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騎士も勘違い

「ご...ごめんね! なんか変な勘違いしてて...!」


誤解が解けたあとにヘレンさんから謝られた。


「いや、こちらこそわかりにくいことを言って

すみません...」


いや、でもまさかヘレンさんが

俺が女の人に狙われている(貞操的な意味で)と勘違いしていたとは...


何でそんな勘違いをしてしまったんだろうか。


そんなことを考えていると、こちらに

向かってくる足音が聞こえた。


「ヘレン、こんなとこにいたのかい」


向かってきていたのはウォンさんだった。


「...ウォンさん? 何でここに?」


ウォンさんは呆れたような顔をすると


「...はぁ、約束してたじゃないか。

お茶会するって」


「え!? いや、でもこの騒ぎで

てっきり中止に――」


「するわけないだろう? あんたがあんなに

楽しみにしててくれたんだ。 魔物の群れ

なんてすぐに片付くと思ってお菓子の準備を

しといたんだよ」


「ウォンさん...!」


ヘレンさんはパァァァっと花が咲くような笑顔を

浮かべた。


やっぱウォンさんは良い人だなぁ...。


ヘレンさんはウォンさんの後ろに回り込み、

その背中を押して急かし始めた。


「よし、じゃあ行きましょう。 すぐ行きましょう」


「ちょっ、そんなに焦らなくてもいいじゃないのさ」


「こうしてる間もお菓子は私を待ってるんです」


「いや、あんたがお菓子を待ってるの間違いだと思うけど...」


「どっちでも良いです。早く行きましょう。

あ、アル君、またね」


ウォンさんの背中を押しながら

こちらに手を振ってヘレンさんは去っていった。


ウォンさんのお菓子、そんなに美味いのか...。


そんなことを考えていると、どこからか

こちらに迫ってくる足音が聞こえた。


「おい」


「ん?」


声をかけられた方を振り向くと、そこには

先程ヘレンさんを勧誘していた騎士が居た。


「単刀直入に聞くけど...お前、ヘレンさんと

どんな関係だ?」


「どんな関係って言われても...」


多分未だに弟みたいに思われてる節が

あるんだよな...。


となると...。


「向こうからしたら...家族?(姉弟的な意味で)」


「家族だと!?(夫婦的な意味で)」


まあ、うん。 血は繋がってないから

全然似てないし、驚くのも無理はないかな。


ちゃんと説明してあげなきゃいけないな。


「あ、でも別に血は繋がってないんだ」


「それは当たり前だろうな!! 舐めてるのか!?」


おおう、凄い剣幕だ。


「いや、わかってるなら話は早いよ。

実は俺さ、亡くなった人(弟)に似てる

らしくてさ、面影を重ねてるみたいなんだ」


「亡くなった人(好きな人)!?」


「まあ、だからと言って最初から

こんなに仲が良かったわけじゃないんだ。


詳しくは説明できないこと(邪龍のこと)が

あって...それでより仲良くなった...ってとこかな」


「詳しくは説明できないこと?」


「ああ、それは俺の(農民としての)人生に

関わってくるから聞かないでくれると助かる」


「お前自分の人生にかかるくらいのことを

ヘレンさんしたのか!?


お前ヘレンさんに何しやがったぁぁぁぁぁぁ!?!!」


「え? 何もしてないけど?」


「嘘つけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


...嘘じゃないんだけどなぁ...。


「とりあえずもう行っていいか?

やらなきゃいけないことがあるんだ」


そう、俺には母さんからの手紙を読むという

作業がある。


「やらなきゃいけないこと?」


俺はぶっちゃけ手紙を読みたくないので、

顔を俯かせながら


「ああ、俺も本当はやりたくないんだけどな...。

やらないと俺が...」


ああ、本当に鬱だ。


「どんなヤバい仕事を請け負ってるんだよ...!?」


何か聞こえたけど俺はその言葉には耳を

向けずには重い足取りで家へと歩きだした。


が、その途中にルリが視界に入り、ルリの前には――


「やはり君の剣技は美しく、麗しく、そして強い。

なにより、君自身もとても可憐だ。 


君のような者は、この私の隣に居るべきだ。

共に騎士団で国に尽くそうじゃないか」


――何か変な奴が居た。


前髪を手で払いながら話す騎士を見て、

ルリも顔がひきつっている。


「あ、あはは...僕は今のところそういうのは

考えてないので...」


「謙遜する必要はない、いや照れているのか?」


どちらでもないだろ。


「君の実力は部隊長であるこの私が保証しよう。


大丈夫さ、この美しい僕と可憐な君が

一緒ならどこへでも行けるさ」


一人でどっか行けよ。


そのポジティブさならお前一人でも

十分どこへでも行けるだろ。


「でも、僕は...えっと...」


「とりあえず私に着いてきなさい。


話はそれからだよマイハニー」


すでにルリを嫁に認定している。


駄目だコイツ早くなんとかしないと。


ルリもその危険に気がついたのか

顔を青白くすると


「え、ええと...失礼しました!!」


脱兎の如くルリは逃げ出した。


「ああ、どこへ行くんだい!? マイハニー!」


走り去ったルリに手を伸ばし、それだけでは

飽き足らないのか追いかけ始めた。


「君のハニーになった覚えはないよ!?

それに僕にはすでに心に決めた人が――!」


そこまで言って、走り続けたルリは俺に

気がついた。


待て、やめろ。 こっちに来るな。

面倒事の予感しか――


「アルー!!」


泣きそうな顔で俺に抱きついてきたルリを

見て、俺は悟った。


もう駄目だ...、と。


「マ...マイハニー...? その貧弱そうな男は

誰だい...? も、もしかしてお兄さんかな?

ず、随分と、に...似てない兄妹なんだね...?」


「兄妹じゃないよ! この人が僕が

心に決めた人だもん!」


こいつ俺を利用してこのナルシストを

引き剥がすつもりか...!?



まあ、もう俺も引き返せないだろうし、

ここは一芝居打つか。


俺は抱きついているルリを自分の片腕で

強く抱き寄せた。


「へ?」


「そうです。 ルリとは相思相愛。

俺達はお互いに愛し合っています。


ですので、悪いですがお引き取りください」


「えっ、あのっ...アル?」


「そそそ、そんなまさか...でも!

それでも私も彼女を愛している。


私が彼女を愛し続ければいずれ彼女の

気持ちは私に傾くことが――」


ここまで言っても駄目か...。


こんなキザっぽい事、芝居だとわかってても

言いたくないけど...。


ええい、ここまで来たら言ってやる。


「無駄ですよ、だって...


――俺の方が彼女を愛していますから」


ああああああ!! 背中が痒いいいいいい!!


こんなこと言って後悔したぁぁぁぁぁ!!


「な....なななななななななな!?!!!」


何故かルリは顔を真っ赤にして狼狽え、

騎士は俺の発言を聞いてから俯いた。


「なるほど...より愛している人がいるからこそ

気持ちが振り向かない...そういうことか...」


あれ? なんかわからんけどもしかして

かなり効果あった?


騎士は顔を上げると


「私は貴方よりもマイハニーを愛することに

します!!


そして、次こそはマイハニーを私の物にして

見せましょう!」


駄目だコイツわかってねぇ。


だが、騎士は去っていったので、とりあえず

この場では解決したということで良いだろう。


「え、ええええと、あ、アル? さっきのは――」


「ああ、芝居だろ? まったく...まさか

俺をまるで彼氏役みたいに引き立てて

利用するとは...俺の機転が無かったら

ヤバかったぞ?」


「――バカ」


何で解決したのに機嫌が悪くなるんだ。



「こ...この...」


「ん?」


いつの間にか背後に先程ヘレンさんを

勧誘していた騎士が居て、顔を真っ赤にして

プルプルと震えていた。


「この...女たらしぃぃぃぃぃ!!


お前は男の敵だぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


そう叫びながら騎士は走り去って行った。


「...なんで?」


「今のは僕もあの騎士に同意かな」


そう言いながら、心なしかルリの抱き締める

力が強くなった気がした。

同じようなネタを二回連続でやってしまった...。

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[一言] ···ナニコノ憐れ過ぎる騎士···WWW
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