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新種の魔物……?

 調査依頼書に記されている王都からさほど離れていない山にたどり着き、小一時間ほど歩き回っているのだが、特に変わったことは起こらず、俺たちは当てもなくただ歩いていた。


「……何もないな……」


「まあ新種の魔物が居るかもしれないってだけで確証はないからね……よいしょっと」


 俺たちは話しながら歩いているが、木の影や草の影から飛び出してくる魔物を、先ほどからルリは見もせずに剣で切り裂いていた。


 魔物が出てきても驚いていないところを見ると、もしかしてそこに魔物が居ることが元々わかっているのかもしれない。


 それなら出てくるタイミングを予測して見ずに斬れないこともない……はず。


 でも、どうやって隠れている魔物の位置を把握しているのだろうか? 実際に出来れば便利そうだし、コツとかあるか聞いてみるか。


「なあ、なんで見なくても斬れるんだ?」


 俺が気になった事を聞くと、ルリは人指し指を顎の辺りに当てて考える素振りをして、


「んー……直感、かな?」


「天才肌かよ」


 真似出来る気がしないんだが。よし、諦めよう。


「天才肌? そ、そう、かな……えへへ」


 ルリは嬉しそうだが、天才肌って誉め言葉なのか? いや、悪い意味じゃないし、良い意味ではあるんだけどさ……。


 ま、本人が喜んでるならそれでいいか。 


「でも、流石にこんな長時間何事もないと少し参るな」


「そう? 僕はアルと歩いてるだけでも全然楽しいけど」


「そりゃ話ながら歩くのは楽しいけどさ……。何というか、この依頼の目的は調査依頼だろ? だから何事も無かったとしたらそれを報告するのは何だか嫌だなぁって」


「どうして?」


「もしもまた目撃情報なんて出たら俺達は『何も見つけられなかった役立たず』とか『怖くてすぐに帰ってきた』とか思われそうでさ……」


「い、いや……。ギルドの人達はそんなに酷い人達じゃないよ……?」


 ルリがなだめてくれるが、俺はヘレンさんと二人で依頼に行ったことにより、男性冒険者の殺意ヘイトを集めてしまったことがある。


 だから、そのことを考えると不安に思わずにはいられない。


「大丈夫だよアル、別にアルが思うような酷いことには――――止まって」


 急にルリが真剣な声になったので、俺は今考えていた問題を放棄し、ルリの指示に従った。


「どうしたんだ?」


 何があったのかルリに聞いて見ると、ルリは前を向いたまま少し先にある木を指差し、


「あそことあそこの木の影に人型の何かが隠れてる」


「……オークとかじゃないのか?」


 さっき俺が木の影から出てきたオークを見て絶叫してる間にルリがオークを瞬殺してたけど。


「なんというか、こう、オークとは違うんだよ。いや、少し似ているとは思うんだけど……。少なくとも、今まで見た魔物とは違うと思う」


 それってもしかして、調査依頼対象の……。


「……新種の魔物か?」


「かもしれないね」


 そう言って、ルリは剣を体の横に構えた。


「……ルリさん? 何をしようとしているんですか?」


「この位置からあの木ごと斬っちゃおうかなって」


 それもはや森林伐採なんだが。


「――やぁっ!」


 ルリは剣を前方に向けて横振りした。ただそれだけだったはずなのに目の前の木が次々とスパスパ切れていき、何かが隠れているという木に向かって行った。


「…………何あれ」


「触れたら切れちゃう透明な衝撃波かな……?」


 殺傷力高すぎな鎌鼬かよ。と考えているうちに、その透明な刃は何者かが隠れているという木を切断し――。


「ヒャッハァァァァァァァァァァ!?!!」


「危ねぇんだぜヒャッハァァァァァァァァァァ!?!!」


 二つの木が切れる寸前に、二つの影が木の背後から飛び出してきた。


「……あれ、新種の雄オークかな?」


「待てルリ、俺にはあれが人間にしか見えないんだが」


 確かに豚みたいな顔してるし、見ただけで不潔そうな雰囲気が伝わってくるけど。


「やっぱりそうだよね……。当たらなくて良かった、謝らなきゃ」


 これで当たってたら大惨事だったしな、許してもらえるかわからないが、確かに謝ったほうが――。


「よく隠れてた事がわかったなヒャッハー!」


「だがお前らの身ぐるみと女は頂いて行くんだぜヒャッハー!」


「ルリ、これ謝らなくていい奴らだ。盗賊だわアレ」


「わかった。全力で潰そっか」


 人の笑顔とはこれほどまでに怖いものだっただろうかと言うほどに、ルリが今俺に見せた笑顔は怖いものだった。


「天下のボルジ盗賊団の幹部である俺達に勝てるとでも思ってるのかヒャッハー!!」


「潔く降伏すれば命だけは助けてやるぜヒャッハー!!」


 お前らヒャッハーしか言えないのか。


「「行くぜヒャッハァァァァァァァァァァ!!」」


 オーク似の盗賊二人が武器を構え、ヒャッハーという奇声を上げながらこちらに向かってくる様は、何とも言えない気持ち悪さがあった。


 動きも地味に素早く、台所でよく見かける黒光りの虫に似た何かを感じた。


 だがそんな事も気にせず、ルリは剣を持つ手に力を込め、


「邪魔した罪は…………重いんだから!」


 前方に向かって思い切り振られたルリの剣は凄まじい風を生み、それは盗賊2人を吹き飛ばすのに充分な風力だった。


 戦闘が開始してわずか10秒以内に彼らは俺達の視界から消えてしまったのだった。

Amaz○nで表紙が公開されてました。


興味がある方は是非見に行ってください。

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