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嘘はいずれバレるもの

 なんとか門が閉められる前に王都に入ることが出来た俺は、まずギルドへと向かった。


 ギルドの中に入ると、酒を飲んで賑わっている人々が大勢居て、その様子をヘレンさんが受付カウンターから見守っていた。


 だが、見守っているヘレンさんの顔色が、心なしか優れない様子であるように見えた。


 受付に向かいヘレンさんに声をかけると、ヘレンさんは安心したような顔で駆け寄ってきた。


「アル君! 無事で良かった!」


「え?」


「実は王都で果物屋の露店を開いている人から、アル君に指名依頼した人物は偽者だって連絡が来て……」


 果物屋の露店……あの店主の人か? でも、どうやってリンクさんが偽者だって気付いたんだ?


 と、今はそんな事を考えている暇は無いな。一先ずヘレンさんに事情を説明しないと。


「えっと、それのことなんですが――」


 俺はヘレンさんに今日あったことを話した。


 リンクさんは偽者で、イルビアがリンクさんに化けていたということ。そして、イルビアから勧誘されたこと。


 全部話し終えたとき、ヘレンさんは申し訳無さそうにうつむいていた。


「そう……妹さんが……」


 そう言うと、ヘレンさんは頭を下げた。


「ごめんなさいアル君。私、ちっともそんなことに気がつかずに依頼を承認しちゃって……」


「いやいやいや! ヘレンさんが謝る必要ないですよ! 俺だって本人から言われるまで気がつきませんでしたから!」


「それに……この場合は報酬も払えないし……」


「別に報酬もどうでも良いですから! だから謝るのはやめましょう!?」


「そ……そう……?」


 俺の説得で、ヘレンさんは遠慮がちではあるものの顔を上げた。


「ありがとうアル君。大変だったのはアル君なのに気を使わせちゃってごめんね」


「気にしないでください。それじゃ、今日はそろそろ帰りますね」


「うん。……あっ、ちょっと待って」


 ヘレンさんの引き止める声に、踏み出そうとした足を元に戻した。


「何ですか?」


「最近、王都の近くで盗賊団がよく目撃されてるみたいだから、アル君なら大丈夫だとは思うけど気をつけてね」


 盗賊団……か。極悪非道な集団って聞くし、あんまり関わりたくはないな。


「わかりました」


「うん、じゃあそれだけだから。引き止めてごめんね?」


「いえ、わざわざ教えてくれてありがとうございました。それでは」


 俺はギルドを後にすると、すぐに家に向かった。


 そして、家で改めて今日の事を考えてみたものの、結局イルビアが何を思って俺に接触したのかはわからなかった。





――――――――――――――




 翌朝、朝早く誰かが来たようで、玄関がノックされていた。


 リークスが母からの手紙でも届けに来たのだろうか。


「はい、お待たせしまし――」


「うん! かなり待ったよ!」


 何故かファルが居た。それも、こんな朝っぱらに。


「帰れ」


「……何か辛辣すぎない?」


「朝早すぎるからだ」


「うっ……!」


 ファルはばつが悪そうに目を逸らし、胸の前で人差し指同士をちょんちょんと突きながら、


「それは悪かったけど……でも、今日はほぼ1日忙しいから今しか会える時間が無くて……」


「いや、無理に今日会いに来なくても良かっただろ……」


「それはそうなんだけど……。その、どうしても今日伝えたいことがあったの」


「伝えたい……こと?」


「うん。実は明日、シルス村に少数の騎士が遠征することになったの」


「…………え?」


俺の故郷(シルス村)に遠征? 何かあったのか?


「どうしてシルス村なんかに?」


「えっと……」


 ファルは言いずらそうに目をそらして、人差し指で頬をかきながら、


「……アル君の正体を知るためだって」


「うっそだろオイ!?」


 ついに王様が本気出して来やがった!?


「私は遠回しに止めてみようとしたんだけど……。その……無理だったよ……」


 申し訳なさそうに俯くファルに、気にするなと声をかけた。


 ファルからしたら王様を止める理由は無さそうに思えるが、どうやらファルは王宮に俺が来てほしいとは思っているものの、無理矢理連れて行きたいとは思っていないらしい。そのため、俺から王宮に行きたいと言わせるために頑張っているようだ。


「……ところで、俺の正体がバレたらどうなるんだ?」


「……ここに騎士さんがお呼び出しの命令書を届けに来るかもね」


「うひゃあ」


 思わず変な声が出てしまった。そんな事になったら今までの生活にさよならバイバイしなければいけなくなる。


「まあ……あの村長さんが隠してくれることを祈るしかないと思うよ」


「……そうだな……」


 頼むぞ、村長。ほんとに、マジで、お願いします。


 両手を合わせて遠く離れた村長にお祈りしていると、こちらに向かって駆けてくる足音が聞こえてきた。


「郵便で―――…………はれ?」


 目の前に現れたのはリークスだった。


 リークスは、不思議そうな顔で俺とファルを交互に見て、数秒後に顔を少し赤らめた。


「ま……まさか朝帰り……? ってことは兄貴……」


 何か取り返しのつかない誤解を受けている気がする。


 ファルもリークスの勘違いに気がついたのか、顔を赤く染めていた。


「待て、落ち着いてくれリークス。お前は何か勘違いを――!」


「じゃ、邪魔して申し訳なかったッスー!!!」


「待ってくれリークスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」 


 この場から逃げ出したリークスの誤解を解くため、俺はリークスを追いかけ始めた。

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