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一人の少女の結末

あれからも、イルビアは毎日俺に食事を

運び続けてくれていた。


そのお陰で俺の体調は随分と楽になった。


だが、俺が元気になるにつれて、今度は

イルビアの体調が悪くなっているように見えた


なので、イルビアが食事を運んできたときに

聞いてみることにした。


「お兄ちゃん、ご飯持ってきたよ」


そう言って部屋の扉を開けて入ってくる

イルビアからご飯を受け取ったあと、

俺はイルビアに質問した。


「イルビア...、お前、大丈夫なのか?」


「え? 何が?」


「最近、調子が悪そうに見えたからさ。

大丈夫か?」


「別に平気だよ?」


そうは言うが、明らかにイルビアの調子はおかしい。


心なしか前よりも痩せているし、足元も

フラフラとしている。


「大丈夫だよお兄ちゃん。 気にしな――」


イルビアの言葉は最後まで語られることは

なかった。


突然イルビアが目の前で倒れこんでしまったからだ。


「イルビア!」


俺はすぐにイルビアに駆け寄ると、イルビアは

ぐったりとしていて、顔を真っ赤しながらも

汗をかいているのが確認できた。


「大丈夫か!? イルビア! イルビア!?」


これは...マズイ...。


「母さん! 父さん! イルビアが!!」


俺の叫び声に、なんだなんだと部屋にやって

来た二人は、俺の部屋で倒れているイルビアを

見て驚愕した。


「これは...!? どうしたんだ、アル!?」


「わからない...! 突然倒れて....!」


「あなた! とりあえずイルビアを部屋に!」


「わかった!」


父さんはイルビアを抱えると、急いで

イルビアの部屋に運び始めた。




――――――――――――――




「熱ね」


母さんが部屋に寝かせたイルビアの額を

手で触りながらそう言った。


「やっぱりそうか...。 ほら、イルビア。

食べ物持ってきたぞ」


父さんはそう言うと、イルビアが普段

俺に持ってきていた食事の半分くらいの量が

乗った皿を持ってきた。


「? 父さん、余裕が出来てきたんだし、

もっと食べさせた方が――」


「余裕? 何を言ってるんだ?

まだまだウチはかなり食料に

困っているんだぞ?」


...え?


「イルビアがお前のところに食事を持っていった

ときもこのくらいの量だっただろ?

これが一人に出せる限界の量なんだ」


...待て、どういうことだ?


「いや、でもイルビアが俺のところに

持ってきたときはもっと...」


「うーん、でも確かにこれが限界の量だしな。

見間違いじゃないのか?」


いや、それは絶対に有り得ない。

絶対にこっちの方が格段に少ない。


...ってことはまさか...


「イルビア!? お前まさか...!!

何も食ってなかったのか!?」


その言葉に、イルビアは力なく笑った。


「...バレちゃった?」


「「なっ!?」」


父さんと母さんは、イルビアがここ数日

何も食べていないと言う事実に驚愕した。


「で、でもイルビア!! あなた、お兄ちゃんと

一緒に食べるって言ってお皿をふたつ持って...」


「それはね、ひとつのお皿に全部合わせて

それをお兄ちゃんに食べさせてたんだ」


「...なんでだ...?」


父さんがわからないといった様子でイルビアを見た。


「だって、お兄ちゃんは5日間も食べなかったん

だから、例え食べ始めたとしてもこんなに

少ないと体調回復に意味ないでしよ?」


「...イルビア、だからってお前が...どうして...」


「お兄ちゃん、あのままだったら死んでたんだよ?


私、お兄ちゃんの居ない家なんて嫌だもん。

だから...」


「イルビア...、ごめん...」


「別にいいよ。 まったく、しょうがない

お兄ちゃんなんだから...」


俺達の会話に一段落つくと、父さんが皿を出した。


「さて、イルビア。 とりあえずこれを食べなさい」


「ああ、お父さん、ごめんね? 

実は数日前から熱があったのを隠してたから

今すっごく疲れてるの...だから、一回寝て

起きたら食べるね」


「そ、そうか...」


イルビアから今は食べる意志が無いと聞き、

父さんは皿を下げた。


「じゃあ、これ以上うるさくしたら

イルビアが眠れないでしょうから、私達は

部屋を出ましょう?」


「そうだな」


母さんと父さんが部屋から出ていこうとした

ので、俺もそれに続こうとした。


そのとき


「お兄ちゃん...」


「...ん?」


イルビアに呼ばれて振り返ると、イルビアは

満面の笑みを浮かべて俺にこう言った。


「大好き...」


「え? お、おう。」


いきなりそんな事を言われたので、俺は

たじろぎながらも返事をして部屋を出た。




「...″だったよ″...」


最期に一人そう呟いたイルビアの瞳からは

涙が溢れていた。


そして、イルビアが眠りから覚めることは無かった。


何も食べずに免疫力が低下しているところに

病気にかかったので、それにやられた部分が

大きいと、後日診療所の医者に言われたのだった。

展開早すぎましたか(白目)


というわけでこうしてイルビアさんは

亡くなりました。

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