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力の差

 いつ練習したのか。


 そう聞きたくなるほどに、三人の連携は見事なものだった。


 ルリとヘレンさんが、別々の方向からお互い少しタイミングをずらして攻撃し、ファルは二人に当たらないよう魔法を放って援護していた。


 もし今戦っているのが普通の相手だったならば、すでに倒せていただろう。


 だが、今戦っているのは邪神。一筋縄で倒せるような相手ではなく、三人の攻撃を涼しい顔をして捌いていた。


 まだ三人の攻撃でまともに当たったものはひとつもない。それほどまでに邪神と三人の間には力の差があった。


 ただ闇雲に同じようなことをしていても埒が空かないと判断したのか、三人は一度攻撃の手を止めた。


「くっ……! 駄目だ。全然当たらないや……」


「簡単に倒せるような相手じゃないとは思っていたけど、こんなにも強いなんて……」


「でも、アル君とイルビアちゃんのためにも、諦めるわけには……」


 実の事を言えば、攻撃を当てる方法が無いわけではない。


 俺がツタでテスタを拘束すれば、少なくとも一瞬動きを止めることが出来る。その隙を狙えばある程度のダメージは与えられるはずだ。


 そう考えて、何度もやろうとした。だが、イルビアが傷付く姿を想像してしまうと、身体が動いてくれなかった。


「ちくしょう……」


 戦えない自分が情けない。こんなにも自分を情けないと思ったのは初めてだった。


「アル君……」


 ファルは俺の考えていることを察したのか、心配するような表情で俺を見ていた。


「大丈夫。私たちがどうにかーー」


「出来るとでも?」


 テスタはファルの言葉に被せるように言って、笑みを浮かべた。


「俺はまだ本気を出しちゃいないが、それでもお前らは俺に一撃たりとも攻撃を当ててねぇ」


「確かにそうだけど……でも! それはそっちだってーー!」


「言ったろ? 『本気を出しちゃいない』って。なんならお前らの攻撃のあとに反撃しても良かったんだぜ?」


 勝ち誇ったその発言に、嘘をついているような様子は見られなかった。


 テスタが敵としてあまりにも格上だと言うことは、この場にいる全員がわかっていることだろう。


 全力で立ち向かっても勝てるかどうかわからないのに、手を抜いて勝てるわけがない。


 それはわかっていた。痛いほど理解していた。それでも、俺は戦いに介入することは出来なかった。


 脳裏にイルビアの姿がチラつく。イルビアは俺のために動いてくれた。邪神を欺いて俺を助けてくれた。俺が躊躇しないように『私を殺して』と言ってくれた。


 イルビアもこんなことをしたいはずがない。兄として、止めなければいけない。


 それに、このまま三人だけで戦わせていれば、いずれテスタも手を抜くのをやめて、反撃することはもちろん、普通に攻撃をしてくるようになるだろう。


 ああ。わかってる。そんなことは考えるまでもなくわかってる。


 けど、俺にはーー。


「……そろそろ、頃合いか」


 テスタはそう呟き、手のひらにエネルギーを溜め始めた。


「女どもが戦っている姿を見せればもしかしたらアルも戦う気になるかと思ったんだが……どうやらそれだけじゃ駄目みたいだな」


「ッ!! 皆! 出来るだけテスタから離れろ!!」


 俺の言葉にルリとヘレンさんはすぐに反応したが、ファルは少し反応が遅れた。


 そもそもファルは二人に比べてステータスがかなり低めのはずだ。テスタのあの攻撃に当たってしまえばひとたまりもない。


 俺は一瞬の判断で、ファルをテスタから守るように抱えた。


「アル君、何をーー」


 それと同時にテスタはエネルギーを爆発させ、俺はファルを抱えたまま先程とは比べ物にならないほどに飛ばされた。


「……また随分と吹っ飛んだな。こりゃ、探すのが大変そうだ」


 テスタはそう呟くと、ゆっくりと歩を進め始めた。

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