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口止め

「…………それで、私がここに連れてこられたというわけですか……」


 俺が自宅までリンクさんを運んでから約30分後、ようやく起き上がったリンクさんに俺は事情を説明した。


 リンクさんは患部を手でさすりながら溜め息をつくと、


「まあ、確かに今冷静に考えれば先程のことは言い広めない方が良かったんでしょうけども……もっと他の止め方があったんじゃないですかね……」


「ないです」


「即答しないでくださいよ!! 少なくとも暴力以外の解決方法があったでしょう!? ほら、大声で呼び止めるとか!」


 確かにその方法もあったな。でも……。


「その、大勢の人たちの前で大声出すの恥ずかしいじゃないですか」


「そういう問題ですか!?」


 俺とリンクさんのやり取りを見ていたルリは苦笑いしており、リンクさんも不毛な争いをしていることに気がついたのか、大きく溜め息をついた。


「まあいいんですけど……。えっと、とりあえずこの件については内密にしておけばいいんですね?」


「はい、そういうことでお願いします」


「わかりました。……さてと」


 リンクさんは立ち上がると、俺に視線を向けた。


「では、私はそろそろ行きますね。私はまだまだ調べたいことがたくさんありますので」


「調べたいこと……ですか?」


 俺がそう聞くと、リンクさんは目を輝かせ、


「ええ! この辺に最近発見された『レルゲ遺跡』という場所があるらしくて、そこに調査に行こうと思ってるんです!」


「レルゲ遺跡……ですか……」


 レルゲ遺跡といえば、リンクさんに化けていたイルビアと一緒に行った場所だったな……。


「…………」


「どうかしたんですか?」 


「え? あ、いえ。なんでもないです。調査の方、頑張ってください」


「ありがとうございます」


 リンクさんは少し不思議そうにしていたが、特に追求はして来なかった。


 その後、俺はリンクさんを玄関まで見送り、リンクさんはまた会いましょうと言って去っていった。


 俺は去っていくリンクさんの背中を見ながら、俺はふと思った。


 なんで、イルビアは数いる人の中からリンクさんに――。


「……アル?」


「うひゃあ!?」


「え? 何で驚いたの……?」


 そ、そっか……。一言も喋らないからちょっと忘れてたけど、まだルリが居たんだっけ。


「いや、ちょっと考え事に集中しすぎててさ。周りが見えてなかったんだ」


「ホントかなぁ? 僕のこと忘れてたんじゃないの~?」


 俺の核心を突いてジト目で睨んでくるルリから視線を逸らし続けていると、ルリはまったくもう……と言いながらジト目をやめた。


「ところで、何を考えてたの?」


「え?」


「さっき、というか今もだけど、難しそうな顔してたから」


「そ、そうか?」


「うん。何かあったの?」


「それは…………いや、別になんでもない」


 そう言って、俺はリンクさんが去っていった方向へもう一度視線を向けた。


 ……あくまで直感だが、イルビアが化ける対象にリンクさんを選んだのは偶然ではないような気がする。


 もし、これが当たっているのであれば、イルビアはリンクさんに化けて何がしたかったんだ……?


 一人で考えながら唸っていると、後ろに居たルリが呟いた。


「……やっぱり何かあるよね?」


「え!? あ、いや……でも、これはまだ確信が持てないから……」


 慌てながら俺が弁明すると、ルリは溜め息をつき、


「はぁ……。別に無理に言わなくてもいいよ? でも、一人で抱え込みすぎないでね?」


「あ、ああ……。ありがとな」


「それじゃ、僕もそろそろ帰るね。バイバイ」


「おう、じゃあな」


 ルリが帰り、一人になってからも俺は考え続けたのだが、結局何一つわからぬまま時間だけが過ぎていったのだった。

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