知ってしまったこと、わかってしまったこと
プロット無しで書きたいときに書いてるので
矛盾とかあるかもしれません。
そういう点があれば教えてくださると
嬉しいです。
邪龍が去ったあと、ようやく動けるようになり、
俺を除いた4人は、顔を見合わせていた。
「今の...何だったのかな?」
「わからねぇ、あんなもん俺も見たことねぇぞ」
「ジェイクさんでも知らないのですか...」
「思い出すだけでも恐ろしいわ...。
あれは一体...」
「なあアル、お前はどう思う?
........アル?」
見てしまった。
絶望的なステータスの差を。
俺の防御は7万近く、魔防は8万近くだったはず。
だが、邪龍の攻撃は23万で魔力は28万だった。
太刀打ちなんで出来るわけがない。
一度でも攻撃に当たってしまえばそれで
死ぬ。
とはいえ、アイツは今のところは襲ってくる気配が
なかったから戦わずに済むだろう。
そうなることを祈るしかない。
だが、もし襲ってきたらそのときは――
「――おいアル? 聞いてるのか?」
「え?」
「どうしたのー? 今アルっち
ずーっと暗い顔して考え事してたよ?」
「気分が悪いのですか?」
「いや、悪い。 大丈夫だ。
気にしないでくれ それで?
何の話だ?」
「あの龍についてよ、貴方は――」
話を聞きながらも俺は考える。
――もし襲ってきたらそのときは
所詮ステータスに頼るだけの俺には何もできないだろう。
―――――――――
あのあと一度王都に戻ってきた俺達は
冒険家ギルドに行こうとしたが、
なんでも4人組は討伐した魔物の部位を
依頼主に届けてからギルドに向かうそうなので、
一足先に俺はギルドに来た。
ギルドに入ると、ヘレンさんが知らない
おばさんと話していて、俺に気がついた
ヘレンさんが
「あっ! 丁度良かった! アル君!
こっちこっち!」
と言いながら手招きしてきたので、
ヘレンさんの方へ向かった。
「君かい? おばちゃんの依頼を受けてくれたのは」
「依頼...もしかしてメルク草のことですか?」
「そう。 この方がアル君の受けた依頼を
頼んだウォンさんなの」
「何故依頼主さんがここに?」
「ああ、実は他の依頼を頼もうとしてね。
そこに丁度、君が来たというわけなのさ。
それで、メルク草は取れたかい?」
「ああ、それなら...」
俺はメルク草の入った袋をウォンさんに渡した。
「あらまぁ! こんなにたくさん!
ありがとうねぇ! 追加報酬はたっぷり
サービスしておくよ!」
「ありがとうございます」
礼を言う俺を見たウォンさんは先程の
温厚な顔から急に真剣そうな顔になり
「......何辛気臭い顔してんだい?」
「え?」
俺はそんな顔をしていただろうか?
「何があったかは知らないけど、
未来ある若者がそんな暗い顔してんじゃないよ。
ほら、これあげるから使いな」
そう言って渡されたのは液体の入った
小さな瓶だった。
「...これは?」
「メルク草から搾り取ったエキスで
作った液体ハーブだよ。
何かの布に付けて匂いを嗅げば少しは
落ち着くよ。 メルク草をたくさん
取ってきてくれたから、追加報酬の一部として
タダであげるから、使いな」
「...ありが」
「ほらほら! 礼なんていいから
とっとと報酬受け取って今日は帰んな!
疲れてるんだろう?」
俺はウォンさんの言葉に従って、報酬を
受けとると、すぐにギルドを後にした。
ヘレンは去っていくアルの背中を見ていた。
「アル君...大丈夫かな?」
「ヘレン、そんなにあの子が心配かい?」
「ええ、なんだかほっとけなくて...」
誤解されそうな発言だが、ヘレンの顔は
恋する乙女のそれではなく、親が子供を
心配ような顔だった。
「......まさか、似てたのかい?」
「ええ。
見た目も、雰囲気も、喋り方も、全部」
「...そうかい。
しかし、何だか嫌な予感がするねぇ。
何事もなきゃいいんだがね...」
その不安が杞憂であったのかどうかは、すぐにでも
知ることになるのだった。