王都の内情、そして彼の苦悩
後半シリアスがログインします。
ファルが帰った後、夕飯に使う材料を買うために
商店街に出た。
うーん...なんか最近は物価が上がってきたなぁ...。
店主も客も困り顔に見える。
俺は適当な店の店主のおばさんに話しかけた。
「なんで最近、物価が上がってるんですか?」
「ああ、実はね、最近、ルーデンス国が
うちに来たのと同じような魔物の群れに
攻められたらしくてねぇ...。
あそこの周辺は魔物が滅多に出ないから
軍があまり整備されてなくてね...。
一応はどうにかなったらしいんだけど
狙われた場所が貿易の大部分を担っていた
機関の集まるところだったから大打撃を
受けちゃったみたいなんだよ...」
ルーデンス国と言えば...面積は他の国より
少ないものの、その豊潤な土地を利用して
育てた多くの作物を武器にした貿易力の高さから
成り上がりつつある商業国...確かウチの国の
一番の取引相手だったはずだ。
「それでルーデンスの貿易機能がストップ
したってことですか?」
「そういうことだね...まあこんなこと
初めてだからわからないけど...随分と
仕入れられる量も値段も変わってしまったよ...」
「そうですか...」
ならしばらくは耐えるしかないか。
ルーデンス国が復旧するまでの辛抱という
ところだろう。
「どんどんと物価が上がってきたし...
この国は大丈夫かねぇ...?」
店主のおばさんの言葉は、不思議と
俺の心に響くのだった。
いつもより少し節約して夕飯の材料を買い、
家に戻った。
「ふぅ...」
俺は買ってきたものを横に置くと、そのまま
座り込んだ。
ファルも道を決めたんだし、俺もやるべき
ことを決めないとな...。
元々ここには農民以外のやりたいことを
探すために来た。
だが、今やっているのは冒険家くらいで、
他には新しいことはさほどやっていなかった。
もう、農民でいいんじゃないか?
俺はこれがやりた――
『...本当にそれがやりたい道なのなら...ね』
ふと、母さんの言葉を思い出した。
その他にも使命感や義務感、それに縛られるなと
母は言った。
「これは...そんなのじゃない...ただ...
アイツの為にも――」
そこまで言って気がついた。
「――自分の気持ちなんて...これっぽっちも
入ってないじゃねぇか...」
俺は上を見上げた。
「俺は一体...何がやりたいんだろうな...?
何をすればいいんだろうな...?
――なあイルビア、俺、どうしたらいいんだ?」
その言葉に答えるものはどこにも居なかった。
ただ母さんからの手紙だけが、それ以上
考えることをやめさせようと俺の頬を角で
つついてくるのだった。
母 さ ん が ロ グ イ ン し ま し た 。




