災厄の再来
俺は辺りが暗くなってきた頃にシルス村に
到着した。
いやー、危なかった。 下手したらあのまま
王宮に連れてかれてたわ。
それにしても、ワイルドボアの退治依頼か、
ここら辺には退治を頼むほど多くは
生息していないはずだが...。
それに、フォレストドラゴン...だったか?
あれだってあんなとこでは滅多に出てこないはず
だし...何かあったのか?
「うん、考えすぎても仕方ないな」
とりあえず家の前に着いたので、俺は馬小屋に馬を
置いてきた。
「これもそのうち直さないとなぁ...」
俺はドアノブの取れた玄関を見ながらそう呟き、
無理矢理扉を開けようとした。
そして、バキンッと音を立てて扉が外れた。
「えぇ...」
力の加減が難しすぎやしませんかね?
俺は外れた扉に目を向けた。
「流石にここまでやらかしたら直すしかないか...」
―――――――――――――
数時間前
シルス村近くの森でフォレストドラゴンが
見られた件は、ファルにより、王の耳に
届いていた。
「ふむ...あの森でフォレストドラゴン...か。
珍しいこともあるものじゃの...」
だが普通に考えてみればこれは異常事態だ。
普通はフォレストドラゴンがあそこに
現れるなどありえない。
だが極稀に現れることもあるので、一概に
何かの前兆とは言えないのだが。
「ふむぅ...しかし、どうにも悪い予感が
するのう...」
王がぶつぶつと呟きながら思考にふけっていると、
慌てた騎士がノックもせずに部屋に入ってきた。
「国王様! 大変でございます!」
「ハイネルか、そのように慌てて、何事じゃ?」
「西側...シルス村の方向から魔物の群れが
襲撃してきました!」
「なんじゃと!?」
「あの数は異常です! 全力を尽くしても
撃退出来るか不明です。 念のため国王様一家は
国の東側からお逃げください!」
「王が国民を置いて逃げるわけに行くか!」
「それでも!! 我々にはいくらでも代えが
ききますが、国王様方の代わりはどこにも
存在しません!国王様方は我々の最後の希望
なのです! ですから! お逃げください!」
「いくらでも代えがきくじゃと!?
ふざけるな! ワシはお主らにだって
代わりがおるとは思ってないわい!」
「ですが、生きていて国をやり直せるのは
国王様方だけなのです! それに...」
ハイネルが視線を後ろに向けると、大勢の騎士達が
部屋の中へ入ってきた。
一般の騎士もいれば隊長の騎士もいる。
「私たちだってただでやられる気はないぞ!」
「むしろ追い返してやろうぜ!」
「俺達は負けるなんて思ってないぞー!!」
士気を上げる騎士達を一瞥したハイネルは
国王へ視線を戻し
「...このとおり、総員、負けるつもりは
ありません。それに、騎士だけではなく
冒険者の方々にも手伝っていただきます。
あくまで国王様方には保険として逃げていただく
だけです。 ご心配なさらないでください。
必ずやこの国を守り通してみせましょう」
「...必ず、生きて戻るのじゃぞ」
その言葉にハイネルや他の騎士達は跪き
「「「「「仰せのままに!」」」」」
―――――――――――――――
ようやく玄関を直し終わり、俺は気持ちよく寝ていたのだが...。
「おい! アル! 起きろ!」
深夜、俺はテスタに突然起こされた。
「なんだよテスタ...不法侵入してんじゃねぇよ...」
「んなこと言ってる場合じゃねぇんだって!」
「どうした?」
「村の近くを魔物の群れが通ってんだ!
幸い今はウチの村は狙ってないみたいだが
いつ奴等がここを狙うかわからない。
早くここから離れるぞ! 必要な物だけ持ってくれ」
「魔物の...群れ?」
何でこんな真夜中に?
「ああ、なんか知らんがこの辺じゃ見ないような魔物も
多くいるらしい。 ほら、早く逃げるぞ」
不自然な魔物の増加、そして本来生息しない魔物の襲来、
そして魔物の群れと来たか...。
「んー...」
「どうした? アル」
「いや、こんな感じのことどっかで...」
あ...、もしかして...
「おいテスタ、魔物の群れは
どこに向かってんだ?」
「あいつらは東に動いてる、つまり...
間違いないな、狙いは王都だ」
...はぁ、間違いないな。
「まさに地獄の侵攻劇と
まんま同じ展開だわこれ...」
地獄の侵攻劇。
それは、数百年前、王都に襲来した魔物達の
群れにより、王都が崩壊寸前まで追い詰められた、
至上最悪と言われる魔物による災害である。
「...面倒なことになってきたな...」