爆睡
ん……? いつの間にか寝ちゃってたか……。
未だ覚めきらない目をこすっていると、体に毛布がかけられていることに気がついた。
「これって……」
きっとリネアがかけてくれたんだろう。あとでお礼を言わないとな。
「っていうか、俺ってどのくらい寝てたんだ?」
気になった俺はリネアに聞こうと思ったのだが、部屋にリネアは見当たらないし、この家は地下にあるため、窓から外の様子を見ることも出来なかった。
仕方ないと思いながら俺は立ち上がり、玄関の鍵をあけて外の様子を確認してみると、外は既に日が暮れていて真っ暗になっていた。
「……どんだけ寝てたんだよ、俺……」
玄関を閉めて鍵をかけ、それから部屋を見渡すと、カウンターの上に紙が置いてあるのが見えた。
その紙には何か書かれているようで、俺はカウンターの前まで歩いて、紙を手に取った。
『アルさんへ。ご夕飯、作っておきましたので食べてください。カウンターの奥のテーブルに置いてあります。あと、お休みになられたいときは料理が置いてある部屋に入って右手側の部屋にベッドがありますので、そこを使ってください』
「……リネア」
『もし何かあれば料理がある部屋の、真っ正面に見える部屋に私は居ますので、お声かけお願いします』
うーん。お礼を言いたいところだけど、こんなに真っ暗だし、もしかしたらリネアは寝てるかもしれない。今はリネアに声をかけるのはやめとくか。
俺はそう決めると、カウンターの奥の部屋に入り、テーブルに料理が置いてあるのを見つけた。
それと、奥のソファーで寝てしまっているリネアが目には入った。
「まったく。部屋に居るんじゃなかったのかよ……」
しょうがないなと思いながら、俺はリネアにかけてもらった毛布をリネアにかけてあげた。
そうだよな。俺が疲れで寝ちゃったんだ。自分の故郷がこんな風になってて、王都までの道を往復したリネアが疲れてないわけがない。
せめて今くらいはしっかり休んでほしい。
「んん……。アル、さん……」
ん? 寝言……か? 寝言で俺の名前を……? まさかそんなことあるわけ……。
「通、報。します、よ……」
間違いなく俺を呼んだなこれは。夢の中でまで罵倒されてるのか俺は。
うん、寝言を聞くのはやめてリネアの作ってくれた料理を頂こう。そうしよう。
リネアが作ってくれたのは、サラダと焼いた肉だった。
俺は椅子に座って一口食べようと思った瞬間、それを躊躇った。
「……まさか、悪戯とかされてないよな……?」
塩と砂糖を意図的に入れ間違えてるとか、ドレッシングがしょっぱくされてるとか……。
いやいやいや、流石に料理に変なことをするわけないだろうし……。
……どうせしか食べるものは無いんだ。腹を括ろう。
俺は覚悟して、恐る恐る一口食べてみると……。
……うま。え、何これ結構美味いんだが。
肉はもう冷めてしまっていたが、それでも十分に美味しかったし、サラダも味付けが良くて最高だった。
ごめんなリネア……。一瞬でも疑った俺を許してくれ……。
「……ごちそうさまでした」
俺はあっという間にリネアの料理を完食すると、未だにソファーですぅすぅ眠っているリネアを見た。
これ、起こして寝室に行くように促した方が良いのか……?
いや、でも気持ち良さそうに眠ってるし、起こすのも悪いな……。かと言ってこのままソファーの上で寝かせておくのも……。
そのまましばらく悩んでいると、リネアがむくりと起き上がった。
「……あれ? 私、寝ちゃって……」
「おっ、目が覚めたか。ぐっすり寝てたぞ」
笑いながら俺が言うと、リネアは不機嫌そうな顔になり、
「椅子に座って爆睡してたアルさんに笑われたくは…………あれ?」
リネアは自分に毛布がかけられていたことに気がつき、毛布と俺を交互に見た。
「あ、それか。俺が使わせてもらってた毛布で申し訳ないけど、そのままじゃ風邪引きそうだからかけたんだが……」
「……私が寝ている間に何を……?」
「おいまてその言葉は語弊しか生まない」
まるで俺が寝ているリネアに手を出したみたいじゃないか。
「語弊……? 事実ではないんですか?」
「俺そこまで信用ないか!?」
「え……? むしろ信用されていると思っていたんですか……?」
「結局またこのパターンかよ畜生!」
相も変わらず。俺はしばらくリネアに罵倒され続けた。




