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今だけは

「...逃げられたか」


まあ、幻覚で作り上げられた偽物だったみたい

だったから例えイルビアが逃げなくても

結果はさほど変わらないのだろうが...。


「...あれって幻覚...だったんだよな?

にしては...」


ユリアとルリは二人ともイルビアの幻覚に

よって肉体的なダメージを負っている。


いや、幻覚がそう思わせているのだけなのだろうか。

ひとまず、ルリはヘレンさんに任せて、俺は

ユリアのところに向かった。


ユリアの近くには、先程ヘレンさんたちの

近くに居た魔族がすでに控えていた。


「ユリア、大丈夫か?」


「...お兄ちゃん? うん、平気...」


ユリアは投げ出されたときは首元を持たれた

ことにより、息が苦しかったので、ケホケホと

何度か咳き込んでいたらしいが、今は大丈夫に

なったみたいだ。


しかし、ユリアの表情は優れなかった。


仲間を大量に利用され、殺され、そして、

実の父親までもが犠牲になった。


それによって負った心の傷はとても

深いのだろう。


幼い彼女がその現実を受け止めるのは

酷というものだ。


ユリアは潤んだ瞳と顔ををこちらに向け


「お兄ちゃん...私、泣かないって決めた。

決めたけど...」


突然ユリアがギュッと俺に抱きついてきて、

顔をうずめた。


それを見た魔族の顔が何故か少し歪んだように

見えた。


「...今だけ...泣いてもいい...かな?」


俺はユリアの頭にポンと頭を乗せて言った。


「今はむしろ泣いとけ。 そっちの方が

後々楽になるぞ」


「う″ん...。 うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」


すでに泣く寸前だったのだろう。

俺がそう言うと、すぐにユリアは泣き出した。


ここまで頑張ったんだ。


今だけは思う存分泣かせて溜まったもん全部

出させてあげないとな。


と思っていたが、魔族の男がこちらを見て

プルプルと震え始めた。


心なしかその顔は怒りに染まっているようにも

見える。


「...何故だ」


「え?」


「何故私に抱きついて下さらないのですか!?」


何を言ってるんだコイツは。


「小さな頃から近くで見ていた私の方がより深く

貴女のことを知っています!


優しくて健気で幼くその可愛い姿で

興奮しゲフンゲフン癒されて来ました!


ですから今度は私が貴女を慰めて

癒して差し上げる番なのです!


どうかその身を私に堪能ゲフンゲフン

私に預けて恩返しをさせてください!」


なんだこのロリコン...。


ユリアは泣き顔のまま魔族の方を振り返ると


「お父、さんが...、貴方は、ロリコンだから...

近付くなって、言ってたの...」


「ガッテム!!」


魔族は顔を手で覆うと、そのまま

イナバウアーの如く体を後ろにそらした。


魔族って...なんか色々とヤバいんだな...。


などと考えていると、魔族は俺を見て

睨み付けていた。


「貴様...よもやユリア様をたぶらかせて

その幼いボディと堪能するとは...!

万死に値するぞ!!」


お前のその勘違いが万死に値すると思うが。


「お兄ちゃん...この人怖い...」


「おい、お前ユリアに怖がられてるぞ」


「何故私が怖がられるのだ!!


はっ! もしや貴様洗脳までしてユリア様を

手に入れようとしているのか!!


この卑怯者が!!」


駄目だ。 どうすればいいんだよコイツ。


「アル君...そっちの趣味だったんだ...」

「そりゃ僕たちが何しても駄目なわけだね...」


ヘレンさんとルリは魔族の言葉を信じたのか

冷たい視線をこちらに向けてきた。


「...理不尽すぎやしないか?」


誤解を解くのに時間がかかったことなど

言うまでもなかった。

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