表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/223

練習

 ペドに力を集中させる方法を教えてもらって数日がたった。


 今ではかなり集中させる事が出来ていて、ツタを使えていたときと同じような感覚を覚えるところまで来ている。


 だが、相変わらずツタを出すことは叶わず、あと一歩と言ったところだ。


 こればっかりは何度も練習して練度を高めるしかないので、今日も俺は依頼を受けるついでに力を集中させる練習をしていた。


「……やっぱ出ないか……」


 集中させる技術は練習を重ねれば簡単に高まったものの、いざツタを出そうとするとまったくと言って良いほど上手くいかない。


 あと一歩とは言ったが、その一歩が果てしなく大きなもので、俺は伸び悩んでいた。


 だが、このまま練習を続けてもツタは出ない。そんな気がする。


「もしかして、まだ足りないことがあるのか……?」


 だとしたら、それは何だ……? 集中させる力は充分に足りていると思うんだが……。


 ……そういえば、力を集中させる事だけを練習してて、肝心のツタの出し方については全然練習してなかったっけ。


 よし。だったら、次はツタの出し方の練習をしてみるか。


 というわけで早速俺は力を集中させ、地面に手を向けて出ろと念じてみたが、なんの変化もなかった。


 まあ、最初から上手くいくわけないよな。何度も練習しないと。


 俺はそう気を取り直して、何時間も練習し続けたのだが、ツタが出る気配すら無かった。


 ……あれ? そもそも、あのときツタってどうやって出してたっけ?


「…………またわからないことが出てきたな……」


 こうなったら、また誰かに聞くか? いや、でも聞ける人物に心当たりがあるとしたら俺がツタを出せる状況を作り出すことが出来た母さんくらいだし、それに……。


「……絶対、しばらく帰れなくなりそうなんだよなぁ……」


 ……まあ、いざとなったら父さんが犠牲になってくれるだろ。


 父さんには申し訳ないが、犠牲になってもらう前提で母さんに会いに行くか。




 一応数日泊まっても大丈夫なように準備を整えると、俺は母さんたちの住む街――ルルグスへと向かい始めた。


 何度か通っている道なので特に迷いもせずに、途中通過地点のグリムの森へと到着した。


 森の中へ入り、さらに進んでいくと、初めてルリと出会った場所を通りかかった。


「……懐かしいな。確かここでルリに――」


 ……あれ? 俺はどんな風にルリと出会ったんだっけ? ……何かとても大事なことを忘れているような――。


「…………あ」


 思い出した。いや、正確には思い出さざるを得なかった。


 何故なら、木の影から一頭のオークが現れたからだ。オークは俺を見つけた瞬間に目を輝かせ、こちらに向かってきた。


「……た、確か、オークに襲われてるときにルリに助けてもらったんだっけ……。でも……」


 今の俺なら、例えルリが居なくても――。


「――逃げ切れるッ!!」


 このくらい、モモガロスの集団に襲われたときに比べれば何十倍もマシだ。


 足もスムーズに動くし、どんどんとオークとの距離が離れていく。


 オークと戦うつもりは一切ない。ただ、逃げ切れればそれでよいのだ。


 そんな気持ちでしばらく走り続けると、オークの姿は完全に見えなくなり、足音も聞こえなくなった。


 つまり、オーク負けてばかりだった俺がついに。オークに……。


 勝っ――――――。


 と、俺が勝利のガッツポーズを取ろうとした次の瞬間、周囲の木の影からゾロゾロとオークが出現した。 


 ……もしかして、これってアイツに誘導されたのか?


 そう考え始めた俺を待ってくれるはずもなく、オークたちは自分の得物で俺を拘束しようと……。


「ギャァァァァァァァァアァァァァァァァァァァ!!」


 俺は叫びながら全力で逃げ出した。どうやら、俺がオークに勝つのはまだまだ先の話のようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ