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計画の全て

 全人類を支配下に置く……? そんなの、簡単に出来ることじゃない。


 だが、目の前の男、レムル・ホルーンは、まるで絶対に成功すると言いたげな自信溢れる佇まいをしていた。


「そう簡単に出来ることではない……そうは思っていないか? 少年」


 どうやら俺の内心は見透かされていたようだ。だが、気になるのはそれではなく。


「人類全てを支配下に置くための、何か画期的なアイデアでもあるのか?」


「その通りだ。そうでもなければこんなことはしない」


 そうだろうな。無計画でこんなことをしていたら余程頭の悪い人だろうし。


 なんとかそのアイデアを聞き出したいな……。


「それで、そのアイデアってのは何なんだ?」


 正直、いきなり核心をついても教えてもらえるとは思っていない。でも、アイデアの全貌は無理でも、その一部なら聞き出せるかもしれない。


 そのつもり最初からこんな質問をしてみたのだが……。


「……まあ、少年が今私の計画を知ったところで、何も出来るはずもない。私の支配下に置かれ、奴隷となる前に教えてやろう」


 教えてくれちゃうのかよ。


 領主は、右手の手のひらを肩の高さまで持ってくると、その手のひらの上に、紫色の石を作り出した。


「この街を狂わせた原因、それは私の能力により生み出したこの石だ」


 領主はそれを自慢げに見せびらかしながら、


「元は吸い込んだ者を支配下に置くことが出来る霧を生み出す能力だったが、私はこの能力を鍛え上げ、個体状に生成出来るところにまで至った」


「個体状……? それに何のメリットがあるんだ?」


「個体状にしておけば、常に広範囲に向かって無色の霧を出し、吸い込んだ者を支配下に置くことが出来る。つまり、私がわざわざ能力を使わず支配することが可能というわけだ」


 なるほどな、石さえ生成してしまえば、あとは適切な場所に置いておくだけで勝手に支配出来るってわけか……。


「だが、問題は石を設置する場所だ。街を支配するほどの石となると、それなりの大きさになってしまうし、すぐに見つかって壊されてしまえば効果は無くなってしまう。今回この街を乗っ取るときは協力者が居てくれたおかげでどうにか隠して設置出来たが、他の街となるとそれは難しい」


「……? 別にその協力者にまた手伝って貰えばいいんじゃないのか?」


「そういうわけにもいかないのだよ。何せ、彼はこの街を乗っ取りの対象に選んだからこそ協力してくれたのだからね」


 ってことは、その協力者はこの街に何か因縁があるってことか……。


「で、どうして俺はここまで連れて来られたんだ? 何か目的があるのか?」


「もちろん。というか、そもそも君がこの街に来たこと自体がこちらの計画の内だ。何せ、私の計画には君の存在が不可欠だからな」


「俺が……?」


「君が……というより、"王都"の住民なら誰でも良かったのだがね」


 王都の住民なら誰でも良かった? ってことは……まさか。


「……どうやら勘づいたようだね? そう、隠して設置出来ないのなら、人体に埋め込んでしまえばいい。まさか、怪しい人物を解剖してまで検査するような奴らも居ないだろう」


「……やっぱり、そういうことか」


「ああ。石を体内に埋め込められた時点で、その者は私の支配下に置かれる。あとはソイツに毎日王都中を徘徊するように指示してやれば良い。それだけで、王都はいずれ私に支配される」


「……そして今回、その徘徊役に選ばれたのが……」


「そう、君だ」


 そう言うと、領主はリネアの方に視線をやり、


「……リネア君も酷い娘だ。依頼を受けてくれた恩人に仇で返すような真似をするとは……」


「それは……貴方が私の両親を人質に……!!」


「どのような理由があれ、彼を不幸な目に陥れたのは事実だ。それに変わりはないだろう?」


「っ……」


 やっぱりか……。多分両親を人質に取られて、もしも両親に無事で居てほしかったら、誰でも良いから王都の住民を連れてこいとでも言われたんだろう。


「少年、君も報われないねぇ。あんなにたくさん罵倒されたにも関わらず着いてきて、こんなことになるだなんて」


「……なんで知ってるんだ?」


「リネア君の行動は定期的に監視していたからね。何か変なことしないように……ね」


 監視か……。なら、アレ(・・)はリネアに伝えなくて正解だったわけだ。


「さて、話はここまでにしよう。私も暇ではないのでね」


 そう言うと、領主は大きめな石を取り出し、


「君の体にこれを埋め込ませてもらう。何、内臓の1つや2つほど掻き出せば十分これを入れるスペースが出来るだろう」


 領主は下卑れた表情を見せながらゆっくりこちらに近づいてきた。


「アルさん!」


 リネアの声が聞こえた。このままだも俺の身が危ない。そう伝えたいのだろう。


 だが、それを察した領主は口を開き、


「おっと、抵抗なんてしようと思わないでくれ。抵抗の姿勢を見せた瞬間、兵士達は少年とリネア君を殺す。例え少年だけは助かったとしても、リネア君は無事では済まないだろう」


 俺はそれを聞くと、溜め息をつき、降参の合図を取った。


「大丈夫だ。俺は何もするつもりはない。だから、リネアには手を出さないでくれ」


「アルさん……!」


「物分かりが良くて助か…………ん?」


 降参の合図を取るときに開かれた俺の手から、小さな石が落下していた。


 そして、その石が床に当たると同時に、俺はその石を踏み砕いた。


「何もするつもりはないよ。"俺は"な」


 瞬間、突然街の方から爆音が響いた。


「なんだ!?」


 それに続き、部屋の中に居た兵士達が次々と倒れていく。


「そんな……馬鹿な……」


 何が起こったのかわからないと言わんばかりの表情で居たが、俺は構わずその顔に一撃をお見舞いした。


「ぼべっ!?」


 情けない悲鳴を上げて床に転がり込んだ領主を前に、俺は拳を握りしめた。


「反撃開始だ」

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