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意地を張るだけ

食料が全く手に入らなくなり、空腹と

戦い続ける日々を過ごすこと数日。


かなり少なめに摂っていた食料も底を尽き

始めた。


村人同士協力して...なんて甘いことは言えない。

全部の家が食料に苦しんでいるのだ。


なので、お裾分けを貰うなんて事は出来ない。


森へ狩りに入っても、噴火の影響からか

前よりも格段に獲物の数は減り、それが

より一層飢饉へと手を貸す結果となった。


しかも、この状態に陥っているのは

この村だけではない。


他の村も同じような状態になっているようだ。


そのため、王都にも食料が集まらず、

食料を得ることが難しい状況になっていた。


そんな状況なので、俺は自分の部屋で

腹を手でさすりながらじっとしていた。


それにしても腹減ったな...。


腹が減りすぎて腹と背中がくっつきそうなんて

言葉を聞いたことがあるけどそれを

感じる日も遠くなさそうだな。


そもそも、どうしてこんな目に...


農家だから食べ物に困ることなんて無いと

思ってたけど...、天災なんてあるんだな...。


そもそも噴火さえ無ければ俺の米が...


「...米?」


そうだ...、そもそも俺があのとき

はしゃいで怪我なんてしなけりゃ...まだまだ

うちの食料に余裕があったはずなんだ。


あのとき、無理をしてでも田植えをする

べきだったんだ。


それなのに...


「......」


俺は立ち上がると、部屋を出て母さんの

ところへと向かった。


「...あら、アル? どうしたの?」


「母さん、俺、今日からしばらく何も

食わないことにするよ。


俺が怪我しなきゃ今頃この家には米が

あったんだ。


それなのに、食料が無い原因を作り上げた

俺が食べるわけにはいかないから」


「アル...!? 貴方は何も...!!」


驚いた顔をしながらも俺を止めようとする

母さんの声を無視して、俺は自分の部屋へと

閉じこもった。


その後、ご飯の時間になって母が呼びに来たが、

俺は一切部屋から出ることがなかった。


父さんとイルビアも、心配してくれて

様子を見に来てくれたが、どちらにしろ

俺の決心は変わらなかった。


部屋の扉の前にはお盆の上に置かれた料理が

あるが、俺はそれに手を伸ばすことはなかった。


俺は少なくともこの食料危機が解決するまで、

水以外を口にする気はなかったのだが、

5日も経つ頃には限界に近づいていた。


でも、例え万が一俺が死んだとしたら、俺に

割り振る分の食料が無くなるので、3人が

少しは助かるだろう。


そう思っていた。


だがそんなときだ。 イルビアがまた

やってきたのは。


「お兄ちゃん...、ご飯、持ってきたよ」


扉越しにそう語りかけてくれるイルビア。


だが、その優しさに甘えるわけにはいかない。


「気持ちは嬉しいが、やっぱり俺は...」


「お兄ちゃん、見て」


もしかして俺の好物を持ってきたのだろうか?


「? 別に何だったとしても俺は食わ... 」


扉を開けると、イルビアはお盆を持っており、

そしてなにより...


「...量がかなり増えてないか?」


「うん、ちょっとずつ余裕が出てきたんだよ。

だからね。 もう気にせず食べてもいいんじゃないかな?

これ以上意地張ってたら大変だよ?

もしもお母さんに宣言した手前、プライドが

許さないっていうなら、しばらく私が

ここに持ってくるよ?」


「...イルビア」


「...何?」


俺は料理を指でつまみ、口に含んだ。


「...美味いよ。 ありがとな」


「...うん!」


満面の笑みを浮かべるイルビアを見て、

俺は良い妹を持ったなと思った。


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