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悲劇再び

親が今住んでいる都市――ルルグスは

グリムの森を越えたところにあるので、

俺は東門に向かっていた。


歩いていると、この前、邪龍と戦った場所を

通りかかった。



まだ完全には復旧がされておらず、

ヘレンさんの家も壊れたままだった。


ヘレンさんは家が壊れているので、今は

特別にギルドに寝泊まりさせてもらっているそうだ。


聖龍の遺体については光の粒子となって消えてしまって弔えなかったので、今度広場に慰霊碑を作るとのこと。


しかし最近、魔物の群れだったり邪龍だったり、

なんだか厄介事が多すぎやしないか?


いや、まあ自分から巻き込まれに行ってるから

自業自得なんだろうけどさ。


久しぶりに父さんや母さんに会うわけだし、

厄介事とか冒険家としての仕事を今は

忘れて少しは向こうでゆっくりしてくるか。





さて、東門を出たはいいが、走っていったら

当然面倒くさいことになる。


配達物が相手に届くと、送り主に配達が

完了したということが書かれた紙が渡される。


その紙には届いた日にちが書いてあるので、

馬車よりも早いこの足で走っていったら

絶対に怪しまれる。


じゃあ馬車並のスピードで行けば良いかと

思ったが、生憎今日はルルグス行きの馬車は

出ていない。


ということは、馬車並のスピードで

走ったら辻褄が合わなくなる...なので...


「歩き...しかないよなぁ...」


俺はトボトボと歩き始めた。




しばらく歩き続けてヘレスト草原を抜けて、

グリムの森の前に到着したが


ふと、何か忘れている気がした。


いや、別に忘れ物とかそういうんじゃなくて

記憶的な意味で


「まっ、いっか」


俺はグリムの森に入った。


途中、魔物が数匹出てきたが、殴れば終わり

なので苦戦はしなかった。


が...


丁度、今目の前に出てきたのは雄のオークだった。


何か引っ掛かるような気がしなくもないが、

とにかく倒――


「――――カ?」



「え?」


このオーク...今しゃべったか?

かなり珍しいことだが、魔物の中には

人の言葉を覚え、仲良くなるような個体も

いるらしい。 きっとこのオークはそういった

個体なのだろう。


「――ナ―カ?」


オークの鼻息が荒い。


恐らく、この見た目のせいで出会った人に

話しかけようとしてもすぐ逃げられて

しまってばかりなので、逃げずに居る俺とは

話せるかもしれないと興奮しているのだろう。


嬉しいときって興奮するときあるからな。


だとしたら、話し相手くらいには

なってあげよう。


例え違ったとしてもすぐ倒せるだろうし、

多分大丈夫だろ。


俺はオークに近づくと、耳をオークの方に向けて


「悪い、聞こえずらかったから

もう一回言ってくれ」


そう言うと、オークは近づいてきて、

耳元で口を開いた。



おお、やっぱり人と話したかった――


「ヤラナイカ?」













「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


何故かその言葉に例えようもないくらい寒気を感じた。


そして蘇るトラウマ。


――ああ、さっきまで忘れてたのはコレか...。


ここで雌オークに襲われたからな...。




オークが俺の両肩に手を置いた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ダイジョブ、イタクナイ」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ムシロキモチイイカラ」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


やばい...恐怖で体が動かない...。

誰が男である俺が雄のオークに貞操を狙われると

予想できただろうか。


何? 俺オークを引き寄せる体質でもあんのか?


そう考えている間にもオークは手を俺の

服に――


「やぁ!!」


横から来た何者かに、オークの首から上が

切断された。


「君、大丈夫!?」


「...おう、ありがとな...」


「ねぇ待って目から光が失われてるよ!?

ほんとに大丈夫なの!?」


「...もうオーク嫌い...」


「元に戻ってぇぇぇぇぇぇぇ!!」


名も知らない人が数分間に渡って

励ましてくれたおかげで、少し冷静になってきた。


「もう大丈夫?」


「あ、はい。 ありがとうございます」


励まされているときは俯いていたので

相手の顔を見ていなかったが、今目の前の

人の顔を見ると、水色のショートヘアーの

女の子だった。


「うーん、別に僕と同年代くらいだから

敬語なんて使わなくても良いと思うんだけど...」


敬語じゃなくていいのか。


ってあれ? ......僕?


え? 何? いや、確かに若干中性的な

見た目な気がしなくもないけど...


「僕ってことは...もしかして男なのか?」


「えっ!? いや、違うよ!? 

僕は女の子だよ!?」


手を顔の前でブンブン振りながら否定してくる。


「...じゃあ何で自分のことを僕って...」


「それは...その...



――色々...ありまして」


最後の言葉の時だけ凄く影が濃くなって

いたのを見て


――ああ、この話題についてはツッコんじゃいけないなと思った。


だが、この人はすぐに笑顔になると


「さてと! じゃあ自己紹介と行こうか!

僕の名前はルリ! 君の名前は?」


「俺はアルだ」


「なるほど、それで? アル君は

どうしてこんなところに?」


「ルルグスに向かってる途中だったんだ」


「おお! 偶然だね! 


僕もルルグスに向かってたんだ」


「マジか」


なんたる偶然。


「ねぇ、どうせなら一緒に行かない?」


「...いいのか?」


一人で退屈そうに歩くよりは二人で話ながら

歩いた方が楽しいだろう。


が、1日で着く距離ではないので、当然

野宿をすることになる。


つまり


「俺は男だぞ?


野宿のときに襲われるとかしたらどうすんだ?」


「え? 君はそんなことしないでしょ?」


何で言いきれるんだ? いや、確かに

そんなことをするつもりは毛頭ないが。


「何でそう思うんだ?」


俺がそう聞くと、ルリは顎に人指し指を置いて

考える素振りをして


「う~ん...何となく?」


大丈夫か? この人。


「まあ、まず君みたいに忠告してくれるような

人はそんなことしないだろうしね、それに、

僕は別に可愛くないから襲われる心配は無いと思うよ?」


「いや、十分可愛いだろ」


「あ、そう? ふふっ、お世辞でも

嬉しいよ、ありがと」


お世辞で言ったわけでは無いんだがなぁ...。


「じゃあそろそろ行こうか! ルルグスは

まだ遠いから張り切って行こー!」


「おう」


ルリは俺の方を向くと


「............張り切って行こー!」


「そのノリに乗れと!?」


「張り切って行こー!」


「無視!?」


結局、ノリに乗らずに歩き出したら着いてきた。

過去、他のサイトで書いててエタった作品の

ヒロインだったルリさんの設定をそのまま

引っ張ってきたとか言えない。

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