み始めた。


『アル、母さんのことで話があるんだ。

またこっちに来てくれないか?

詳しくは会ってから説明する』


もしかして、母さんについてなにか

勘づいたことがあったのだろうか。


丁度俺もイルビアのことを伝えようと

思っていたところだ。


でも、本当のことを教えた場合、父さんが

ショックでひっくり返りそうだな。


また幽体離脱したりしてな。


とりあえず、またここを数日離れることに

なるだろうし、いつも会うような人達には

伝えておかないとな。


俺は共鳴転移石シンクロストーン

手に取ると、それを使って魔王城まで転移した。


すると、何かを踏み潰して壊してしまった

かのような感触があり、


「うごあああああああああああああ!?!!!」


目の前からはペドの叫び声が聞こえてきた。


「アル・ウェイィィィィィィィィン!!

貴様ァァァァァァァァァァァァァ!!!

何度私を怒らせれば気が済むのだァァァァァ!!」


その顔は今まで見た中でも一番怒りを

あらわにしていた。


恐らく、俺が踏み潰してしまったのは

大事なものだったのだろう。


これは悪いことをしてしまった。


「悪い、まさか転移先にあるとは

思わなかったんだ、ごめんな」


「ふん...まさかお前から謝られるとは...、

まだ製造初期段階だったからからな、

貴様が製造を手伝ってくれるのであれば

許してやろう」


「製造? 何を作ってたんだ?」


「決まっているだろう? ユリア様の

等身大フィギュアだ」


「死ね」


「照れることはない、ここに来たという

ことはユリア様に会いに来たのだろう?

つまり貴様もついにロリコンになった

というわけだ」


「なってねぇよ」


「それに羨まけしからんことに貴様は

最近ユリア様とベタベタしまくっている

じゃないか。


そんな貴様が手伝ってくれるのであれば

より一層ユリア様に近い体格のフィギュアが

完成する」


「オーケー、わかった。 まず死んでくれ。

話はそれからだ」


「わかってくれたか! よし、それなら

早速ユリア様の推定スリーサイズを...」


「あっ! お兄ちゃん!」


ペドの声を遮るように聞こえてきた

声に振り返ると、ユリアがこちらに

駆け寄ってきていた。


「こんなところで何してるの?」


「ああ、実は――」


「アル・ウェイィィィィィィィィン!!

わかった! 手伝わなくても許す!!

後生だ!! 言わないでくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」


その言葉を聞いて、俺は笑みを浮かべた。


流石にこんな目にあえば反省するだろう。


それに、俺も製造途中のものを壊しちゃったしな。


ここは言わないで――


「おお! 言わないでくれるか!!

流石は我が同志だ!!」


ごめん気が変わった。


「ユリア、こいつお前の等身大フィギュア

作ろうとしてたぞ」


「え? 嫌ぁ...」


ユリアはドン引きしながら俺の後ろに隠れた。


「ぬぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!

幼女ユリア様に嫌われたぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


ペドは叫び声をあげると、天井を突き破り、

そのまま空高くまで飛んでいった。


「...なんだったんだ...あれ...」


「まあ、これだけすれば少しは

反省してくれるかな?」


「そうだな......



......ん?」


まて、その発言だとまるでペドに

痛い目を見せるためにわざとドン引き

したように見せかけたように聞こえるんだが...。


ユリアの顔を見ると、テヘッと舌を出して

いた。


「お前、わかっててやったのか...」


「うん、少しは反省してもらわないと...。

それで、お兄ちゃんはどうしてここに?」


あ、すっかり忘れてた。


「ああ、そのことなんだが、ちょっと

父親のとこに行くから数日は王都から

離れる。 そのことを伝えに来たんだ」


「そうなんだ。 わざわざ教えてくれて

ありがとね、お兄ちゃん」


「おう、んじゃ、俺はそろそろ戻るわ」


「うん、じゃあまたね、お兄ちゃん」


「またな」


バイバイと言いながら手を振る

ユリアを見ながら、俺は王都に戻った。

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