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磨きあげられた変態

 俺が家から持ってきた物……共鳴転移石シンクロストーンを使って向かった先は魔族領にある魔王城だ。


 さて、探し人はどこに――。


「おい! そっちに行ったぞ!! 捕まえろ!!」


「クソッ……逃げ足速すぎだろあの人……」


 ……アイツ、また何かやったのか。


 俺が呆れていると、廊下の曲がり角から俺の探していた人物――ペドが全力ダッシュで現れた。


「なっ!? アル・ウェイン!? 何故ここに!?」


「お前こそ、今度は何したんだよ……」


「今はそんなことを話している場合ではない!! そこをどけ!!」


「何をしたのか教えてくれたらいいぞ」


 俺がそう言うと、ペドは仕方ない……と言って服のポケットに手を突っ込み、そして、そこから何か布のようなものを引っ張り出した。


「さあその目に焼き付けるが良い!! 私はユリア様の部屋からこの下着を盗んだのだ!!」


「変態さに磨きかけてんじゃねぇよ!!」


「ごっぺるぱぁっ!?」


 俺の拳はペドの顔面にクリーンヒットし、たまらずペドはゴロゴロと廊下を転がっていった。


 ふぅ……。これで一件落着…………あっ。俺、コイツに用があったんだった。


「おい! ペド様がのびているぞ! 今だ!」


「何でかわからんがチャンスだ! いけ!」


「おや、アルさん。またもや協力していただきありがとうございます」


 廊下の角からぞろぞろとやってきた魔族たちに、ペドは回収され、ユリアの下着も女性魔族によって回収された。


 マズイ。今ペドを連れ去られると聞きたいことが聞けなくなってしまう。


「な、なぁ? 俺、ちょっとペドに聞きたいことがあってさ。俺がペドに代わりにきつく言っておくから、今回はペドを俺に任せてくれないか……?」


 俺の言葉に魔族たちは目を丸くしたが、代表と見られる男が俺の方を向き、


「アルさんがそう言うのであれば、ペド様はアルさんにお任せしましょう」


「悪い、助かる」


 魔族たちはペドを廊下に放置すると、ぞろぞろとその場を後にしていった。


 気絶しているペドの前で5分ほど待つと、ペドはようやく目を空けて、キョロキョロと周りを見渡した。


「……アル・ウェイン。何故私は捕まっておらんのだ?」


「ちょっとお前に聞きたいことがあったからさ、他の人たちに話をつけて、ペドを連れていかないようにしてもらったんだよ」


 俺がそう言うと、ペドは目を輝かせた。


「そうか!! ようやく幼女の素晴らしさについて聞きたくなったのか!! ならばよろしい、今すぐにでも講義を開いてやろう!」


「そんなこと一言もいってねぇよ」


「なん……だと……」


 ペドは驚愕の表情を浮かべた。


「しかし、自分で言うのも何だが、私から聞けることなどそれくらいしかないのではないか?」


「そんな自己評価捨ててしまえ」


 俺は溜め息をつくと、改めてペドの方を見た。


「実は、自分の力のことで悩んでてさ、上手く扱えないんだ」


「ほう?」


「それで今、色んな人に自分の力の使い方を聞いてみて、参考にしてるんだが……」


「なるほど、大体把握した。つまり私にもどのように力を使っているか教えてほしい……と?」


「そういうことだ。……お願いできるか?」


 そんな面倒くさいことはお断りだ。そう言われるだろうと思っていたのだが、


「……まあ、いいだろう。教えてやる」


「……えっ?」


「……なんだその鳩が豆鉄砲を食らったような顔は」


「いや……俺は多分お前に嫌われてるだろうし、面倒臭いからって断られると思ってたからさ」


 心境を吐露すると、ペドは溜め息をついた。


「確かに面倒だ。だが、貴様が力を存分に扱えんとなると邪心やその手先共との戦いに支障が出るだろう。もし貴様がそれで負けるような事があればユリア様が悲しまれる。それに、現状あやつらを倒せる希望があるのは私の知っている限り貴様くらいだ。それはつまり貴様が負ければ世界はやつらに支配されてしまうということに他ならない。そうなればユリア様に危害が及んでしまうだろう? ならば無下には出来ん」


「お、おう……」


 ……なんか、いつもよりかなり早口だったような……。


「だから、今回は特別だ。ユリア様に教育するために培った、他人に教えるという技術をふんだんに貴様に使ってやる。感謝するといい」


「あ、ああ……。ありがとな」


「それと……」


 ペドはそっぽを向くと、


「別に私は貴様を嫌っているわけではない。ユリア様と魔族領を助けた貴様の事は、それなりに評価をしている」


「……マジで?」


「嘘を言う理由などないだろう。ほら、そんなことよりさっさと行くぞ。どうせなら実際にやってみた方が覚えやすいはずだ」


「お、おい待てって!」


 スタスタと早足で歩いて行くペドを、俺は駆け足で追いかけたのだった。 

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