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過去からの手紙

「――ってわけで、イルビアは

俺の妹だったってわけなんだが...」


少し重い話をしてしまったからか、全員が

黙っていた。


あのペドでさえ、空気を読んでいるのか

俯いていた。


そして、ペドがふるふると震えだすと


「あんなロリっ娘が義妹とはどういうことだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


おい、もしかしてそれに憤りを感じて

今まで黙ってたのかお前。


いきなりシリアスブレイクを始めたペドを、

ユリアがなんとか宥めようと声をかけた。


「ちょっ!? ペド! 空気読んで...」


「これが黙っていられますかぁぁぁ!!

つまりやりようによっては疑似近親相姦が

出来るということですぞぉぉぉぉぉぉ!!!」


「ペド、いい加減に...!」


ユリアのペドをたしなめる口調が少し

強くなったそのとき、ペドの頬に薄い切り傷が

走った。


「...静かにしててもらってもいいかな?」


笑顔でそう言ったルリの言葉にペドは

言葉無く頷いた。


それもそのはずだ、ルリの手には

抜刀された剣が握られており、その剣先は

ペドの喉元にあったのだから。


「そんな事情があったんだ...。

それなのに私、そんなことも知らずに

無理に誘って...」


ファルが半ば無理矢理俺を王都に誘っていた

ことを悔やみながら俯いていた。


「いや、別に気にしてない。

ここに来るのは自分で決めたことだしな」


「そうなの? ならよかった...」


ファルはホッとした様子で胸を撫で下ろした。


「でも、それなら農民になるにあたっての

固い理由があるのに、どうして王都に来ることに

したの?」


「ああ、それは...」


ヘレンさんが不思議そうに聞いてきたので、

俺は立ち上がると、棚からひとつの手紙を

取り出して、ヘレンさんに渡した。


「それ、読んでみてください」


俺がそう言うと、ヘレンさんは手紙を読み始めた。


「...これって――」






――――――――――――


時はファルがシルス村に来て、俺を

王都に誘う前日にさかのぼる。


俺は月に一度、両親の部屋と、イルビアの部屋を

掃除することにしている。


丁度この日は掃除をする日だったので、

俺は両親の部屋の掃除を終えたあと、

イルビアの部屋を掃除していた。


「...あれからそろそろ10年か...」


ひとり思い出しながら棚を雑巾で拭き始め、

棚の中に置いてある箱を一度取り出して

奥の方も拭こうとしたそのとき、手に持っていた

取り出した箱を床に落としてしまった。


「あっ!」


気付いたときには、箱は床に激突しており、

蓋が取れて中身が見えてしまっていた。


「やっちまったか...。 ...ん?」


箱の中には、封筒のようなものが入っており、

その表面には『お兄ちゃんへ』と書いてあった。


俺はその封筒を手にとって、じっくりと見つめた。


「随分古いみたいだけど...なんだこりゃ?

手紙...か?」


封筒を開いてみると、やはり手紙が入っており、

俺はその手紙を読み始めた。


『お兄ちゃんへ


この手紙をお兄ちゃんが読むのは

私が死んでからだと思うの。


あれからどれくらい経ったかな?


お兄ちゃんのことだから軽く10年くらい

かかってたりしてね!』


...よくわかってらっしゃる...。


『それでね、多分お兄ちゃんは自分のせいで

私が死んだって責任感じちゃってると思うんだ。


それで、また同じことを起こさないためにも

農民にならなきゃー! って思ってるんだろうね。


確かに私は農業に勤しむお兄ちゃんの姿は

好きだよ。


でも、義務感に捕らわれたお兄ちゃんは

見たくないの。


お兄ちゃんにはやりたいことをやって

もらいたいの。


まだ若いんだから農業よりもやりたいことが

この先見つかるかもしれないと思う。


それなのに、私を理由にしてその機会を蹴る

なんてことしたら許さないんだからね!


なんでも経験が大事だってお母さんも

お父さんも言ってたよね?


だから、もしも今までと違うことが

やれそうになったなら進んでやってみてよ。


それをしてもなお農業が一番だと思うん

だったら農民として生きてくれればいいの。


自分を責めないで、自由に生きてね。


最後に...ありがとう、お兄ちゃん。


イルビアより』


「...」


ほんとに出来た妹だよ、お前は...。


この手紙をきっかけに、俺はファルの話に

乗っかることにしたのだった。

過去編ようやく完結しました。


...え? お母さんはどうなったかって?


...それはそのうちわかるかもしれませんね。


新章、お楽しみに。

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[一言] ペド って、ペドフィリアの略?
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