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本心

200話目だ……。


や っ た ぜ

 イルビアが去ったことで、とりあえず王都にはもう敵は居なくなったと判断した俺は、警戒を解いた。


 一方ファルは、胸に手を当てて安堵の息を吐いていた。


「はぁ~、緊張した……」


「……よくもまあ、イルビアと話す気になったな……。もし手出ししてきたら……とか、思わなかったのか?」


「ううん。全然思わなかったよ。……優しい子だね、イルビアちゃんは」


「……や、優しい……?」


 今の会話にそんな要素あったか……? ていうから一応貴女自分の家と国を壊された挙げ句に罪を被せられてるんですよ?


「うん。多分、イルビアちゃんもこんなことをしたいわけじゃないんだと思う。でも、邪神の命令には逆らえないから仕方なくやってるだけなんじゃないかな」


「……まあ、そうだったらまだ救える余地はあるだろうし、俺としては嬉しいけど……」


 俺がそう言うと、ファルは呆れたような表情をして、


「……はぁ~、兄であるアル君が妹のイルビアちゃんを信じてあげないでどうするの?」


「そりゃ、俺だってイルビアを信じたいさ。……というか、何でファルはイルビアを信じれるんだ?」


「だって、イルビアちゃんが良い子だってことは、会話しててわかったもん」


「会話……? あれだけの会話でか!?」


「うん」


 あっけからんと言うファルに、俺は驚きを隠せなかった。


「考えてみてよ、私たちは今救助をしてきたけど、死人や大怪我をした人は居た?」


「……居なかったな」


「でしょ? こんなに大規模な被害が発生したのに、一人も重傷の人が居ないっておかしいと思わない?」


「言われてみればそうだな。……まさか」


 俺はファルとイルビアの会話の一部を思い出した。


『そっか……。ならもうひとつだけ聞きたいんだけど、今の王都の状況、わざと(・・・)こうなるようにしたの? 見た感じだと、私にはそうとしか思えないんだけど』


『……もちろんわざとに決まってるでしょ? 私は壊すことだけ(・・)は好きだから』


 今考えれば納得が行く質問だ。つまりあの質問の意味は「重傷者が一人も居ないように見えるけど、出来るだけ人を巻き込まないようにしてくれたの?」ってことだったのか……。


「それに私の知ってるアルビィさんとしての姿で掴みかかってきたときも、アル君が正体を暴いたときにこう言ったよね? 『やっぱりわかるんだね』って」


「まさかそれも……」


「そう。もし私を本気で精神的に追い詰めたかったのなら、バレるかもしれない行動を取るかな? 私は、イルビアちゃんがアル君なら自分の正体を暴いてくれるって信じてやったんだと思ってるんだけど」


「何で、そんなことを?」


「多分、イルビアちゃんは何かしらの理由があって邪神の命令には背けないんだよ。だけど、出来るだけ被害を少なく済ませたいと思ってる。だから表面上は邪神の言うことを聞いて、内心では被害が少なくなるように尽力してるんじゃないかな」


 ってことは、イルビアはまだ完全に悪に染まりきったわけじゃない……のか?


「…しかしまあ、あれだけの会話でよくそこまで理解できるな……」


「ま、女の子の気持ちは女の子の方がわかるってことだよ」


「いや、それにしても……」


「それにね」


 ファルは俺の言葉を遮り、笑みを浮かべると、


「アルビィさん、とっても優しかったんだ。だから、あの優しさまで演技だったなんて、私は思いたくないの」


「……そっか」


 俺も……イルビアを信じないとな。


 まだ助けられるかもしれない。それを知っただけでも、俺の心はとても軽くなったのだった。

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