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最強!!、白ズキンちゃん。

作者: 縞栗鼠

『おばぁちゃん……いってらっしゃい。』


不安そうに祖母を見上げる白ズキン。


彼女は森の中の小さな、お家の玄関で手を振る幼い女の子。


食料が底をついてしまったため彼女の祖母は幼い彼女を一人残して町まで買い物へいかねばならなかった。


祖母は白ズキンちゃんに、よくよく言い聞かせた。


『白ズキン、私が町で買い物をして帰ってくるまで誰も、お家に入れてはいけませんよ。』


『しっかり内から鍵をしめて私が帰ってくるまでおとなしく待っていておくれ。』


白ズキンは大きく頷いて祖母の姿が見えなくなるまで見送った。


それから、玄関のドアをバタンと閉めて中から鍵を3重に掛けた。


『こんだけ鍵を掛けたからだいじょぶ~♪』』


白ズキンは、安心してベットにゴロンと寝転んだ。


しばらくすると眠気がおそい白ズキンは瞳を閉じた。


玄関は、しっかり閉めたものの

肝心の窓が開けぱなしだった。


どこからともなく獣のうなり声聞こえてきた。


グルルルル……


グルルルル……


グルルルル……


玄関をノックする音。


コンコン……


コンコン……


『白ズキンや……おばぁちゃんだよ。』


『ここを開けとくれ……』


コンコン……


コンコン……


『聞こえておるんじゃろ……』


『白ズキンや……開けとくれ。』


白ズキンはドアを叩く音に目を覚まして玄関前へ歩いていった。


『おばぁちゃんなの?』


ドアの外の声が答えた。


『そうじゃよ……おばぁちゃんじゃよ。』


白ズキンは、いつもの祖母の声とはちがうことに気付き外の声に訊ねた。


『おばぁちゃん……今日、声がちがうけど、どうしたの?』


外の声が白ズキンに答えた。


『白ズキンや……風邪を引いてしまって喉が渇れてしまったんじゃよ。』


白ズキンはドアの小さな穴から外の様子を伺った。


深い毛のコートのようなものが見えた。


『おばぁちゃん……新しい毛のコート、町で買い物したの?』


外の声が答えた。


『そうじゃよ、お前の分も買ってきてやったから、早くここを開けておくれ。』


白ズキンは、喜んでドアの3重鍵を開けた。


『おばぁちゃん、ありがとう♪』


『早く、そのコートみたいなぁ。』


バターーーン))))


鍵を外しドア開けたを白ズキン。


そこには毛のコートのような大きな狼が三頭立っていた。


『ガオーーーーーッ!!!』


『ガオーーーーーッ!!!』


『ガオーーーーーッ!!!』


『お前をたべちゃうぞぉーーー!!』


白ズキンは驚いた様子もなく狼たちを笑顔で迎えた。


『面白い遊びね♪』


『今、退屈してたの!』


『アソボ~アソボ~』


狼たちの手を取ってお家の中へ引きづり込む白ズキン。


『はぁ?……』


狼たちは、いつもとちがうテンションに調子を狂わせ戸惑っていた。


『ガオーーーーーッ!!!』


『ガオーーーーーッ!!!』


『俺たちは狼だぞーーー!!』


『お前を食べにきたんだぞぉーー!!』


白ズキンは特に気にすることもなくテキパキと円テーブルにランチョンマットを3枚敷いて椅子を三脚用意した。


『ユックリしていってね♪』


『はい、みんな、そこに座って』


『あたしが、これからホットケーキ作ってあげるうーーっ!!』


狼たちは顔を見合わせ、ソロリソロリと白ズキンの後ろから近付いていった。


その時、白ズキンのハートが炎上し始めた。


メラメラメラメラ…………


『あたし、あんま、気が長い方ではないのよ!』


『おとなしく座っていたほうが身のためよ……』


タジタジと後ずさりする狼たち。


『なんだ?、この威圧感は……』


リーダーの狼が二頭の狼に視線を送る。


左の狼がポッリとリーダーに耳打ちした。


『兄貴……俺たち、とんでもねぇところに入っちまったかも……』


リーダーは左の狼に、訊ねた。


『どういうことだ?』


『ここにいるのは、小さな幼い女の子だけだぞ。』


右手にいた狼の姿が見えないのに気付いたリーダー。


バターーーン)))))


開けぱなしだった窓から逃げ出そうとしている右手の狼の前に仁王立ちして窓を思いきり閉めた白ズキン。


『だめーーーーーーっ!!!』


『遊んでくれなきゃ、やだーーーーっ!!!』


ヘタツとその場に伏せる右手の狼。


『さ、さ、最強、白ズキンだぁーーーっ!!』


リーダーの狼は、ビクッと身震いした。


『こ、こいつが狼キラーの白ズキンっ!!!』


白ズキンは可愛らしいエプロンを狼たちに着けさせて座席へ案内した。


眼で威圧されて半強制的に座らされる狼たち。


右手の狼がリーダーに呟いた。


『この臭いは……天国行きのホットケーキとかう伝説のレシビ』


左手の狼は涙で目を潤ませ天を仰いだ。


『こんなところで、俺の命が尽きるのか!』


リーダーは二頭を励まして何とか、この家を脱出して家族のもとへ帰る希望を示した。


『おめえら、あきらめちゃいけねえ!』


『必ず、脱出できる手段が見つかる!』


着々と焼き上がってゆく天国行きのホットケーキ。


一枚のホットケーキが右手の狼の前に置かれた。


『どうぞ、召し上がれ♪』


白ズキンは笑顔で紅茶を入れてすすめた。


右手の狼は大の猫舌で熱いものが苦手であった。


『ついに始まった!』


『恐怖のケーキセット、プレゼンッーーー!!』


白ズキンは右手の狼が中々ホットケーキと紅茶に手を着けないのを見て


優しさスキルを発動したっ!!


『あ、狼ちゃん、ごめんね、』


『気がつかなくて、あたしが食べさせてあげるうーーっ!!』


白ズキンが笑顔で右手の狼の口元へ注ぐ熱い紅茶。


グアアァァァァア……


たたみこむように、熱いホットケーキを口へ放り込む。


そのまま倒れ込む右手の狼。


『アララ……狼ちゃん、お寝んねしちゃつた。』


白ズキンの眼がキラリと光る。


次なる標的、左手の狼へターゲットを絞る。


『兄貴……長い付き合いでした、天国へいつても兄貴のこと忘れません!』


白ズキンの次なるホットケーキが焼き上がって左手の狼の前へ置かれた。


並々と注がれる紅茶のカップ。


『遠慮しないでねえ!!』


問答無用で注がれる熱い紅茶の嵐。


熱い、しかも、黒焦げのホットケーキが左手の狼の口へ運ばれる。


天国行きのホットケーキの由縁である。


はたまた、倒れ込む左手の狼。


『よかった♪』


『美味しすぎて、みんな満腹、満足なのね~♪


ご機嫌な白ズキン。


ルンルンルン~♪


その時、荷馬車を引いた町の行商人が、おばぁちゃんを連れて森の中の小さな、お家に近付いて来た。


窓から、細い道を近付いてくる荷馬車に乗るおばぁちゃんを見つけた白ズキン。


大きく手を振って荷馬車の方へ飛び出していった。


『おばぁちゃん

~♪、おかえりなさい。』


狼のリーダーは、このチャンスを逃さなかった。


倒れ込んでいる二頭の狼に喝を入れて最後の力を振り絞り窓から逃亡するよう促した。


『兄貴……俺たち助かるんですね。』


白ズキンの方をキリッと睨み付けて答えるリーダー。


『そうだ!』


『俺たちの勝利だぁ!』


『行くぞ!』


窓から、もんどりうつて飛び出す三頭の狼。


走る



走る



走る



明るい未来を見つめて



奇跡の脱出を成功させた三頭。



ミラクル.ウルフズ。



彼らは里に戻り仲間に語り継いだ。



『決して白ズキンには近づくなと!!』



エンド。






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