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喜びは時に悲劇を呼ぶ

我が家にイルビアを迎えて数年が経ち、

俺は7歳になった。


すっかり家族にも村にも馴染んだ

イルビアはとても元気に過ごしていた。


イルビアは、何故だか知らないが、

見よう見真似が上手く、見ただけで

出来てしまうことが多かった。


そのため、それを利用して親や村の人の手伝いを

たくさんしていて、さらに外見も可愛かった

ので、評判はとてもよかった。


どれくらい評判が良かったかと言うと


『え? ウェイン家ってイルビアちゃん

以外に子供居たの?』


と、俺が忘れられることがあるレベルだ。

まあ、そんなこと言った人にはもれなく

母さんの雷が落ちたわけだが。


さて、そんなイルビアにも真似が出来ない

ことがある。


それは――


「お兄ちゃん、それどうやってるの?

普通のやり方と違うよ?」


「え? いや、なんかこう、普通に」


「イルビア、諦めるんだ。

父さんもな、何回もやり方が違うと

教えているんだが直らないんだ。

それに、何故か正攻法よりも早く丁寧に

終わらせるから文句が言えないんだよ」


何故かイルビアは俺の行動を真似出来なかった。

現に今は田植えをしているのだが、イルビアは

父さんの真似は出来ても、俺の真似は出来て

いなかった。


イルビアは『うぅ...』と悔しそうに

唸ると、キッとこちらを向き


「なんか悔しい!!

お兄ちゃん、普通になってよ!!」


「そんなこと言われても...」


それ逆に普通じゃないと言われてるようで

悲しくなるな。


「はっはっは! もしかしたらアルはいつか

大物になるかもなぁ。 偉人は他の人とは

逸脱した行動を取るって言うし」


父よ、つまり俺は普通じゃないんですね。


俺は責めるような冷たい目線を父さんに

向けたが、父さんはそれを見て笑みを

浮かべながら立ち上がった。


「さて、そろそろ戻ろうか」


「え? でも...」


イルビアはそう言いながらとある場所に

顔を向ける。


顔を向けた先には、ウェイン家が使用できる

田があったが、その田には何も植えられていなかった。


いつもならあそこにも植えているので、

俺も不思議に思った。


「ああ...それのことなんだが...なぁ、アル」


「何? 父さん」


「そろそろお前にも田の一部を任せようと

思ってるんだ。 今日からあそこは

お前の田だ。 明日はあそこに一人で

植えてみるといい」


俺の...田?


「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「おい!? そんなに喜ぶ要素あったか!?

それに田を任せるとはいえ、最初の

2~3年は修行の意味も込めてお前の米は

出荷や納品には回さないからな!?

ウチで消費する分だぞ?」


「それでもいい! よっしゃあぁぁぁぁぁ!!」


喜びまくってハイになった俺は思わず

はしゃぎ回った。


「...お兄ちゃん、どうしてあんなに

喜んでるの?」


「...さぁ? 農業が好きなんじゃないか?」


俺は二人の冷めたような視線に気付かずに

走り回って喜び続けた。


その結果


「あっ!?」


石に躓いて俺は転んでしまった。


反射的に腕を前に出して手で地面に

触れることで顔面が地面とこんにちは

することは防げたが


つうっ...!!」


左手に猛烈な激痛が走った。

























「若木骨折だね。骨がまだ柔らかい子供に

よく起きるものだ。 患部は固定しておく

からしばらく安静にしていなさい」


父さんに村の診療所に連れてこられた

俺は、そう宣告された。


これはつまり...


「アル、田植えは、その...な?

また今度...な? 今回は父さん達がやって

おく――」


「待って! 出来るから! 片手でも

出来るから! だからお願い! おれにやらせて!」


「片手で出来るのか!? 

って、そうじゃなくて、駄目だ。

それは認められない」


「そうだよお兄ちゃん、ちゃんと

安静にして早く治さなきゃ」


父さんとイルビアの二人にそう説得され、

俺はシュンとしながらも俯いた。


「...まあ、あれだ。 お前に分けたところの

田には何も植えないでおくから、治ったら

植えてみなさい。 1~2ヶ月遅れで植えても

収穫がその分遅くなるだけで大丈夫だ、多分」


「本当!?」


それならいいや。


「お兄ちゃん...」


一人、イルビアは呆れたようにそう

呟くのだった。

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