寸前の救出劇
少し修正しました。
「なんじゃ...あの魔物の数は...!?」
ヘレスト草原を通っていた王族と護衛は
目の前の光景に目を疑った。
目前に広がるのは凶悪な魔物の群れ。
そして
「!? 何で魔族が...!」
思わずファルの口から言葉が出た。
魔族の群れの先頭には和平を結んだはずの
魔族がおり、その表情はニタニタと醜い笑みを
浮かべていた。
「驚いていただけたかぁ? 王族ご一行様?」
「何故じゃ...! 何故このようなことを!」
「何故って言われてもなぁ...。
俺達はずぅっと待ってたんだぜぇ...?
魔王様の仇を取る、このときをよぉ...」
「魔王の仇...じゃと...?」
「ああ、と言っても、元々はこんな盛大に
やるつもりじゃあなかったんだがなぁ。
お前ら二人は他のやつらと違って耐性でも
あるのか呪いが思うように効かなくてよぉ」
「お前...まさか...」
その魔族は元々の醜い笑みをさらに
醜くして
「13年前の王妃の死、そして、
5年前の王子の死。その両方が俺達によって行われた
呪いの″お陰″だ。
それによって姫であるお前は権力争いにならずにすんだだろぉ?
むしろ俺に盛大に感謝して欲しいねぇ!
クッハハハハハハハハ!!」
ファルを指差しゲラゲラと愉快そうに笑う魔族を、
その場の全員が敵意や殺意の含めた視線を向けた。
「ま、その姫様も呪いが効かねぇなら
この手で直接殺してやろうと思って
誘拐も企てたが...」
「あのときの誘拐は貴様の仕業か!
...この外道め!! 我等の前から消え失せろ!
ライティングゾーン!」
話の途中で護衛の一人が我慢出来ずに声を荒らげ、
光の一閃を繰り出す魔法を放った。
魔族はその魔法を冷たい目で一瞥すると、
当たる直前に手でその魔法を下に叩き、
方向をねじ曲げた。
「なっ...!?」
魔族は魔法を放った護衛を見て
「おいおい、少数精鋭で選ばれておいて
この程度なのかよ? 今のなら例え当たってても
無傷だったぜぇ?
まったく、スパイとして潜り込ませたアイツを
倒す奴が居たっていうからその少数精鋭の
中に入ってるかと思って楽しみにしてたん
だがなぁ...。
お前らの表情を見ると違うみてぇだなぁ...
お前ら期待外れにも程があるぜぇ? プククッ」
魔族は馬鹿にしたように言いながら、
笑いを堪えるように手で口を押さえた。
「おい...それ...まさか...」
その護衛の視線は魔族の手の甲に釘付けに
なっていた。
「おいおい、ようやく気がついたのかよ。
おせぇんだよ。 まあいい」
魔族は自身の手の甲に刻まれた紋章を
見せ
「自己紹介が遅れたなぁ。
俺は旧魔王軍戦闘部隊・第一軍所属。
隊長、ロミオ・ヴォンテッド。
お前らを殺すために来た、よろしく頼むぜぇ!
ギャハハハハハハハハハハ!!」
「第一軍...さらにその隊長じゃと!?」
王の知る限り、旧魔王軍戦闘部隊には
第1軍から第10軍まであり、
数字が1に近いほど優秀だと言われている。
つまり第一軍隊長である
目の前の男...ロミオは、魔王の最強の部下だった
と言ってもよいことになる。
「驚いてる暇があるのかぁ? 王様?」
ロミオは腕を上に伸ばし、手のひら上にむけた。
その手のひらの上に、凄まじい速度で黒く禍々しい力が
集まっていった。
「こりゃいかん! ″我が身を守れ″!!」
王は自身の力を最大限に使い、魔法障壁を
展開した。
「闇は全てを破壊して蹂躙し、世を黒き世界へと塗り替える。
黒滅破壊!」
全てを破壊する為の無慈悲な闇の力が、
王に放たれた。
すぐに魔法障壁と闇の力は
衝突し、拮抗状態になった。
「ぐぅ...おおおおおおおおおおおおお!!」
「お父さん!!」
「っ!? ファル!」
「私も手伝う!!」
ファルは王の隣に立ち、魔法障壁に
己の力を加えた。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ファルの助力により、魔法障壁は
強化され、みるみるうちに闇の力が押され始めた。
「へえ...やるなぁ?
だけどなぁ...」
王が異変に気づき、後ろを振り向いたが
遅かった。
後ろにいた護衛は全て地に伏しており、
そして、王の後ろに居る何者かが、剣で王を
突き刺していた。
「か...は...っ、貴様...いつ...から...そ...こ...に...」
その光景を見たロミオは、この日一番愉快そうに
顔を歪めた。
「――ここに居るのが俺1人だけなんて、
一言も言ってないぜぇ?
ギャハハハハハハハハハハ!!」
「お父...さん? お父さん!!」
ファルは王の元へ駆けよった。
だが
「おいおい? 魔法障壁が切れちゃってんぞぉ? お姫様?」
「!?」
気づいたときには、もう遅かった。
護衛を倒し、王を刺したと思われる魔族は
すでにロミオの隣へと避難していた。
「この程度なら群れなんて連れてくる必要
無かった」
「そうかもなぁ...はぁ、つまんねーの」
そして、それを確認した頃にはファルの目の前は
闇に染まっていた。
そして
「魔法障壁ァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
寸前で駆け込んできた黒いローブを身に付けた男が、
ファルの目の前に立ち、魔法障壁を
展開させていた。
その魔法障壁は、王とファルが
二人で展開したものよりも、数倍も丈夫で、
いとも簡単に闇の力を防ぎきった。
「あぁ? なんだなんだぁ?
テメェ...何者だよ...?」
その質問に男は
「うわ凄い怪我だな...何とか治せないかな...」
そう言うと、男はステータスカードを確認し
「――覚えてるし...。 ヒール」
ロミオを無視して王や護衛の治療を始めた。
「...おい、聞いてんのかガキ」
「え? ああ......、すまん」
男は一度考える素振りを見せ
「で、何だっけ?」
――――――――――
「遅かったか...」
しかし、まさか本当に当たっているとは思わなかった。
これはかなり緊急事態だ。
「ちょっと行ってくるわ」
「待てよアル! 行くってどこにだよ!?」
「王族のとこに決まってんだろ?」
「はぁ!? 無理だろ!? 何言ってんだ!」
「悪いけど説明してる時間がない。
これ見てくれ」
そう言ってステータスカードに魔力を流し、テスタに
手渡した。
テスタは俺のステータスが見ると
「...おいおい、人間やめてるってレベル
じゃねぇぞこれ...」
と言っていたが、テスタの口元は笑っていた。
「こんだけのステータスがあんなら、
間に合うかもな。しっかし、攻撃力10万とか
馬鹿じゃねぇの?」
ニヤニヤしながらテスタが言うが、今聞き捨て
ならないことを言ったような...
確か攻撃力10万だとか言ってたか?
そんなになかったはずだが
「ちょっと見せてくれ」
半ば引ったくる形でステータスカードを見てみると
アル・ウェイン
Lv36
HP65535/65535
MP9999/9999
攻撃103264
防御69213
魔力53980
魔防78174
俊敏93122
幸運85(固定)
スキル
【寵愛】
自然を愛する者
【武術】
体術6
【その他】
投擲10
地形把握10
【恩恵】
成長促進
HPとMPはこれ以上上がらないみたいだが、
他のステータスはレベルが上がったことで
馬鹿みたいに上昇してる。
ってかいつの間に体術なんて...
今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
敏捷90000越えてるし、多分走っても
間に合う...のか?
でも少し不安だな。
早く移動できるようなスキルでもないかな。
そう思っていると、ステータスカードの項目に
〈高速移動6〉というものが増えた。
どうやらまた習得したようだ。
なるほど、ということは体術は恐らく...あの誘拐犯を
背負い投げしたときに覚えたのだろうか?
「おい!? なんかスキル増えたぞ!?」
テスタは後ろからカードを覗いていたので、
突然増えたスキルに驚いていた。
「しかも初期レベル6!?
どういうことだよ!?」
「俺にもわからん...けど。
まあこれはつまり助けに行けってことだよな」
「多分そういうことだろうな!
うっし! アル! 行ってこい!」
「おう! 行ってくる!」
「待つのじゃ」
「「え?」」
村長が俺に静止を求めた。
流石に子供に行かせるのには反対の念が
あるんだろう。
「先程から話を聞いておったが...。
アル、お主は農民として暮らしたいのじゃろう?
ならばこれを身に付けて行くがよい」
そう言って村長がアルに渡したのは、
古ぼけてはいるが、小綺麗な黒いローブだった。
「これは...?」
「これには隠蔽の魔法が補助されておるのじゃ。
恐らく王族を助ければ顔を覚えられ、確実に
騎士団にスカウトされるじゃろう。
だから、それを身に付ければお主の正体が
バレることが無くなって、農民として
暮らして行けるという寸法じゃ」
え? 戦いに行くのを止めるんじゃなかったのか?
「てっきり戦いに行くのを止めようとしたの
かと思ったぜ」
俺の心の声をテスタが代弁してくれた。
すると、村長は笑いだした。
「ホッホッホ! お前らを心配することは
あっても止めることなどありはせんよ!
昔からお前らの奇想天外な行動には驚かせられたが
その行動でワシらが助けられてきたことが
幾度もある。 今回も、きっとどうにか
してくれると信じとるんじゃよ」
期待が重い!
「おい村長!? 俺達そんなに凄いこと
してねぇだろ!? アルもそう思うよな!?」
とは言え、やることは決まった。
「アル?」
俺はローブを身に付け、しっかりと正体を隠した。
「ちょっくら行ってくるわ」
「...おう! さっさと帰ってこいよな!」
「村のやつらはワシが誤魔化しておこう。
じゃが、誤魔化せる時間にも限度がある。
テスタの言うとおり、早く帰ってくるんじゃぞ?」
「わかったよ、村長」
俺は村長の家を出ると、全力で王都に
走り始めた。
「...んで? 村長。
なんであんなローブ持ってたんだ?」
「ほう...良いところに目をつけたのう。
それはじゃな...」
ここで村長がテスタに話したことをアルが
知るのは、もう少し先のことであった。
ちなみに、村長の話を聞いたテスタは笑っていた。
―――――――――――――
「【高速移動】!!」
ただでさえ敏捷90000越えの凄まじい
速度に、スキルの効果がプラスされ、
まさに韋駄天の如くのスピードで
王都への経路を駆け抜けた。
途中魔物の群れが目の前に現れたが
進路に居る魔物は殴り飛ばして無理矢理
道を作った。
「おい!? 何か来るぞ!?」
騎士が驚いているが、説明している暇はない。
魔物を張り倒しつつ、どんどんと進んでいく。
魔物の群れを抜け、王都の町並みを抜け、
そしてついに王都の東門を抜けた。
少し走ると目の前に禍々しいエネルギーが
今にもファルに当たりそうになっている
ところが見えた。
「魔法障壁ァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
魔法障壁は魔力を持つ者なら誰でも使える魔法で、
魔力が高ければ高いほど耐久力があるものになる。
魔力が5万を越えている俺の|魔法障壁【バリア】は
いとも容易くロミオの技を防ぎきった。
そのあと、俺はすぐに怪我人の確認をした。
誰かが何か言ったような気がしたが、
今はそれどころではない。
「うわ凄い怪我だな...何とか治せないかな...」
そう言いながら俺はカードを確認する。
まさか都合よく回復スキルを覚えたりなんて――
「――覚えてるし...。 ヒール」
王や護衛の怪我は回復魔法ですぐに治療され、
事なきを得た。
「...おい、聞いてんのかガキ」
「え? ああ......、すまん」
コイツなんか言ってたか?
「で、何だっけ?」