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危険地帯へ

そういえば最近、色んなところに魔族が攻めてくる

ことが増えているらしいが、まさかウチが

狙われるとは思わなかった。


しかし、完璧にやることがなくなったな...。

一度家に戻って母さんからの手紙でも読むか...。



「...ん?」


目の前に、オロオロしながらもキョロキョロと

周囲を見ているプラチナブロンドの髪の、

小さな女の子が居た。



その体には少し大きめな黒いローブを

羽織っていた。


迷子か? 困ってそうだしとりあえず話しかけ...


そのとき、俺の脳内にロリコンという言葉が

よぎった。


「...ごめんなちびっ子、一人で乗り越えるんだ」


周囲からどんな視線を向けられるかわからない。

誤解で幼女趣向ロリコンだと思われたくないのだ。


俺はその場を去ろうとしたのだが、

俺が一度話しかけようと思ったけど

結局見捨てようとしたことに気がついたのか、

女の子は泣きそうな目で、じぃっとこちらを

見つめてきた。


...ああもうわかったよ!


「何かあったのか?」


俺がそう問いかけると、女の子は

嬉しそうに笑顔になった。


そして――


「あのね、ここがどこなのか教えて欲しいの」


「...ここは商店街だぞ?」


「そうじゃなくてね、この国の名前って意味!」


...待て。


「えっと...その前にちょっといいかな?

君は一人なのか?」


「うん」


アカンこれ駄目なやつだ。

何か知らんけど子供一人で国境越えてきたっぽいぞ。


「ここはメイギスっていう国だが...

君はどっから来たんだ...?」


「え? えっと...それは...えっと...」


そんなに言いづらい事なのだろうか。


「この人なら大丈夫かな...? ...うん!


あのね、今から私が何を言っても驚かない

って約束してくれる?」


「わかった」


驚くようなことがあるのか?

女の子は胸の前に出した両手を勇気を出すように

グッと握ると


「私、魔ぞ――」


俺は瞬時にホールドして口を塞ぎ、

女の子を路地裏に連れ込んだ。


「む、むぐ!?」


何をするんだと言わんばかりの視線と抵抗を

見せる女の子の耳元で俺は小さな声で話す。


「お前の正体はわかったけど、今は魔族の

評判がかなり悪いんだ。 さっきお前が

あのままの声の大きさで自分が魔族だって

名乗ってたらどうなってたと思う?」


俺がそう言うと、俺が口を塞いだ意図が

わかったのか大人しくなったので、

俺は女の子を離した。


「全然考えてなかった...ごめんなさい...」


シュンとなって謝っている女の子を

見ると、なんだか俺が悪いことをしたような

気分になってきてしまった。


「いや、こっちも突然こんなことして

ごめんな、怖かったろ? でも、俺は

別に魔族とか気にしないタイプだからさ。

遠慮せずに話してくれて構わないぞ」


そもそもリークスとそれなりに仲良くなっている

時点で、俺が魔族に偏見は持っていないという

ことは既にわかるだろう。


魔族にだって色んな人が居るのだから。


襲ってくるのなら返り討ちにするが、

何もしないのならこちらも手を出さない。


友好的に接してくれるのであれば

こちらも友好的に接する。


ただそれだけだ。


「...良い人...」


「...え?」


女の子は俺の手を掴むと


「お兄ちゃんになら話せる!

お願い! 私達を助けて!」


ふむ...何か知らんが信用してくれたようだ。


だが......、お兄ちゃん(・・・・・)



「あの...俺にはアル・ウェインという

名前があってだな」


「お兄ちゃん」


「アル・ウェインという――」


「お兄ちゃん」


「リピートアフターミー アル」


「お兄ちゃん」


駄目だこりゃ。


どうやら呼び方は変えてくれないようだ。


「俺が出来ることなら手を貸すけど...。

まずはお前の名前も教えてくれよ、呼ぶとき

不便だし」


俺がそう言うと、女の子は口に手を当て

ハッとしたような顔をすると


「あっ! そういえば名前言ってなかったね


私の名前はユリア・マクベス・フォンゲート。


ユリアって呼んでね!」


「ユリアね...了解」


ユリアは一度満足したように頷くと、

真剣な表情になり


「それで、本題に入るんだけど...


私達、魔族を助けて欲しいの」


「...魔族を?」


「うん...。 私も何があったのかは

わからないけど...。 でも、危ないことが

起こってるのは間違いないの」


「その根拠は?」


「...部屋で遊んでたら突然部屋に焦って

入ってきた人にね、『ここは危ない! せめて

貴方だけでも――!』 って言われたあと

無理矢理ここに飛ばされちゃったの。


今考えてみれば最近の皆はどこか

おかしかったの。 人間の悪口は言っても

襲ったりなんか絶対しないもん。

皆...あんなに優しかったんだもん...だから...」


...何か大変なことになってるみたいだな。


俺はユリアの頭にポンと手を置いた。


「...よし、じゃあ確かめに行こうぜ」


「え? でも、...危ないよ?」


「そんなことわかってるよ。 でも、

ほっといたらヤバいことになるかも

しれないんだろ? だったら行こうぜ。

何か出来るかもしれない」


ユリアは遠慮しがちに顔を上げ


「...いいの?」


「逆にここまで聞いて何もしないって方が

無理があるってもんだよ。 ほら、行こうぜ」


俺の言葉に、ユリアは満面の笑みを見せた


「...うん!!」


さて、目指すは魔族領。 


恐らくこの時代の人間が足を踏み入れたことが

無いような場所へと俺達は向かい始めた。


...そういえば、何か忘れてるような――


















ここはどこかの家の居間。


居間には、白い手紙と赤い手紙の二通の手紙が

置いてあった。


そのうち、白い手紙だけが、カサッと動いた気がした。

※最後はホラーではありません。

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