再度の分離
「ルリ! そいつにお前の技は――!」
「やあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
本人もわかっているはずなのに、ルリは迷わず合成魔獣に向かって剣を振り下ろした。
輝くその剣から放たれた高密度の光の衝撃波は、合成魔獣に吸収され――ずに、そのまま合成魔獣の胴体へと直撃した。
「ガァァァァァァァァァァァアッ!?!?!」
「………………え?」
効いた? ルリの技が……合成魔獣に?
リンクさんもわけがわからないと言った様子で、目を点にさせていた。
ルリはキメラから少し距離を取り、こちらに向かって大声を出してきた。
「アル!! 僕が引き付けるから今のうちにどんどん分離させて!」
「いや、なんで技が効いてるんだよ!?」
ルリはキョトンとした顔をしたあと、察したような顔をして先程分離された魔物を指差した。
「あれがリノペルだよ!」
「リノ……ペル?」
その名前、どこかで聞いたことがあるような――。
『多分だけど、あの合成魔獣キメラにリノペルが合成されてるんだと思う』
『リノペル……?』
『人を襲わない大人しい魔物で、光を吸収する特性があるの。光を吸収するときに一瞬発光するっていう特徴があるから、多分合ってると思う』
「――ああっ!!」
……思い出した。リノペルには、光を吸収する特徴がある――!!
「ど、どうしたんです!?」
「お手柄ですよリンクさん!! さっきリンクさんが分離させた魔物には光を吸収する特徴があったんです! だからルリの技が効いてるんですよ!」
「えっ……? あれが……ですか?」
リノペルを指差しながらそう言ったリンクさんに、俺はコクリと頷いた。
「ルリが気を引いてる間にまた何度が分離してもらいたいんですが……お願い出来ますか?」
「わかりました! でも、ちゃんと守ってくださいね!」
「男が言う台詞ではないですよねそれ」
「何でそんなに辛辣な事言うんですか!?」
「じゃあ行きましょうか、背負うのでこっち来てください」
「スルーしないでくださいよ!」
文句を言いながらもこちらに寄ってきたリンクさんを背負い、気づかれないように合成魔獣へと近づいていった。
あとは隙を見計らって……。
「今です! リンクさん!」
俺は一気に合成魔獣まで接近し、俺が背負っていたリンクさんが合成魔獣に触れた。
「分離!」
「ギャガッ……ギャアァァァァァァァァァァァ!?」
再び苦痛そうな叫びを上げた合成魔獣に振り落とされないようにリンクさんとともに掴まっていると、また新たに一匹の魔物が分離されたのが見えた。
「分――うわっ!?」
もう一度分離の魔法を使おうとしていたリンクさんだったが、合成魔獣が背中にいる俺たちを尻尾で攻撃しようとしたのが見えたので、リンクさんを担いで離脱した。
「ちょっ!? 舌をかみかけたんですが!?」
「いや、あのまま掴まってたら死んでましたよ?」
「すみませんありがとうございました」
リンクさんの感謝の言葉を聞きつつ、俺は新たに分離された魔物を確認した。
…………なんだアレ気持ち悪。
分離されていたのはスライムだったが、ただのスライムではなく、通常のスライムの5倍以上のサイズで、濃い紫色をしたスライムだった。
「…………なんですかアレ気持ち悪いんですが……」
リンクさんも俺とまったく同じ事を思ったのか、俺が思ったこととほぼ同一の発言をしていた。
……待てよ? あのスライム、もしかして……。
ルリも同じことを思ったのか、先程のように合成魔獣の方へと駆けていった。
「……どうかしましたか?」
唯一わかっていないであろうリンクさんが尋ねてきたので、俺は答えた。
「いや、多分あのスライムが居なくなったってことは――」
視線の先でルリの剣が合成魔獣へと剣を振り降ろし、その剣は合成魔獣の翼を切り裂いた。
「ガギャアァァァァァァァァァァァア!?!!」
「……やっぱり。物理的な攻撃も通るようになってますね。後は俺たちがやりますからここに隠れててください」
「え!? ちょっ!? ちょっと!?」
引き止めるようなリンクさんの声が聞こえてくるが、俺は構わず合成魔獣の方へと駆け出した。




