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噴火

火山から噴煙が吹き上がった。


その煙は天高くまで昇って、空を

覆い尽くさんというように広がり始めている。


テスタはその光景を見ると、俺の方を振り向いた。


「これ...マズイんじゃねぇか!?」


「そうだな。 ぶっちゃけかなり

ヤバそうだ...。 早く村に戻ろう」


「そうだな!! よし、走るぞ!!」


先程まで歩いてきた道を、来たときの

倍以上の速さで駆け抜けた。


焦るあまり、足元への注意が散漫になってしまい、

途中、躓いて転びそうになったものの、

なんとか体勢を立て直して走り続ける。


村の近くまで来ると、すでに皆は

この異常事態に気付いて集まっており、

騒がしくなっていた。


皆が火山の方を向きながら話していたので、

こちらを振り向かれないうちに俺達は

柵を乗り越え、何事もなかったかのように

皆のところに混じった。


「じゃ、俺は母さん達のとこ行ってくるな」


テスタはそう言うと、家族の元へと

走っていった。


「俺もイルビアを探さないとな...。

えっと...、どこに居るんだ?」


「お兄ちゃん!!」


俺がキョロキョロと見渡していると、

後ろからイルビアの声がした。


声が聞こえた方を見ると、イルビアが

こちらに走ってきていた。


「お兄ちゃん! どこに居たの!?

もしかしてまた森に――」


「ちょ! イルビア! 声がデカイ!」


森に行っていたなんてバレたら

大変なことになるので、俺は直ぐ様

イルビアの後ろに回り込んで、口を塞いだ。


「むー! むぐー!」


「イルビア、落ち着いてくれ。

話はそれからだ」


「む...むぐー!!」


瞬間、イルビアの腕により繰り出された肘鉄が、

油断していた俺の鳩尾にクリティカルヒットした。


「げっぼるじゃあ!?」


あまりの威力に意識が飛びかけた。

が、なんとか耐えきり、俺は鳩尾を押さえながらその場にうずくまった。


「ぐっ...、流石イルビア...。

村の人からの評判が俺より良いだけある...」


「いやそれ今全然関係無いよね!?」


そうだな。 全然関係ないな。

状況が状況だから気が狂ってたみたいだ。


俺はようやく痛みが引いてきた鳩尾から

手を離して、立ち上がった。


「さてと、これ...大丈夫なのか...?」


「わからない。 村の人たちは

とりあえず″よーがん″による危険は無い

って言ってたよ」


「溶岩?」


「うん、なんかマグマっていうドッロドロの

液体がドバーって火口から地上に出てきた

ものを″よーがん″って言うんだって。


あれ? お兄ちゃんもこの話聞いてなかったっけ?」

  

確か母さんが火山の噴火の話をしてくれたのは

寝るときだったよな...。


あ、途中で俺寝てたな。


「わからない、なんだそりゃ」


俺がそう聞くと、イルビアは俺の耳元に口を

近付けてこう言った。


「かなり熱いので触れたら即死だそうですよ

お兄ちゃん」


「なにそれ怖い」


本当に怖い。


そんな恐ろしいものの影響の心配が無くて

本当に良かった。


...でも、それならどうして皆は空を見て浮かない顔をしているんだ?


溶岩が来ないなら危険は無いだろうに...


と思っていたそのとき、パリン!と

建物の窓が割れる音がした。


「...なんだ?」


「噴石...だよ」


答えてくれたのは、後ろから歩いてきた、

村に住んでいる大人の男性だった。


「噴火したときに吹き上げられた石が

その影響でここまで飛んでくるんだ」


「え? あんな遠くに山があるのに?」


「かなり空高く吹き上げられるらしいからな。

それなりに遠くまで飛んでくるんだ。

ここも、その範囲内ってわけだ」


なるほど、皆が浮かない顔をしていたのは

これか。


「...ちなみに万が一人に当たったらどうなるのかなーって」


「当たりどころが悪ければ即死だな」


噴火怖すぎるだろ。


俺が噴火に対して戦慄していると、男性が

村人達の前に立った。


「今、村長から一時避難するようにとの

伝言を授かった。 皆、準備してくれ」


その言葉に、村の人達はすぐに自宅へと

向かいだした。


が、俺とイルビアはまだその場に居た。


「...え? それ村長が言えば良くない?」


この言葉を聞いて、男性は溜め息をつくと


「『腰痛が痛いから代わりに頼む』だそうだ...」


腰痛が痛いってなんだよ。

腰痛で辛いでいいだろ。


なんで同じ意味の言葉を重ねたんだ村長は...。

そんなに腰が痛いのか? もはやもげそうにでもなってるのか?

...腰がもげるわけないか。


多分、村長もわざとだろうな。


「とにかく、君達も準備をしてこい」


「うん。 お兄ちゃん、行こ?」


「おう」


俺とイルビアは、他の人達よりも

少し遅れて自宅へと走り出した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] アニメ版だとアル死んでる描写ですね
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