鳥の行方
リアルが多忙で死んでましたごめんなさい。
調理を終えたリネアが、こちらへ料理を運んできた。
「出来ました。今回は塩と砂糖を間違えてはいないはずです」
「そっか。じゃ、いただきます」
一口食べてみると、確かに分量や材料を調味料を間違えておらず、とても美味しい料理となっていた。
「ど、どうですか?」
心配なのか、リネアが恐る恐る聞いてくるので、俺は笑顔で答えた。
「美味いよ」
「そ、それなら良かったです……」
しかし、昨日の夕飯の時にも思ったけど、本当にリネアの料理は美味しいな。この鶏肉も絶妙な味付けにーーーーーー。
「ーーん? ……鶏肉?」
鶏肉。どこか引っ掛かるな。そう言えばこんな味の鶏肉を前に食べたことがあったっけ……。確かその鳥の名前はーームルバード。
「……って、ムルバード!?」
バッと置いておいたはずのムルバードに視線を向けると、そこにはすでにムルバードの姿はなかった。
まさかコレ……あの丸焦げ焼き鳥なのか!?
「……もしかして、使ってはいけませんでしたか?」
「別にそういうわけじゃないけど! 何でこんな美味くなってんの!? 焦げてもないし、劇的ビフォーアフターしてるじゃんこれ!」
「いえ、焦げていると行っても完全に中まで焦げていたわけではなかったですし、内部にまだ食べられる部分が残っていたんですよ。その部分を無駄にするのは勿体ないと思いまして」
「な、なるほど……」
丸焦げになってたムルバードを見てよくそれを思い付いたな。普通なら中まで黒焦げになってると思うだろうけど……。
ってかそれ以前にいつの間にムルバードを取ったんだよリネアは。
いや、まあ俺も考え事をしててボーっとしてたし、それで注意力が散漫になってたけどさ。
こうして俺がムルバードをいつ取ったのかという無駄な事を考えていると、リネアが俺の対面に料理を置き、椅子に座った。
「では私も、いただきます」
そう言ってただただ無言でパクパク食べ始めたリネアを見ていると、リネアが俺の視線に気がついたのか、顔をあげた。
「どうしたんですか? こっちをジロジロ見て」
「いや、思えばリネアがそうやってご飯を食べてるとこをまともに見たことなかったかなって」
「そうだとしても食事中の人をジロジロ見るのはマナー違反です。家の外に放り出しますよ?」
「やめてくださいごめんなさい」
今日も言葉の殺意が高いですね。
あれ? 待てよ? 同じものを食べてるってことは……。
「なあリネア。朝食のときも、今みたいに俺と同じものを食べたのか?」
「そうですが……それが何か?」
「いや、俺の分を作るときに塩と砂糖とかの分量間違えたなら、自分の分を作るときも分量を間違えるだろうから、自分でも食べたときにわかるんじゃないかなって……」
「それは……実はアルさんの分を作るときだけボーッとしてしまって」
「何それひどい」
まあ作ってもらってる立場だから、それだけでもありがたいし、別に文句はないんだけどさ。
でも、何で俺の分を作るときだけボーッとしてたんだ?
「でもこの街の状態で食料を無駄にするのは嫌なので、今後は気を付けますね」
「わかった」
ま、偶然俺の分を作ってるときに何か考え事をしてたんだろ。そんなの誰にだってあるし、別に気にするまでもないか。
「どうしたんですか? 早く食べないと冷めてしまいますよ?」
「なんでもない。それじゃ、俺も食べるか」
俺はまだ途中だった食事を再開した。
少しばかり冷めてしまってはいたものの、その料理の味は損なわれておらず、とても美味しいものだった。
ここから更新速度を徐々に戻せればと思ってます。