増援
「流石お兄ちゃんだね...。
こんなことになるなんて予想してなかったよ」
イルビアはユリアをぽいっと軽く投げた。
「わっ...!? ...痛いっ!!」
投げられたユリアは地面に投げつけられると、
ぶつけた部分を手でさすっていた。
一方イルビアはユリアを離して自由になった
腕で、もう片方の腕を拘束しているツタを触った。
「ふーん...これって結構丈夫そうだね...」
イルビアは自由に動かせる腕に闇を纏わせると
ツタに向けて手刀を叩きつけた。
ギィンッ! という金属同士を叩きつけた
ような音が響き、ツタには浅い切り傷のような
ものがついた。
イルビアはそのツタの状態を見るや、手を
降ろした。
「伸縮性もあって、こんなに丈夫なんだ...。
厄介だなぁ...」
どうやらこのツタはイルビアには壊せない
ようだ。
つまり、イルビアはあの拘束からは抜け出せない
ということだ。
「イルビア、その状態じゃお前はもう動けないだろ。
降参してくれ」
俺は諭すように言うが、イルビアは俺の方を
見て笑うと
「確かにこのツタは壊せないけど...。
こうすれば...っ!」
イルビアは拘束されている腕に闇の力を込め、
その力を一気に放出した。
すると、腕を拘束していたツタは、内側からの
圧力に耐えきれず、腕からツタがほどけた。
「...ね? 簡単にほどけちゃうんだよ。
お兄ちゃんも甘いよね、あのときすぐに
ツタで私の腕を絞め潰しちゃえば良かったのに」
「...やっぱそんな簡単にはいかないか...。
仕方ない...」
俺が構えを取ると、イルビアも剣を出現
させ、それを掴みとる。
「お兄ちゃん、私を止められるものなら...
やってみなよ!!」
イルビアは地を蹴り、目で捉えるのがやっとの
速度でこちらに飛びかかってきた。
「守れ!!」
俺は目の前にツタを大量に出すことによって
壁を作り、防御の体制を作った。
だが、ツタに剣撃がくわえられることはなかった。
「それは愚策だよお兄ちゃん!!」
気付いたときには、イルビアはツタの壁を
乗り越え、そのまま剣を振り下ろしてきていた。
壁を作ったからお互いに姿が見えなくなった
ことを利用したのか...!!
「回避!」
真後ろの床からツタを生やして俺の体を縛らせ、
そのまま俺を後ろに投げ飛ばさせた。
その直後、先程まで俺が居た位置に降りて
きたイルビアの繰り出した剣撃が空振りした。
イルビアは俺を見て口を尖らせた。
「ちぇっ...、そーゆー使い方もあるんだね...」
「ああ、そして...」
突如、イルビアの周囲に、囲むように
ツタが床から生えた。
「こういう使い方もある!! 捕縛しろ!!」
イルビアに向けて、ツタが四方八方から
襲いかかった。
「無駄だよ!」
イルビアは一点に向けて駆け始めると、
前方から襲いかかるツタを絶妙な角度で弾き、
ツタをそらす。
そして、それによって生じた隙間から
ツタの囲い陣を抜け出すと、俺の居た場所を
見た。
が、既にそこには俺の姿は無い。
「......そこ!!」
イルビアは死角から忍び寄っていた俺の
場所を特定し、斬撃を繰り出してきた。
「あっぶね!!」
俺は即座に体勢を低くしてそれを回避した。
そして、そのままカウンターに持ち込むべく、
俺は握った拳を前に突き出した。
しかし、イルビアは後ろに跳んでそれを避けた。
「それを待ってた!!」
俺はイルビアの着地点を予測すると、
その場所からツタを出した。
あれなら回避は不可。
避けられるわけがない。
イルビアは俺の狙いに気がついたようで、
一度右腕を横に広げると、その腕を
自分の方に曲げた。
その瞬間、床が抉れ、イルビアは横にぶっ飛び、
空中で体勢を整えると着地した。
「いたた...お兄ちゃんみたいに自分の技を
利用して避けてみたけど全然実戦向けには
ならないなぁ...、やっぱり完全には再現できないや」
そう言いながらも楽しそうに笑うイルビア。
「はは、すげぇな...避けられるとは思わなかった」
思わず渇いた笑いが出る。
イルビアがここまで強くなるとは
誰が予想できただろうか。
折角生きてたっていうのに...こんな再会は
残酷すぎる。
「あはっ! お兄ちゃんから褒められるなんて
思わなかったよ!
じゃあ、もっと頑張れば...」
イルビアは剣に闇を纏わせた。
いや、剣だけではない。
身体中に闇を纏わせていた。
そして、イルビアは剣を持っている腕を上にあげ、
「もっともっともっともっと!!
もっと褒めてくれるよね!?」
イルビアは狂気染みた笑みで剣を振り下ろした。
が、イルビアの剣は途中で止まることとなった。
何故なら、イルビアの胸の辺りを後ろから
剣が貫いたからだ。
「へぇ...」
イルビアは特に驚く様子もなく、自身を
貫いた剣を撫でると、そのままゆっくりと
顔を後ろに向けた。
「なるほどね、仲間を連れて戻ってきたんだ?」
イルビアの後ろには、冒険家ギルドを
襲った魔族と、ヘレンさん。
そして、今現在、剣でイルビアを貫いている
ルリが居た。
「不意打ちなんて、ほんとは卑怯だから
したくはなかったんだけど...
...ごめんね」
「いいの。 戦いってそういうものだもん。
それに...」
イルビアはルリを見てニッコリと笑うと
「所詮、私は本体に作り上げられた
偽物だから、いくら斬られても
痛くも痒くもないからね!」
そう言ってイルビアが腕を振ると、ルリの
足元の床が抉れ、ルリは後方に吹き飛ばされた。
「うぐっ!?」
「ルリ!!」
後方に居たヘレンさんが、なんとかルリを受け止めた。
イルビアはそれを見向きもせずに、再び
俺の方を向いた。
「なんか一気につまんなくなっちゃったね。
また今度、そのときは本体の
私と二人っきりで楽しもうよ。
バイバイ、お兄ちゃん」
「待て! イルビア!」
俺の制止の声など聞かずに、イルビアは
手を振りながらその姿を消した。
カラン...と、胸に刺さっていた剣が床に落ちる
音だけが響いた。




