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都市調査

昼飯を食べ終わった後、俺は母さんと

二人で会話をしていた。


なお、父さんはまだ気絶している。


「王都も素晴らしいけど、ルルグスも

かなり良いところよ? 平和だから

物騒な噂も聞かないし」


ちなみにさっきから母さんはずっとこんな

感じでルルグスについての良いところを

アピールしてくる。


余程俺をこっちに住ませたいのだろう。


このままでは取り込まれるかもしれない。


「じゃあ、そんなに良いならちょっと

この都市のこと見てくるよ」


「あら、本当? じゃあいってらっしゃい。

私はちょっと後始末があるから」


俺の言葉を、前向きに考えていてくれると

判断したと思われる母さんは、笑顔で

送り出してくれた。


しかし、確かにまだ机の上には食べ終わった

あとの食器があるとはいえ、それの片付けを

すぐ済ませて着いてくるかと思っ――


「んがああああああああああああ?!!!」















後始末ってそっちなのか。


皿じゃなくて父さんの始末なのか。


ヤバイ、やっぱりここはヤバイ。



そそくさと逃げるように家から離れ、

商店街に向かった。


ふむ、賑わいは王都方が勝ってるけど

あんまり変わらないな。


品揃えも中々良いし、それに皆笑顔だった。

確かに良い都市だと言うのは本当のようだ。

とりあえず、俺も何か買ってみるか。


俺は適当な果物屋を見つけると、店主で

あろうおじさんに話しかけた。


「すみません、何かオススメありますか?」


「それならカポスがオススメだな」


カポスとは緑色の薄い皮で

実が覆われた果物で、食べるとシャクシャク

しており、みずみずしくて美味しい果物だ。


そういえばそろそろカポスは旬の時期だったな。

美味いから一度は育てたかったんだが環境がなぁ...。


おっと、そんなことより


「じゃあカポスを3個ください」


折角だから父さんと母さんの分も買った。


「一つ140ネルだから420ネル...だけど

おまけして400ネルでいいぜ」


「ありがとうございます」


この人優しいな...。


俺は400ネルぴったりを店主に渡し、

店主からカポスを受け取った。


「...ここ、平和だなぁ...」


「ああ、ルルグスは平和だ。

変な噂も聞かないし、いいとこだ」


俺の呟きが聞こえていたのか、店主は

俺の言葉に返してくれた。


「ま、稀にスリとかが出ちまうことはあるけどな。 


まあ、そんなことしてもここじゃすぐ捕まっちまう。


ここは衛兵が優秀だからな」


「なるほど...」


ここは本当に住みやすくて良い都市みたいだ。

もしかしたら母さんも本当はこの都市を

自慢したかっただけ...なわけはないだろうけど

少しは自慢したい気持ちがあったのだろう。


そうだと思いたい。


俺はカポスをかじりながら商店街を

歩き回った。


なおカポスはとても美味しかった。


品種改良してどこでも育つカポスでも誰か作ってくれないかな...。












夕方、ルルグスを歩き回り終えた俺は、

家に戻ってきた。


「ただいま」


「アルおかえりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


両腕を広げて飛びついてくる母親を

俺は体を横にそらすことで回避した。


すると母さんは体を空中で半回転させ


「ぬぅぅんっ!」


と、女性が出してはいけないような

声を出したと同時に


空気を蹴った。


そしてもう一度おれに飛びかかってきた。


「はぁ!? そんなの有りおごふっ!?」


「もー、そんなに恥ずかしがらなくても

良いのに...」


「母さん...空気を蹴るなんて技いつ

覚えたんだよ...」


「ふふ、私は息子の為なら不可能を

可能にするのよ!」


可能にしないでください。

不可能は不可能のままにしていてくださいお願いします。


「それに、ギャグパートでは私のような

キャラが最強なのよ? わかった?」


ごめん何言ってるかよくわからない。

とりあえず母さんには敵わないってことは

嫌でも理解できた。




抱きついてきた母をなんとか取り払い、

居間に入ると






父さんが二人いた。



俺は無言で扉を閉めた。




「...アル?」


「ああ、そうだよな、俺の見間違いだよな、

まさかそんなことあるわけないよな」


俺は落ち着いてもう一度扉を開けた。


父さんが二人いた。 


片方は倒れていて、もう片方はその近くに

立っていた。


「はは、アルよ、父さんはついに幽体離脱

してしまったようだ」


俺は立っている方の父さんの頭を掴んだ。

幽体離脱をしていても掴めるようだ。


「さっさと戻れ!!」


俺は元の体に霊体を叩きつけた。


「んぐぉふっ!」


元の体に戻った父さんは少し跳ね上がった。


「危なかった...父さんはあのままだったら

逝ってたかもしれん...」


ここまでになるまで一体母さんは何を

したんだよ。


「さて、そろそろ夕飯にしましょうか」


母さんは俺が腹を空かせて帰ってきても

良いように夕飯の準備を終えていたようだ。


夕飯のときに先ほど買ったカポスを渡したら

とても喜ばれた。


夕飯の時間は特に問題なく終了し、寝る時間に

なって部屋に案内されたのだが...。


「なんで母さんがいるの?」


「私もここで寝るからよ?」


「母さんの部屋は?」


「ここじゃないわ」


「うん、おかしいよね」


「恥ずかしがらなくてもいいのよ?」


駄目だこの人、早くなんとかしないと。


「...ちょっと寝る前にトイレ行ってくる」


「はーい、すぐ戻ってきてね」


俺は部屋を出ると、まずトイレに行き、

その後、父さんの部屋に入った。


そして鍵を閉めた。


「父さん...避難させてくれ」


「...明日怒られるの父さんなんだけど?」


「...頑張ってくれ、俺の平和のために」


「おい! ちょ! 勝手に控えの布団を

敷くな! おい! ベットの隣に寝るな!

ちょ! アル!! 起きてくれ!」




翌朝、父さんは犠牲になった。

親子のときは大体こんなテンションの回です。

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