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制裁の進行の始まり

「ぐ...、貴方達...この素晴らしき婚姻の儀

このような行いをして許されるとでも

思っているのですか?」


男は自分の上に乗っている扉を押し退けながら

そう言った。


こいつがアンディスブルグの王子、

ネディルス・フィン・アンディスブルグか...。


扉をようやく退かして立ち上がった彼を

見る限り、とても王子としての気品は見えないが。


「各国の方々が見守られる中でこのような

ことをしたのです。


ただでは済まないことだということを

理解していますか?」


何言ってんだコイツは?


「それはこっちの台詞なんだが...。

R、頼んだ」


「ホントにその呼び方で統一するの!?

すっごい嫌なんだけど!!」


「仕方ないだろ! 本名だとバレちゃうんだから!!」


「そうだけどさぁ...冗談で言ってたかと

思ったのに...、まあ、いいんだけどね」


そう言ってR(ルリ)は数歩前に出ると


「そこに、居るんでしょ?」


光を纏わせた拳を横殴りに振った。

それは周囲から見れば意味のわからない

行為だったが、その拳は何かを殴ったかの

ような音と共に静止した。


「ごっ...!?!!」


その場所には先程まで何も居なかったが、

突如一人の男が姿を現した。


隠密系のスキルで自らの体を隠していた

のであろうが、隠密系スキルは、闇と

かなり関わりが深い。


先程の隠密も、体に上手く闇を纏わせることで

成功するものだ。


だが、ルリは闇を喰らう光を使える。


一度でも触れてしまえば姿を見ることが可能に

なるのだ。


姿を現した男は、体制的にルリに殴りかかろう

としたのだろうが、ルリの拳は明確にその男の

顔面を直撃しており、堪らず男は吹き飛ばされた。


その男の額には立派な角が生えており

それはなによりの――


「おい、コイツは魔族じゃないか...!?」

「きゃあ!? 何でこんなところに!?」

「ずっとこの建物の中に居たというのか...?」


魔族という者である証拠だった。


和平を結んだとはいえ、未だ魔族を毛嫌う

人はとても多い。


なんでも、魔物の群れを操れるという理由で、

人間が魔物を襲うのは全て魔族のせいだと

思う人がいるのだとか。


貴族なんかは特にそうだという。


故に、魔族と仲良くしていると、国として

都合が悪いことがあるのだ。


ネディルスは一度は驚いたものの、直ぐ様

表情を切り替えると


「なるほど! その忍び込んでいる魔族を

早くどうにかしようとしてこの場に

入り込んだということですか!!


それならば先程の失態は見逃しましょう。

速やかにその魔族を拘束してこちらに

手渡してください。 そうすれば、あとは

こちらで処理しましょう」


「...何をおめでたいことを言ってるんだ?」


「はい?」


ネディルスがお前こそ何を言っているんだという

表情でこちらを見てくる。


「そこにいる魔族の恋人を閉じ込め」


俺は一歩進む


「そいつがどうなっても良いのかと魔族を

脅迫して」


さらにもう一歩


「メイギスの国の評判を下げること、

さらには自分の国の名を上げることにも利用して」


俺はネディルスの元に進み続ける。


「最終的に国の名の回復を言質にして

王女に婚姻を迫ったクソみたいな王子様を...」


ネディルスの前に辿り着き、俺はネディルスを

見下ろした。


「ぶん殴りに来たんだよ」


「な...何をでたらめなことを!?」


何故バレたと言わんばかりに動揺する

ネディルスは、もはや哀れに見えた。


「脅迫!?」

「どういうことですか!?」

「これは大変なことですぞ!?」


各国の人々が驚愕をあらわにする。


「そんなもの全て出鱈目です!

大方、我が国の評判が上がってきたからそれに

嫉妬したどこかのが我が国の評判を下げようと

した策略に違いありません!」


随分と酷い言い訳ではあるが...


「そうか...なら...



聖なる剣だかなんだか知らんけど...

それの力、見せてくれるよな?」


「は?」


次の瞬間、兵士と思われる人物が、結婚式の

最中だというのに、大慌てで入室してきた。


「たたたたたた大変です! ってうわぁ!?

こっちも大変!? そんなことよりネディルス様!」


「そんなに慌てになられてどうしたのですか?」


イラだちが混じったような声でネディルスは聞くが


「実は――!」
































アンディスブルグ近郊の草原。


そこを多くの魔物達が進行していた。


そして、その先頭には翼を生やして

空を飛ぶ3人魔族が居た。


「アデルの野郎...最近見ねぇと思ってたら!!」


そう言って憎々しげにアンディスブルグの

方向を睨み付けるのは、ツンツンした

白い髪の毛で、つり目であり、上半身がほぼ

裸の魔族の男だった。


露出された上半身から覗く筋肉が、

彼の強さを醸し出していた。


「ふふっ...私達の友人に酷いことしたん

だから...ネディルスの王子様は覚悟が

出来てるのよね?」


と言った彼女は、緑色のストレートヘアーの

スタイルのとても良い、際どい服を着た

女の魔族だった。


「教えてくれて感謝してるぜリークス。



いや、今は郵便屋だっけか」


そう言いながら魔族の男はクハハと笑った。


「んなもんどっちでもいいっスよ!

というかお礼を言いたいのは俺の方っスよ!

それと、あくまでこれは王を引っ張り出すための

餌っスからね!

絶対に他の人間に危害を加えたら駄目っスよ!」


「あー、わかってっけどよ...チッ...。

せめてそのネディルスって奴くらいは

一発ぶん殴ってやりてぇな...」


「ガゼル、何言ってんスか?」


リークスにガゼルと呼ばれた男は、

頭をガシガシと掻きながら


「あー! もう! わかってるっつうんだよ!

人間には手を出すなって言いたいんだろ?」


「いや、自分、言ったッスよね?

『絶対に他の人間(・・・・)に危害を加えたら駄目』

って...」


それを聞くと、ガゼルは一瞬何を言ってるのか

わからなそうな顔をしたが、すぐに意味を理解してニヤリと笑うと


「リークス、お前いい趣味してんじゃねぇか」


「こっちだって腹立ってるんス。

ガゼルが一発ぶちこんでくれれば少しは

収まるかもしれないってだけっスよ」


「はっ! それなら遠慮なく

やらせてもらわなきなゃいけねぇなぁ!」


「うふふ、お話の途中悪いんだけど、

そろそろ着くわよ?」


そう言われて前を見ると、アンディスブルグの

門が見えた。


「さあ二人とも行くッスよ! 

アデルを助けるために!!」


そう言って彼らは飛ぶスピードをさらに上げ、

魔物の群れもそれに伴って進行のスピードを

上げたのだった。

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