退屈のしない道中
俺はルリと話ながらルルグスへの経路を
歩いていた。
やはり一人寂しく歩くよりも、誰かと
話ながら歩いた方が楽しい。
歩き続けて気がつけば夕方になっていたので、
もう少し先で野宿にするらしい。
「そういえばさ、アル君はどうして
ルルグスに向かってるの?」
今更だな、これ。
まあそれだけ話題に欠かなかったってことか。
「昨日届いた手紙で両親から呼び出し
食らったんだよ。
暇なときで良いとは言われたけど、思えば
しばらく顔見せてなかったし、早目に
会いに行こうと思ってな」
「なるほどね...でもなんで親と離れて
暮らしてたの?
勘当でもされた?」
「ねーよ!」
真顔でとんでもないこと言うな。
「あはは、冗談だよ。 君みたいな人が
勘当されるとは思ってないよ」
「冗談が重すぎるんだが...」
俺がそう言うと彼女は俺に向けて
サムズアップをして
「これがブラックジョークってやつだね!」
「ドヤ顔で言ってるけどそれ多分違う!!」
やばい...しばらく話しててもルリという
人物の性格が掴めない...。
「違うかな?」
「全然違うから。
ところでルリはどうしてルルグスに
向かってるんだ?
俺みたいに両親に会いに行く...ってわけでも
なさそうだけど」
俺の質問にルリは前を向いて俯き、
『んー...』としばらく考えてからこちらを向き
「――なんて言ったらいいんだろう?」
「俺に聞くな」
「ごめんごめん。 全部話すと長いから
省略しようと思ったんだけど...仕方ないから
全部話すことにするよ」
「そうしてくれ」
ルリはコホンとわざとらしく咳をして
「僕は基本旅をして自分を鍛えてるん
だよ。 そんなときに、最近、ルルグスの
周辺で魔族が目撃されたって話を商人の
人から聞いてね」
「? 和平を結んだから魔族が居ても
別におかしくはなくないか?
まあ滅多に来ないから珍しいけど」
「いや、ただ居るだけだったらいいん
だけどね?
聞いた話によると、出会った人達は皆
大怪我して帰ってくるらしいんだ。
だから調査に行ってみようかなって」
「それ...危なくないか?」
「ん? 大丈夫だよ。 あくまでこの話は
噂の域を出ないし、何事も無ければそれで
終わりなんだから。
それに――」
ルリは自分の胸に手を置き
「これでも僕、勇者の子孫だから」
「え?」
マジで?
「だから、いざってときになったら
先祖様から引き継がれてきた勇者としての
力でどうにかするつもり。 だから心配は
いらないよ」
「そうか...なら、大丈夫か」
それに、今の俺の格好は農民ではなく
一般人スタイルだが、どちらにしろ戦いに
着いていける格好ではない。
着いていくならステータスのことを
明かさなければならない。
まあ、勇者の子孫だっていうんならそれなりに
強いんだろうし心配しなくても良いか。
「僕の事、心配してくれたんだよね?
ありがと」
満面の笑みでそう言う彼女の顔を夕日が照らし、
とても可憐に見えた。
「お、おう」
思わず声が上ずってしまった。
「さて、じゃあ今日はここら辺で野宿に
しよっか」
「そうだな」
そう言って彼女は小さなバックから
テントの部品を――
「いやおかしくね!?」
「突然何!?」
「普通そんな小さいバックにテント
入らなくね!?」
「ああ、これ? 僕も原理はよくわからないん
だけど、見た目以上の収納性があるみたいで
中々重宝してるんだよ。
これもご先祖様から引き継いできた物の1つだよ」
「そんなもんまであるのか勇者家系...」
なんかちょっと羨ましいな。
俺の視線に気がついたのか、ルリはバックを
さっと取って胸に抱き
「これは渡さないよ!?」
「盗るつもりはねぇよ!?」
「ふふっ、冗談だよ」
「だろうと思ったよ!」
他愛も無い話をしつつ、俺はテントを立てる
準備の手伝いをした。
テントの準備が終わると、次は夕飯の準備に
取りかかった。
二人で持っている食料を出しあって、
料理の方はサバイバルに慣れているという
ルリに任せた。
(といっても具材を切るくらいの手伝いはしたが)
そして完成した料理は、スープや炒め物など、
家に居るときと同じ...下手したらそれ以上の
料理だった。
「いただきまーす。 はふぅ...美味しい」
「いただきます。 ...うわ何これ美味っ!?」
俺がそう言うとルリは嬉しそうに笑った。
「あはは、作った本人からしたらそんな
こと言ってもらえて嬉しいよ。 どんどん
食べてね」
美味しかったからなのか、箸がいつもより
早く進み、すぐに食べ終わってしまった。
「ああ、美味かった...ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様。 さて、じゃあ
そろそろ寝る準備でもしようか」
「そうだな」
俺はバックから寝袋を出して地面に置いた。
「え? アル君、どこで寝る気?」
「どこって...ここだけど?」
俺は寝袋をポンポンと叩きながら言った。
「別にテントの中でいいよ?」
「...何で?」
「テント作るの手伝ってもらっちゃったし、
外よりテントの中の方が快適だよ?」
「...頼むから貞操観念を持ってくれ」
そう言うとルリはむっとした顔になった。
「僕だってそれくらい考えてるさ。
何も考えずに男の人と同じテントで寝ようとは
思わないよ。
でも、まだ会って1日しか経ってないけど
君は変なことしないって思ったからこそ
こう言ってるんだよ?」
「なにその無駄な信用...」
「これでも直感には自信があるんだよ」
「直感って...、はぁ...わかったよ」
「うんうん、最初からそう言えばいいんだよ」
ルリは腕を組んで頷きながら言った。
「んじゃ、どうぞ」
ルリがテントの入り口を開けて招いてきたので
寝袋を持って中に入った。
「あれ? 布団が二つ?」
寝袋を持ってきた意味がないじゃないか。
そんなことを思っていると、ルリもテントに
入ってきた。
「よし、じゃあ寝るまで話そっか。
僕、旅をしてるときに夜、誰かと話しながら
寝るのが夢だったんだ」
「どんな夢だよそれ...
まあ、そんくらいの夢だったらいくらでも
付き合うけどさ」
「うん、ありがと。 じゃあ――」
俺はルリが寝るまで話に付き合った。
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ってことはもうランキング除外は解除しても
良さげなのかな?
前みたいにスケープゴートにされないんだったら
解除しようかな。




