立ち直りと落ち込み
日刊2位って見えた気がするんですが
見間違いか何かかな?
本当にありがとうございます。
「はぁ...」
家に戻った俺は相変わらず不安に駆られていた。
「あんなもんどうしろってんだよ...。
打つ手無しだろ...」
だからと行って何の対策もしないわけには
いかないということは自分でもわかっている。
わかっているが...。
別に俺は勇敢な男ではない。
ステータスが高いことと、恩恵があって
スキルが成長しやすいことを除けば普通の
村人...農民だ。
今までだって勝てない相手なら逃げてきたし、
盗賊に出くわしたときは、命乞いをして助かった
こともあった。
俺なんて所詮は...
いかんいかんいかん。 ネガティブになっても
何も始まらない。
少し落ち着こう。
丁度ウォンさんから貰った液体ハーブがあるし、
それでリラックス出来るなら儲けものだな。
俺は適当な小さめな布を持ってくると、
そこに少しハーブを垂らして染み渡らせると、
布を顔に押し当てた。
心地よい香りが俺を癒し、なんだが
落ち着いてきた気がする。
もしかしたら事前にリラックス効果があると
知っていたから、その先入観で落ち着いたの
かもしれない。
だが、それでも十分だった。
「...こりゃメルク草が重宝されるわけだ」
先程より随分と冷静になった気がする。
今になって落ち着いて考えてみれば、
アイツは攻撃と魔力のステータスは恐ろしいほど
高かったが、その反面、防御と魔防については
かなり脆かったはずだ。
常人の攻撃なら通らないレベルの防御力ではあるが、
俺なら無理矢理ダメージを与えられるはずだ。
つまり、攻撃を食らわなければよい。
いや、でもブレスなんてスキルも持ってたし、
あの魔力を込めたブレスなんて吐かれたら
回避なんて不可能じゃ...。
ええい、だから今はネガティブ思考は無しだ。
ようはブレスが吐かれる前...不意の最初の一撃に
全てを込めれば、運が良かったらいけるん
じゃないか?
そうだ、やりようはいくらでもある。
徹底的にアイツを調べあげて
出来ることを全部やってやる。
「...よし、明日からはしばらく調査に
時間を割くか」
俺はそう決意した後、早めの夕食を取って、
明日に備えて就寝した。
―――――――――――――
時はアルがギルドから帰って数分経った
ところに戻る。
ヘレンとウォンが話をしていると、
ジェイク達がギルドに入ってきた。
「あらジェイクさん。 依頼の方は
どうだったの?」
「ああ、依頼の方は問題ねぇ...だが...。
その...なんつーか」
「こう...凄いのがね...?」
「? 何かあったのかい?」
ジェイクとラミルの焦らすような話し方に、
ウォンが痺れを切らしたのか、追及した。
「はあ...僕が話しましょう。
ですが、ここで話せば他の方の耳に触れて
騒ぎになる可能性があります。
個室で話したいのですがよろしいですか?」
「わかった。 ウォンおばさん。
少しここで待っててくれる?」
「はいよ」
「じゃあ4人とも、こっちに来て」
ヘレンが個室に4人を案内した。
全員が入室し、扉が閉まったことを確認すると、
ルークは話し始めた。
「実はグリムの森に黒い龍が出たんです」
「黒龍が...? それは珍しいこともあるのね...」
そう言ったヘレンの表情がほんの少し歪んだ気がした。
「ヘレンさん、あれは黒龍なんてもんじゃないです。
ジェイクさんでも知らないと言ってましたからね。
恐らく、もっと禍々しい存在だと思います。
何かご存知ありませんか?」
ルークの質問に、ヘレンは一瞬顔色を
悪くさせたが、すぐに元の表情に戻した。
「わ、私は知らないかなっ! ごめんね?
役に立てなくて」
無理矢理作ったようなヘレンの笑顔を、
ルークは怪訝に思い追及することにした。
「...いや、その様子は...」
だが、ルークの発言の途中に、シルが
ルークの肩を掴んだ。
「ありがとうございました。
さ、今日は帰るわよ」
「え、いや、でも」
なおも追及しようとするルークの耳元に
シルは顔を近づけ小さな声で
「もしかしたら触れられたくない過去が
あったかもしれないでしょう?
人の傷口を抉ってまで聞くことはないわ」
「...すみません」
「い、いえ。 こちらこそ...」
ルークはシルの発言を聞いて反省し、ヘレンに
謝罪すると、4人は部屋から出ていった。
その後、ウォンが部屋に入ってきた。
「...あんたも随分と顔色が悪くなってる
じゃないか。 大丈夫かい?」
「平気...とは言えないかも...」
「...あんまり溜め込みすぎないように
するんだよ?
あんたにもハーブあげようか?」
ヘレンはその言葉には答えずに、ただただ
暗い顔をしていた。