別の意味での再会
合成魔獣から放たれたブレスが着弾する寸前に背中を何かにぐいっと引っ張られたと思うと、そのまま俺は誰かの脇に抱えられ、その人物は俺を抱えたままブレスの着弾地点すると思われる位置から離れた。
その直後、先程まで俺たちが居た場所はブレスに呑み込まれ、砂塵が舞い上がった。
「アル、大丈夫!?」
「悪い、助かった」
どうやら俺を助けてくれたのはルリのようで、俺の安否を確認すると、地面に降ろしてくれた。
「どうする? 僕たちの攻撃が全然通じてないみたいだけど……」
ルリに言われて考えてみるものの、現時点で俺たちには合成魔獣にダメージを与える手段は無く、このままではさっきルリが言っていた通りジリ貧になるだけだ。
となれば、目の前の砂塵が晴れる前に……。
「一度撤退して、どこかに隠れて作戦を練ろう」
「なら急ごっか。今なら都合良く砂塵が僕たちの姿を隠してくれてるし」
俺たちは砂塵が晴れないうちに急いでその場を離れた。
だが、それほど距離を離すことは出来ず、向こうから俺たちの姿はすでに見えていないはずだが、後ろから合成魔獣の鳴き声が近付いてくる。
こちらも必死に走っているが、どんどん距離が詰められているのがわかる。
「ルリ! どこか隠れられそうな場所は無いか探してくれ!!」
「え!? えっと……」
どこかに隠れられそうなところが無いか、俺とルリが走りながら探していると、ルリが左方を指差し、
「あ! あそこに洞窟がある!」
見てみると確かにそこには洞窟があり、その入り口は合成魔獣には通れない大きさだった。
合成魔獣に追い付かれる前にあの洞窟まで逃げ切ることが出来れば安全だろう。
「よし! 急いであそこに行こう!」
俺たちは進行方向を左に変え、洞窟まで一直線に走り、洞窟の入り口へと辿り着いた。
そのままおれたちが迷わずに洞窟の奥へと入っていくと、運良く洞窟に入るところを合成魔獣に見られずに済んだのか、合成魔獣の鳴き声は聞こえなくなった。
「ふぅ……助かったー……」
ルリがホッと一息をついたが、俺はまだ警戒したままでいた。
何故なら、洞窟内には道具や食べのこしが転がっており、大勢の人が暮らしているかのような生活感があった。
「もしかして、ここ……盗賊達のアジトか……?」
「えっ!?」
ルリが驚いて出した声が洞窟内に響いたが、どこからも反応はなかった。
どこかに隠れてるのか……? いや、たった二人でアジトに乗り込んだ敵に対して隠れる必要もないだろうし……。もしかして、誰も居ない……のか?
「とりあえず慎重に進もう。何があるかわからない」
「う、うん……」
ようやく安全なところまで来たと思ったのにーとルリが悲しそうに言っている中、俺はゆっくりと前へと進み出した。
ルリも俺のあとについて歩きだし、そのまましばらく歩いてみたものの、人と出会うことはなく、ついに最深部まで到着してしまった。
最深部には牢屋があり、その中には一人の若者が横たわっていた。
もしかすると、盗賊に捕まった人だろうか。だとしたら助けないと。
「あの、大丈夫です…………か?」
中で横たわっている人物の全貌が見えた瞬間、俺は言葉を失った。
「……ほへ?」
横たわっていた人物はどうやら寝ていただけのようで、俺の声で目が覚めたのかむくりと起き上がると、俺の方を見た。
モノクルを付け、茶色いスーツを着用し、20代ほどに見える彼が俺とルリに向けてペコリと頭を下げたその顔は――
「初めまして。リンク・ルマーニと申します。よろしくお願いします」
つい先日見たばかりの、イルビアが変装した人物だった。




