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合流

更新が遅れて申し訳ありませんでした。

村から出て数時間が経った。


近くの馬車から聞こえる村長の呻き声を

聞きながら進んでいると、王都の方向から

見覚えのある二人の姿が見えた。


「母さん! 父さん!」


イルビアの呼び声に気付いた二人は、

こちらに向かってきた。


「何があったんだ?」


「実は――」


イルビアが事情を説明すると、二人の表情が

曇った。


「本当か!? くっ...、まさかこっちでも

こうなるなんて...」


父さんは苦虫を噛み潰したような顔で

そう言った。


「″こっち″でも?」


「ええ、実はね、他の地域でも火山が

噴火したらしいの」


俺の質問に答えたのは母さんだった。

母さんは顔色を悪くしながらも続けた。


「このままだと、危ないかもしれないわね...。

今すぐ王都に戻って......!」


「...母さん?」


珍しく焦るような表情をしている母さんに

俺が呼び掛けると、母さんはハッとした顔に

なってこちらを向いた。


「...ごめんなさいね、アル。

母さん、少し焦っちゃったみたい。


...別に大丈夫よね? それに、今はこっちが優先だもの...」


母さんはボソボソと何か言っていたが、

すぐに笑顔に戻ると、俺とイルビアの頭を撫でた。


「怖かったわよね? こんなときに

留守にしててごめんね?

二人とも、しっかり村の人達の言うことを

聞いてたのね、偉いわよ」


そう言って、母さんは俺達二人を

ギュッと抱き締めた。


それに応じて、俺達二人も母さんを

抱き締め返した。


「もう大丈夫だからね...」


聞いていると安心する声で母さんが

語りかけてくれるなか、一人、蚊帳の外に

なった父さんは寂しそうにしていた。


「...あの、俺は...?」


今は我慢してくれ。



―――――――――――――


避難場所に着くと、皆はようやく

落ち着いたが、それも一瞬で、すぐにテントを

建て始めた。


俺達も、家から持ってきたテントを建てている。


「ちゃんとテントを持ってきてくれて

助かったわ」


母さんがそう言って微笑みかけてきた。

すると、イルビアが胸を張った。


「あと食料もたくさん持ってきたんだ!」


「あらあら、偉い偉い」


母さんがイルビアの頭を撫でると、

イルビアは気持ちよさげに目を細めた。


それを、羨ましげに見ている人物がいた。


「いいなぁ...、俺も子供とあんな風に...。

よし、アル、話が――」


「丸聞こえだよ父さん、却下」


「...」


一瞬で封殺し、俺は作業へと戻った。


少なくとも数日はここで過ごすことになる。

ちゃんと丈夫に建てなければ――


「――きゃ」


「ん?」


小さな声が聞こえたので横を向くと、

母さんが真剣な顔をして何かを呟いていた。


「やっぱり――で――を買う――かしら」


「...母さん?」


「なにかしら?」


まるで何事もなかったかのように母さんは

こちらを振り向いた。


「さっきもだけどさ、大丈夫?

色々と1人で考えてるみたいだけど...」


「...別に、対したことじゃないわよ?」


「対したことじゃないならそんなに

考えないよね?


別に無理に聞こうとは思わないけど、

父さんとか、信用できて頼れる人には

話してみてもいいんじゃないかな?」


「...わかったわ。 アル、心配してくれてありがとう」


そう言って母さんは俺を抱き締めた。

強く、強く抱き締められた。


「――どうなっても...絶対に、守らなきゃ...」


耳元から聞こえたその言葉が、

今までの顔色の悪さが何を意味していたのか。

すぐわかることになった。

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