敵陣地突入
相変わらずに、俺は走り続けていた。
魔王城はもう目の前だ。
だが、後ろから来ている魔族は最早群れのように
なっており、追い付かれてしまったら、
俺一人ならまだしもユリアを守ることは
難しいと思えた。
先に何が居るかわからない。
もしもそこで手間取ってしまえば、
当然この魔族達が追い付いてくるということに
なる。
今のうちに出来るだけ距離を伸ばして、
黒幕とやり合う時間を出来るだけ稼ぐ
必要がある。
「ユリア、もう少し速度上げても大丈夫か?」
「うん! 多分...大丈夫!」
ユリアがそう言うので、俺はさらに足の
スピードを上げた。
だが、問題なのは追ってくるばかりの
魔族達だけではない。
前方から来る新手の魔族達だ。
目測でも15人以上は居るだろう。
「ちいっ!」
俺は拳を握りしめて前方の魔族達に
突っ込み、ぶつかり合う直前で
「おらぁ!」
勢いのまま思いきり地面をその拳で叩いた。
このステータスから繰り出された拳による
一撃から生み出された衝撃破は凄まじいもので、
前方にいる魔族どころか、もしかしたら後方に
居た魔族にすらその衝撃破が届くくらいの
ものだった。
「うわぁぁぁ!?」
ユリアは衝撃破の中心部に居たものの、
その威力に驚いていた。
「うし、問題無くぶっ飛んでくれたな。
もうすぐだ! 一気に進むぞ!」
「う...うん。 あはは...。
な...なんかお兄ちゃんって色々と反則だなぁ...」
呆れたように呟くユリアだったが、俺は
気にせずに先に進み、
「よいしょぉ!!」
飛び蹴りの要領で魔王城の扉を吹き飛ばした。
「...えぇ...」
ユリアがもはや呆れを通り越した何かに
達したように見えた。
というか何故先程までは驚いていなかったのに
今になって驚き始めたのだろうか。
多分さっきまでは精神的に辛い部分の方が
多かったんだろう。
でも今はその部分が取っ払われたから
驚くと思う余裕が出来たとか?
もう一度ユリアを見る。
その顔を見て、彼女が考えていることを
やめたことにすぐに気付くことが出来た。
「...お兄ちゃん、そこ右ね」
「...おう」
階段を駆け上り、廊下を走り、また階段を上る。
魔王城内には、魔族の死体はあれど、
襲ってくる魔族はいなかったので、
スムーズに進むことが出来た。
魔王城に入ってしまえば、ユリアが案内
出来るので、その案内に従って進んだ。
そして、一際大きな扉の前に辿り着いた。
「...ここが、いつもお父さんが奥で偉そうに
座ってる部屋だよ」
「言い方酷いな!?」
「...だって本当のことだもん。 それに、
お父さんは洗脳系とか幻覚の魔法が
上手だったから...、多分これはお父さんの
せいとしか考えられないよ」
ってことはこの奥に黒幕が居るってことか...
俺はユリアを降ろすと、彼女の前に握り拳を出し
「じゃ、一発ぶん殴って目を覚まさせてやろうぜ」
それを聞いたユリアは、俺の真似をするように
拳を握りしめた。
「うん! 待っててお父さん、覚悟しててよね!」
その言葉を聞き、俺は扉を開けた。
「それ、本当...なの?」
ヘレンは魔族の言葉に耳を疑っていた。
「ああ...」
「でも、そんな...!」
「俺だって信じたくはない...。
けど、この目でそれを確認してしまったんだ...」
「...見てしまったの?」
「見てしまったなんてもんじゃない。
目撃してしまったんだ。
魔王様が殺される瞬間を...!」




