表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/223

追跡者

20日以上も空いてしまいました……。


申し訳ありません。

 俺はあのあと一人で遺跡の外に出て、王都へと向かっていた。


 遺跡から出たときには既に日が傾いており、王都に着く頃には夜になっているだろう。


 というか、既に周囲は真っ暗になっている。


 俺は歩きながら先程の出来事を思い返して、頭を抱えた。


「……わからん」


 イルビアがリンクさんに化けて、あそこまで俺を誘導した。それはわかる。


 だが、会話の内容がいまいち噛み合わない。


 イルビアは俺を勧誘しに来たと言っていた。だが、俺がきっぱりと断ったあとにイルビアはこう言った。


『あはははははははは!! そうだよ! そうでなくちゃ! お兄ちゃんなら(・・・・・・・)そう言うと思ってた!(・・・・・・・・・・)


 そう言うと思っていた。この言葉から察するに、イルビアは俺が断るということが予めわかっていたということになる。


 だがそうなると、何故イルビアが俺のところに来たのかがまったくわからない。


 宣戦布告か? それとも挑発だったのか?


 もしかするとイルビアは、俺に何かを伝えようとしていたのかもしれない。


 だが、魔王城のこともあるし、イルビアに良心が残っているとは思いづらい。


 この線についてはあまり期待しないでおこう。


「とりあえず……早く帰らないと王都の門が閉められることだし、今は考えることはやめて急いで帰……」


「グジュル」


 おい待て。今の声、どこか聞き覚えがあるような……。


 心なしか寒気がする。嫌な予感がするんだが、これってまさか…………。


 恐る恐るゆっくりと後ろを振り向くと、熊のような図体をした、毛むくじゃらで大きな目玉が特徴な生物だった。


「モ、モ……ガロス……?」


 なんで……こんなところに……?


 全身からぶわっと汗が湧き出てきて、今すぐにでもここから逃げ出したくなった。


「グジュジュ」


 そんな俺の内心を知らずに、モモガロスはひとつの石を拾うと、石を持っていない方の手で俺と石を交互に指差した。


 俺はいつでも逃げられるように準備しながらモモガロスの動きを見て、


「俺が……その石だと思えばいいのか?」


「グジュ」


 モモガロスは俺の言葉に頷くと、今度は石を持っていない方の手の指をグニャグニャと動かし、元々5本だったものを8本に分かれさせ、その手を石の方へと向けた。


 なんだアレ気持ち悪。


 そして、石に向かっていたモモガロスの8本の指は1本ずつ徐々に減り、最終的には1本になった。そして、その残った1本の指でモモガロスは自分自身を指差した。


「………………いや、お前……嘘だろ……?」


 確か俺がモモガロスに襲われたとき、8匹のモモガロスに追われていたはずだ。


 だが、モモガロス達は次々と俺を捕まえるのを諦めて、やがて最後の一匹となった。


 恐らくあの指の動きはそれを示している。そして、残った指を自分に向けたということは――。


「――お前…………あのときの?」


 モモガロスは俺の問いかけに声で返事をせず、代わりに目を充血させ、2mもあろうかという舌を出し、ヨダレを垂らし始めることで俺への返事とした。


 その姿を見た瞬間、俺は一気に王都へと駆け出した。


「やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ってか普通ここまで追いかけて来るかよぉぉぉぉぉ!?!?!」


「ヴン!」


「普通に返事してんじゃねぇぇぇぇぇ!!! そもそも今そういう雰囲気じゃなかっただろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


「イイジャナイノ」


「流暢に喋れるのかよ!? 何なんだコイツ!?!!!」


 中々ピンチの状態だが、前回よりはモモガロスから逃げやくなっている。


 あのあと少し調べたのだが、どうやらモモガロスにはあの大きな目玉があるので視力は良いのだが、聴覚は普通らしい。


 前は昼間だったから視力と聴覚の両方を駆使して追いかけられたが、今回は夜なので周囲が暗い。


 つまり、ある程度距離を離せさえすればモモガロスを撒ける可能性が高い。


 幸い、段々とああいう系の魔物から逃げることに体が慣れてきたのか、安定してモモガロスと距離を離していくことに成功している。


 遂に諦めたのか、モモガロスは足を止めてクルリと後ろを向いた。


 よし、そのまま帰ってくれ…………という俺の思いは通じず、モモガロスは地面に向かって凄まじい勢いで口から火を噴出した。


 その力によってモモガロスの体は宙に射出され、俺の真上を通ってモモガロスは俺の前方まで回り込んできた。


「くそっ……前に立ち塞がって王都には返さないつもりか!?」


 不味い、このままじゃ………………あれ?


 モモガロスは、火の噴出をやめるタイミングを掴み損ねたのか、そのままどんどんと上昇して行った。


「………………」


 火のお陰で、モモガロスがまるで助けてくれと言うような感じでこちらに手を伸ばしているのが見えた。


 慈悲は無い。諦めろ。


 俺は冷たい視線を一度だけ向け、何事もなかったかうように王都への道を進み始めた。

2月20日頃にお知らせをしていますので、まだ見ていらっしゃらない方が居ましたら活動報告の方をご覧頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ