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幸せ

結局、怪我が治るのはかなり遅れて、

田植えをするのもそれと同じように遅くなった。


すでに両親とイルビアが協力して植えた稲は

収穫の時期を迎えているのに、俺の植えた稲は、

まだまだ収穫の時期には至らない。


俺は自分に与えられた田に植えられた

育ちきっていない稲を時々見ながら、

両親とイルビアの植えた稲の収穫を

手伝っていた。


「よし、これで全部だな。

あとは稲を干そう」


父さんの言葉に俺達は頷くと、

慣れた手つきで作業を始めた。


まず最初に稲を3株ほど束ねて、

その束ねた稲をワラでくるりと巻いて、

ワラを交差させる。


そのあと、ワラの両端同士をねじってお互いに

巻き付くようにした後、そのねじった部分を、

先程ワラをくるりと巻いたときに出来た輪の

中に入れる。


これが稲の束ね作業は一通り終了だ。

あとは他の稲にも同じことをしていけば良い。


そのあと、今度は干すための台作りに入る。


三本の木を用意し、三脚を作る。

それを二つ置き、その上に物干し竿の

ような形状の木を乗せる。


あとはその木の上に先程束ねた稲をかけて

いけば、作業が終了となる。


ちなみに俺はこの作業を他の三人の

2~3倍以上の早さですることが出来る。


その作業をしている俺に向けられる視線は

人間を見る目では無いような気がするのだが

気にしてはいない。


「ふぅ...こんなもんかな」


俺は片手で額の汗を拭いながら

そう言ったとき、父さんが皆に声をかけた。


「母さん、アル、イルビア。

お疲れ様、頑張ったね。 

さ、そろそろ家で休もうか」


「そうね。 今日は頑張ったことだし、

夕飯はちょっと豪華にしちゃおうかしら」


「本当!? やったー!!」


イルビアは母さんの言葉に喜んで、

その場をピョンピョンと飛び跳ねた。


「おいおい、最近は物価が高いんだから

そんなに豪華にしないでくれよ?」


「わかってるわよ。 でも、たまには...ね?」


母さんがウィンクをしながら父さんに

せがむと、父さんはやれやれと頭をかいて


「...仕方ないなぁ...。 じゃあ久しぶりに

贅沢な夕飯をお願い出来るか?」


父さんがそう問うと、母さんは微笑んだ。


「喜んで」


「...ほんとに父さんは母さんには弱いな...」


「うるさい。 惚れた女に弱くなるのが

男ってもんだ」


そういうもんなのかなぁ...? と思っていると、イルビアは、ハッとしたような顔になり


「あ! じゃあたまに困っている美人のお姉さんを見かけたときに優しくするのもそういう理由なのー?」


イルビアの発言に空気が、いや、時が凍った。


父さんの顔からは、汗が滝の如く大量に

流れていた。


おい下に水溜まり出来てんぞ、汚いから

汗流すのやめろ。


と、普段ならこんな軽いことを心の中で

考えられたのだが、今はそれどころではない。


まるで雪山で吹雪に遭ったかのように、

周囲の気温が一気に下がっている気がした。


恐怖で動けなかった。


なんせすぐ近くには雪女(お母さん)が居るのだ。


多分俺とイルビアには何もされないだろうが、

この空気の中ずっとここにいるのは辛い。


俺は直ぐ様ここを離脱する方法を考えた。


そして


「っ!!」


策を思い付いた刹那、俺は駆け出した。


そして、稲を乾燥させるときに使う

稲をかける用の木を手に取ると、その木を

父さんの真後ろに突き刺した。


そして、父さんの両腕をワラで木に固定した。


「...え?」


その後、イルビアの元に向かい、彼女を

脇に抱えると


「あとは大人同士でごゆっくり!!」


俺達はその場をすぐに待避した。


「あ...あ...、ち...違うんだ...これは、

イルビアの見間違――」


「――言い訳は聞かないわよ?」


【悲報】父さん、終了のお知らせ。


「ちょ、待...。 くそぅ、アル...恨むぞああああああああああああああああああ!?!!!」


後ろから父さんの悲鳴が聞こえてきた。


「あらあら、息子のせいにするなんて

駄目な父親ね。 お仕置きが必要かしら」


すでに処刑オシオキは執行されている

ようにしか思えないのだが、母さんに

とってこれはまだ処刑オシオキの域には

達していないようだ。


俺は恐ろしくて後ろを振り向けず、

ただただ家に向かって走ることしか出来なかった。


でも、こんな生活でも俺は楽しかった。


母さんに溺愛され、父さんは母さんにボコられ、

イルビアとは仲良く暮らして、きっと

これからも家族皆でずっとこんな時間が

過ごせるんだと思っていた。


すでに終わりが近いなんてこと...当時の俺には

知るよしもなかった。

シリアス「いつもの如く唐突に

やってきましたこんにちはー!!」


アル「帰れ」





前半の乾燥方法に付いては山梨県の

ウシという物干し具を参考にしました。



さて、この先どうなるんでしょうか?(すっとぼけ)

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